この見学会は,「機械系を卒業された先輩が,どのような現場で活躍しているかを実際に見聞きすることで,将来の自分の働くイメージを形成すること」を目的に行われた.そのため,実際のものづくりの現場を見るだけではなく,それぞれの企業で機械系の先輩方にお越しいただき,時に食事なども交えながら学生は先輩と接した.見学会には就職活動を控えた修士1回生や学部3回生はもとより,学部2回生から博士課程まで幅広く,14名が参加した.今年度は以下のような行程で見学を行った.
16日 午前:産業技術記念館(トヨタテクノミュージアム)見学
午後:株式会社デンソー 高棚製作所見学
コンビネーションメータ生産ライン見学
株式会社デンソー技研センター見学
安城荘デンソー会館に移動
技術講演会「東邦ガスにおける環境への取り組み」
懇親会
17日 午前:株式会社豊田自動織機 高浜工場見学
午後:三菱自動車工業株式会社 名古屋製作所岡崎工場見学
産業技術記念館では,実際に織機が動いて糸を紡いだり布を織るところを目の前で見ることができ,当時の織機に用いられた数々の発明を学生たちは真剣な眼差しで見つめていた.また,自動車創業当時から現代に至る自動車技術の変革を見ることもでき,非常に中身の濃い展示内容であった.デンソー高棚製作所では,高度に自働化された生産ラインで,小さな部品が次々に加工され完成品に組み立てられていく様子に,参加者たちは大いに目を見張っていた.コンビネーションメータは多品種少量生産品であり,生産ラインは非常に多くの品種の混流であるため,部品の共通化や製造自働化,品種のQRコードによる管理など,フレキシブルで効率的な生産ラインとなっていた.また,デンソー技研センターでは,訓練生がものづくりの第一線で活躍できる高度技能者を目指して機械加工や試験実験などの実習を行っている様子や,技能五輪選手が目前に控えた大会に向けて訓練を重ねている様子を見学した.
宿泊先の安城荘で行われた講演会では,環境性に優れたクリーンエネルギーである天然ガスが,非在来型天然ガスの存在によりこれからますます重要な位置を占めてくることを改めて感じ,地球温暖化対策における家庭用燃料電池や地域冷暖房などの高い有効性を感じた.懇親会では多くの先輩方とお酒を酌み交わし,ざっくばらんに話をしていただき,有意義な時間を過ごす事ができた.普段接することができないような雲の上の存在の先輩方とも交流することができ,貴重なお話を頂いた.
豊田自動織機高浜工場では,フォークリフトの組立ラインを見学した.ラインの非常に近い位置で見学することができ,作業のムダが極限まで減らされ敏速に製品が組み立てられていく様子を,学生たちは食い入るように見つめていた.部品は取り付ける順番に必ず供給し,工具置場も作業中の姿勢変化が最小になるようにレイアウトが工夫してあるなど,徹底的なムダの排除が実現されていた.「組立作業中に1歩でも不必要に歩かねばならない生産ラインにはムダがある.すぐにカイゼンを.」との言葉が印象的だった.三菱自動車工業の工場では,自動車の溶接,組立,検査工程を見学した.溶接ロボットがスパッタを飛ばしながら次々と溶接していく光景に参加者たちは目を見張っていた.電気自動車にも試乗させていただき,想像以上に音が静かで加減速の応答が良く,乗り心地が良いことに学生たちは皆驚いていた.先輩社員との質疑応答からも,電気自動車が街中を当たり前のように走る日は目前に来ていると感じた.
今回参加した学生からも,「普段疑問に思っていることがクリアになった」,「生産現場の見学は驚きの連続であった」,「懇親会で先輩の熱い話を聞くことができ,刺激を受けた」との感想があり,とても有意義な工場見学であったと考えられる.実際のものづくりの現場を間近で見学し,そこで働いている先輩方と交流をすることで,機械系の卒業生として自分たちが日本のものづくりにどのように貢献していくことができるのか,考えを深めることができ,非常に多くを感じ学ぶことができた.
最後に,産業技術記念館,デンソー,豊田自動織機,三菱自動車工業の皆様,京機会中部支部の皆様,開催にあたって大変お世話になった三菱自動車工業の久米様に,心からお礼を申し上げます.