人類から今も神と呼ばれる生き物は、かつて存続の危機を迎えた。個体数を増やせなくなる種の寿命を迎えたからだ。
しかし彼らは生き延びた。命の摂理を超えるほどの技術を持っていたためだ。
彼らは太陽を作り、大地を作った。そこに生まれた動植物に役割を与えた。
全ては神と呼ばれた種族が存続するためのシステムだった。
人類には魂が備えられた。魂とは、種を存続できなくなった神々の卵である。
人類は神々が再び種として復活するための揺籃として作られた種族だ。
いずれ人の体を食い破り、神々は生まれる。人類が未だ到達できない世界の果てで、彼らはそれを待ち焦がれている。
そこに生理的嫌悪を抱く者は多いが、それは何らおかしいことではない。人類もまた、神々と同じく種であり、生物としての本能が寄生した神々を攻撃しているからだ。
我々の内では常に、脆弱な原生生物である人類と滅びに抗う神々が、争い続けている。
神々の技術の総称。彼らからすればれっきとした科学であるようだが、人類にとっては物理法則を捻じ曲げるそれはもはや魔法としか呼びようがない。
神々がまだ人類と積極的に関わっていた時代などに、神々の魔法を盗み、人類の手で発展させたものの総称。
詳しくは→魔術
神々が行使する魔法の正体とは「物理法則への干渉」である。彼らはこの世にあるありとあらゆる原則を書き換え、自らの都合の良いように好きに変化させてしまう。その変え方はあまりにも汎用性、応用性が高く、人類が神々に対抗することが不可能である理由の一つとなっている。
人類がこの魔法を行使する場合、その使い方は非常に限定される。神々と比較すると我々人類の演算能力、思考能力、想像力など諸々の能力のレベルが圧倒的に低いためだ。しかしそれでも、常人と比較すれば魔術師や半神が行使する魔法、魔術の効能は人類が生み出したテクノロジーの遥高みに存在する。
人類が魔法、魔術を行使する場合、本人の「物事の理解」の仕方の「クセ」に準ずること(つまり、脳という自分の臓器が最も考えやすい方向を理解して動かすこと)が最もシンプルかつ良いとされる。
「なにか」が目の前にある際、なんの制限もなければ、自分がまずどんな手法、どんなイメージでそれに手をつけるか。触れると溶けるか、光を通すか、切り割ったり分解することができるか……その「はじめ」のイメージこそが、自らの脳の「クセ」となる。このクセに合わせて魔術を行使し物理法則に干渉することが、最も効率よく魔術を行使する秘訣となる。
例えば光輝の魔術師のその名の由来は、彼が光を用いた魔術を好んで使用したことにも由来する。その「光」とはただ照らすモノ、という意味だけにとどまらない。
科学的な知識と照らし合わせれば、光は電磁波としての一面や一般的な物質の持つ速度の中で最も速いという特性を持つ。光輝の魔術師はそうした科学的な性質や人類が光に対して持つイメージを応用させることで、魔術を行使していた。
実際、光輝の魔術師は
・電磁波を操り核爆発を起こす、あるいは発ガンさせる
・周波を変性させ振動を起こし、相手の耳に直接言葉を伝える
・ポイント間を光速で移動する
などを行った、と伝えられている。
神々の技術である魔法やそれを人類が発展させた技法である魔術を行使する際、使用する特殊な道具のことを呪物と呼ぶ。ここでの「呪」は祟りを意味する言語ではなく、まじないの意味が強い。
魂と神経が密接に関わるものが魔術・魔法であるため、その原材料は専ら人間あるいは人間を模したものである場合が多い。
呪物の基本的な素材とされるものは以下がある。
人類の理性、人格の根源。その本来の役目は、神々と呼ばれる種族が生き延びるために自らの存在を封じ込めたプログラム群と推定される何かである。魂は不滅であり、人が何らかの理由で死ぬことがあっても、その魂は別の人類の肉体へと自動的に移管される。魂には孵化のために多くの情報が蓄えられているが、人間の肉体で活動する際にそれらが発現することは極めて稀である。
神々にとって人類の死に深い意味がないのは、この魂の存在が大きい。魂が不滅であれば、その人格は不滅であるという考え方が神々の間では一般的と言われている。
しかし人類の視点から見ると、肉体から孵化し神となった魂は、数千年に及ぶ膨大な記憶と神という種族の本能に浸されることで、決して元の人格とは言い難い何かに成る。そこに連続性を見出すことは難しい。
魔法・魔術において最も重要な素材としてあげられるのが人間の神経繊維である。神々は人類を天然の通信機ようなものとして造り、我々が死ぬとその神経繊維は神々に提供される。
神々は知能と理性の高い人類が可能な限り魔法に手を出さぬよう人類を設計している。
人間がこれを扱うための障害として主なものは
神経の採取される人間には強烈な痛みが伴う
死んだ瞬間からその神経は神に提供されるため、生きたまま・意識のあるまま採取を行わねばならない。
神経を採取された人間は死ぬが、悪感情を抱いた神経は即座に自己破壊を始めるため、恨まれてはいけない。
などがある。
これらの条件を達成した上で、人類が獲得し得る最も良い素材は、術者と心を通わせ、その意図を理解し互いに心から愛しあった人物から獲得したものである。またより良い素材を手に入れるためには、ただ心酔していれば良いわけではなく、成長に伴った充分な知性と理性を備えている必要がある。
特定の人物の監視をするため神によって送り込まれた人形のこと。
姿形、構成物質などはほぼ人間と同じであり現代の科学技術で特定することは不可能。創始者レベルの系統魔術師であっても存在に気付くことすら容易ではない。ゴーレム本人は自分が神によって送り込まれた使者という自覚はなく、自らを人間だと思い込んでいる。効率よく監視を行うため、監視対象とゴーレムは互いに惹かれ合うようにデザインされている。
その引力は遺伝子レベルの配偶適合者、いわゆる「運命の人」を超えるほどに強い。
半神もまた、神の遺物と捉えることができる。偶発的か必然的か神の技術を持ち帰っている点や、神々が一度そう決めたのであれば容易に回収される点などから神々は作為的に半神を発生させているという説もある。