理事長講演

日時:2018/11/24 13:00-14:15(75分) 201教室

講師

飯森洋史(飯森クリニック)


司会

齋藤稔正(立命館大学名誉教授/日本催眠医学心理学会元理事長)

演題

「我より古を作す」


講演概要

マリアンヌ・バラバス教授ら編著による「医療催眠入門」の序文の中に、次のように記されている。「催眠は、非常に長い歴史の中で医療行為に補完的に使用されてきたものである。現在は、米国の公認医科大学の3分の1以上、およびに臨床心理学、カウンセリング心理学の博士課程と修士課程において必修科目として教えられている。医療催眠は、多様な状況下における効果を実証する膨大な経験的研究にその基礎を置いている」「米国国立衛生研究所の技術調査団は、多様な症状の治療における催眠療法の意義を認め、これを医療的介入に組み入れることを推奨している。同様に、米国医師会は、1958年に臨床適用を目的とした催眠の教育を公認した。1960年には、米国心理学会も催眠教育を公認した。臨床実験催眠学会(SCEH)や国際催眠学会(ISH)などの主だった国際催眠学会は、アメリカ科学振興協会(AA)と世界精神保健連盟(WFMH)の会員である。」

米国と日本の催眠に対する社会的評価は根本的に異なり、その差に愕然とするばかりです。その環境の違いを埋めるにはどうしたら良いのかを考えると、微力すぎて。暗澹たる気持ちになりますが、まずは、その事実を学会内だけでなく、日本社会全体に広報することから始めなければ何事も始まらないと思います。

ところで、私は、2年前の理事会で理事長に選出されました。伝統ある当学会の初代理事長は、私と同じ心療内科医の池見酉次郎先生で、2代目が精神科医の竹山恒寿先生、3代目が再び池見酉次郎先生で、医学者が総計10年間、理事長を勤められました。その後、成瀬悟策、大野清志、斎藤稔正、鶴光代、宮田敬一、笠井仁、井上忠典先生と約40年間、いずれも心理学者である大学教授が理事長を務められました。その後、開業医である私が理事長に選出された訳です。元理事長の齋藤先生から、催眠医学心理学会という名称からして次は医学者が理事長を勤めるべきだよと忠告されたことと、元理事長で友人であった故・宮田敬一先生が今際の際に(JSHを再生できなくて)悔しい悔しいとおっしゃられた話しを聞いて、JSH再生の為に可能な限り尽力しようと決意し、理事長をお引き受けした次第です。

当日は、私が就任直後に掲げた日本催眠医学心理学会再生の為の目標を振り返り、学会の今後の展望について考察したいと思います。加えて、私の催眠臨床の紹介と日本社会における催眠の今後についても私見を述べたいと思います。


講師略歴

1989年 富山医科薬科大学(現 富山大学)医学部医学科卒業

1990年6月~1992年5月 日本大学医学部第一内科学教室研修医

1992年6月~2000年3月 日本大学医学部助手、第一内科学教室心身医学研究室

1996年4月~1997年3月 国立精神神経センター神経研究所免疫研究部 研究生

1997年9月から現在 日本内科学会認定内科医

1999年1月 博士(医学) 日本大学

2000年4月から現在 飯森クリニック院長 国際心理社会実存医学研究所併設

2008年8月から現在 日本心身医学会 心身医療「内科」専門医

2008年10月から現在 日本心療内科学会認定 心療内科専門医

2009年1月から現在 日本医師会認定 産業医

2016年10月から現在 日本催眠医学心理学会 理事長

主要業績

飯森洋史(1994)CMIによる評価,小児内科 26, 968-974

Iimori H, Kawamura N, Wenner M, Murakami M, Yamamoto H.(1998)Lateral hypothalamus modulates the intrinsic splenic natural killer cell activity in rats. Neuroimmunomodulation. 5(5):221-225.

飯森洋史・石塚龍夫・小泉桃代(2002)心因性発熱が疑われた1症例,心療内科,6(1),39-45

飯森洋史・宮田敬一・田中志野・吉川吉美(2006)顔系への臨床動作法と自律神経機能,心療内科,10(3),196-201

飯森洋史(2008)催眠療法と自律神経・免疫機能 (特集 催眠と臨床応用),臨床心理学 8(5), 674-678

飯森洋史(2008)ナースのための自己治癒力を高める患者対応 (特集 自己治癒力を高める技法とエビデンス),看護学雑誌 72(3), 196-203

飯森洋史(2017)トラウマ即時治療へのEMDRの適用 , 編著:岡本浩一,角藤比呂志 新時代のやさしいトラウマ治療-NLP,マインドフルネス・トレーニング、EFT、EMDR、動作法への招待- (東洋英和女学院大学社会科学研究叢書4) ,pp267-294, 神奈川・春風社

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