日本教育工学会2023年秋季全国大会にて,本部会が企画いたしましたキーノート及びシンポジウム1を開催いたします。
キーノートのテーマ
「包摂的な教育のためのAIリテラシー」
2023年9月16日(土)13:10~14:10
概要
OpenAIのChat GPT,MicrosoftのBing AI,GoogleのBardといった生成系AIの登場により,小学校から大学までの教育現場では,その向き合い方にさまざまな反応を示している.我が国の高等教育機関の多くは,利用禁止ではなく,学生にはメリット・デメリットを考えながら利用することを求めている.生成系AIは単なる新しいテクノロジーではなく,私たちの行動様式にも確実に影響を及ぼすテクノロジーである.本キーノートでは,東京大学大学院情報学環教授であり,B’AI Global Forum Projectのディレクターである板津木綿子氏に,私たちがAIにどのように向き合っていけばよいのかについて講演いただく.
キーノート・スピーチ
板津 木綿子氏(東京大学)
抄録:人工知能(AI)技術の社会実装が進み,積極的にAI技術を活用する取り組みが連日報道されている.教育においても,AI技術を用いた学習方法,授業運営,評価方法などさまざまな場面での活用法が紹介されている.私たちは,AI技術を教育現場で導入するにあたり,どのような点に留意すべきか,そしてどのようなAIリテラシーを学習者に修得させるべきか,AIを用いた包摂的な教育を実現するための課題を整理する.
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シンポジウム1のテーマ
「ELSIの視点から先端科学技術の教育活用を考える」
2023年9月16日(土)14:30~16:30
話題提供1 教育における評価と生成AIの教育活用」
村上 祐子氏(立教大学)
抄録:教育における情報技術活用は、学習者による直接使用・教員の支援・教育業務評価に大別される。当講演では、生成AIがそれぞれの場面での評価にどのような影響を及ぼす可能性があるか、試論を述べる.
話題提供2 「EdTech(エドテック) ELSI(倫理的・法的・社会的課題)論点101」の紹介
加納 圭氏 (滋賀大学)
抄録:本講演では,JST/RISTEX「科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への包括的実践研究開発プログラム」プロジェクト企画調査「学習データ利活用EdTech(エドテック)のELSI 論点の検討」(2022年10月〜2023年3月)の一環で制作した冊子「EdTech(エドテック) ELSI論点101」を紹介する.なぜ本冊子を企画・制作したのかといった背景も含め,本冊子の概要についてプロジェクト代表者として話題提供を行う.
パネルディスカッション
パネリスト
板津 木綿子氏(東京大学)
村上 祐子氏(立教大学)
加納 圭氏 (滋賀大学)
コーディネータ・話題提供
今井亜湖(岐阜大学/JSET重点活動領域「先端科学技術とELSI」副代表)
概要
本学会では,新しいテクノロジーが生まれてくると,そのテクノロジーをどのように教育に活用すべきかを,技術的な視点から論ずることが多かったのではないだろうか.
現在,すべての学校段階において,新しいテクノロジーである生成系AIの教育利用について検討が始まっている.SNSでは様々な立場の人々が生成系AIの活用方法を次々と示し,これまで人間しか対応できないと思われていたことが生成系AIに取って代わられるという未来も見え始めている.生成系AIを教育に活用する際に,検討されるべきことは何だろうか.本シンポジウムでは,技術的な視点ではなく,ELSI(倫理的・法的・社会的課題)の視点から,生成系AIをはじめとする先端科学技術の教育活用について考えてみたい.