機関誌「勇魚」

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編集長より

「勇魚」編集委員長

  笠松 雅彦

     本号より前赤松編集委員長の任期満了に伴い編集委員長が交代になりました。新しく編集委員長を務めさせて頂くことになりました笠松がご挨拶させて頂きます。「勇魚会」の会長、機関紙「勇魚」の編集委員長といえば、自己紹介の全く必要の無い方々がこれまで務められてきたように思いますが、私の場合はそうはいかないでしょう。まず簡単に自己紹介させて頂きます。

     私は、今年4月より鳥羽水族館の獣医師として勤務しております。それまでは北海道にある酪農学園大学にて獣医学を学び、その後同大学獣医学研究科博士課程へ進学し、そして学位を取得しました。学部および研究科においては、いくつかの水族館にご協力頂きながら、海棲哺乳類の栄養学や血液学、特に炎症に関連する血清タンパク質の解析などを行ってきました。鳥羽水族館へ入社する直前までは、飛行型質量分析装置を用いたプロテオーム解析という手法によるハンドウイルカの血清タンパク質の解析を行うなど、生化学的な研究をしており、だいぶ個体から離れた仕事を進めてきました。現在は鳥羽水族館の飼育研究部に所属し、これまでとは異なり、動物の飼育および診療業務に就いています。

     さて、私と現在の職場である鳥羽水族館、そして勇魚会とは不思議な繋がりがありました。今から10年ほど前だったと思いますが、私が偶然鳥羽水族館を訪れた際、水族館のスタッフで会員であった方から本会を紹介して頂いたのが入会のきっかけでした。それ以来、勇魚会を通じて海に生きる動物について、特に自分の専門領域以外のことについて大きな刺激を受けてきました。またその頃、当時京都大学などで海棲哺乳類の研究をしていた方々とお会いし、そのメンバーの多くが現在の勇魚会事務局や編集委員に就いています。それから10年後、ちょっと大げさですが初めて「勇魚」に出会った水族館に勤務することになったのと時を同じくして、「勇魚」の編集委員長を務めることになったのは奇遇です。

     なぜ私、笠松が編集委員長に?と思われる会員の方もいらっしゃるだろうと思います。話は編集作業と同じくシンプルです。委員長の赤松さんと何度か次期委員長についてメールを交換した後、珍しく電話を頂きました(現編集委員の編集作業に関する連絡はほぼ100%がE-mailによるものです)。「勇魚」の編集委員長をお引き受けすることはとても重責です、しかし、前委員長から「若い世代で引っぱっていって欲しい」、「私を推します」という推薦のメールを頂いたことは、「君ならできる」と私には聞こえ、さらに勇魚作りにどっぷりつかる決心をしました(勘違いかもしれませんが、学位取得直後というのは何となく勢いが出るものです)。前委員長の赤松さんが任期を終えるにあたり、私たち編集委員も今後の「勇魚」について考える機会をもち、現在も検討を重ねています。編集委員長については現編集委員から、さらに可能であれば若手が望ましいという意向から私がさせて頂くことになりました。そして来年は、現在の編集委員も任期満了となることから改組が必要と考えており、編集委員については様々な分野で活躍されている方にお願いしていくことになると思います。

「勇魚」の特集などを企画,編集するにあたり、私たちは常に事務局と連携し、事務局の意向にも沿うかたちで編集作業を進めています。現在、勇魚会事務局は、日本における海棲哺乳類研究の動向を総括することを目標に「学術情報の拠点形成」ということを会の重要事項の一つに掲げています。私たち編集委員も事務局の方向性にならい、これまでの「勇魚」に加え、研究報告などの学術情報をより充実させて会員の皆様に紹介できるように努めていきたいと考えています。

     すなわち、海棲哺乳類に関する新しい情報および研究内容を可能な限り網羅的かつわかりやすい形で掲載することができればよいと考えています。海棲哺乳類に関する内容と言いましても、その内容は多岐に及びます。「勇魚」の良い点は、これらの様々な情報を一つの機関誌として掲載することが可能なことです。また「勇魚」にとって「わかりやすい」ということがとても大切であり、専門領域にかかわらず、また研究者でなくとも誰にでも容易に理解できる内容が求められます。「勇魚」は、海棲哺乳類について自分の対象や興味、研究内容などを「わかりやすく」知ってもらいたい方と、自分の興味ある情報を「わかりやすく」知りたい方の情報交換の場とし、その基盤に学術情報があればよいのではないでしょうか。そして、大学に入学し鯨類研究を希望していた頃の私がそうであったように、海棲哺乳類の研究や飼育などに関心をもつ若い世代が、飛躍していくための一つのきっかけや繋がりになることができればと考えております。

      私たち勇魚編集委員は、これからも学術情報にかかわらず、会員の皆様に「おもしろい!」と感じて頂けるような特集を掲載していきたいと考えています。さらに特集を組むことが難しい内容については、投稿して頂くことにより勇魚に掲載することが可能です。また現編集委員も様々な分野で活躍され、また広く海棲哺乳類についてアンテナを張っていますが、時にアイデア不足になったり、興味が偏ったりすることもあります。勇魚」は勇魚会会員の誰にでも開かれた雑誌です。投稿だけでなく、特集案についてもどうぞ,遠慮なく笠松まで(連絡先下記)ご連絡下さい。

     私たち「勇魚」編集委員は、「作って楽しい」、「読んでおもしろい」雑誌を目指し編集を進めて参ります。これからも事務局と連携しながら、興味深い特集をどんどん組んでいきたいと思いますので、来年より新編集委員に移行致しましてもこれまでと同様によろしくお願い致します。