言葉は不完全であると、彼は云う。
伝えたいことは一言で完結する。なのになぜか。
音楽ならば、旋律を伴って。絵画ならば、色彩を伴って。
文学ならば、その数万倍の文字を伴って「感動」も伝えようとする。
これは僕の挑戦だ。読者が感動するかどうかの。
シナリオセンター式をマダミスに落とし込んだ技術の集約を。
"問いて"みた。──英雄とは何か。
"解いて"みよ。──英雄とは何か。
そう、これは......。
メッセージ性なんて、語るだけでは飽いて。ゆえに語るものでもなくて。
それでも語り明かしたいと綴った欲望の、感動を目指した物語。
地球博開催直前の深夜。俺は静かな会議室で、呼び出しを受けていた。
「君が地球博の管理者か」
ドアが開くと同時に、冷たい声が飛んできた。
「君の部下が動物園パビリオンで“死体”となってるようだ。我々はこの事実を公表しない。処理は任せた」
上司がそう言い放つと、扉は無情に閉ざされ、重たい音が響いた。
拳を握った。怒りも悲しみも、今は飲み込むしかない。地球博の安全を守るため、夜明けまでに真実を暴く──それだけだ。