住職挨拶・自己紹介

              

              背景 高源院境内の「百日紅(サルスベリ)」(2022年7月30日 撮影)

住職挨拶

「自未得度先度他(じみとくどせんどた)の心を発(おこ)して」

昨年末に「今年のテーマ」を掲げ、元日にそれにまつわる原稿を書こうと予定していた矢先、夕刻に能登地方で発生した最大震度、M7.6の地震で被災2つのお寺の被害状況の確認、育友会長を務める小学校で避難所の開設を受けての現場確認と、慌ただしい元日となってしまいました。翌日は能登地方の曹洞宗石川県青年会員を中心とした状況確認を実施。甚大なる被害は勿論のこと、道路の寸断にライフラインの停止による不自由な生活など、挙げればキリがないくらいの被害状況を目の当たりにして、気が滅入ってしまいました。

しかしながら、こうした状況下の中で心配のお電話やLINEをくださった県外のご寺院様やお檀家さんからのお見舞いと励ましの言葉によって、おかげさまで、自分でも驚くくらいに速いスピードで前を向けるようになれました。逆縁と思しき状況の中、却って、多くの方々に支えてくださっていることを感謝せずにはいられぬお正月になったようです。

「自未得度先度他の心を発す」とは、「他者の喜びを我が喜びとすること」と解します。自分だけがいい思いをして、他者が不満を覚えながらいるとか、周りだけが救われ、自分はどこか腑に落ちずにいるといった状況ではなく、自分も周りも共に救われ、共に仏に近づいていけるような言葉や行いを発しながら周囲と関わっていくことを自らの生き様としていくのが、「自未得度先度他の心を発す」の意味するところなのです。

震災のような苦悩は誰もが避けたいものです。ましてや、お正月の地震ならば尚更です。しかし、この逆縁ともいうべき苦しみの中で、周囲の人々とお互いに支え合い、理解し合い、唯々、皆が救われることだけを願って毎日を過ごすことが、どんなに大きな難所でも乗り越えていける力を有すると信じています。

大正・昭和・平成・令和の4世代を生き抜いた方が口癖のように言っていたのが「苦労は買ってでもしなさい」という言葉だったとのこと。苦悩で始まった令和6年ですが、この苦悩を受け止め、しっかりと向き合うことによって、皆でこの先にある明るい風景が見られるような毎日を過ごしていきたいものです。

得度式にて法話をつとめる住職

(令和5年12月2日)