雨の日、夜の舞台 / Rainy day, night stage


本作品は渋谷のスクランブル交差点を舞台に見立て、雨の降る夜にスクランブル交差点を渡る間だけLEDの光る傘に持ち替えて歩くというイベント性を持った場所に作り変えたものである。「渋谷のスクランブル交差点」という場所のイメージは多くの人にはっきりとしたものがあるだろう。だが、スクランブル交差点を渡るときに、自身がそのイメージの風景の中にいる自覚はない。それは、通過する場所としての意味合いが色濃いからではないだろうか。この場所を一時的にハックし、人間が自然に行っている「歩行」という行為を意識的に行うことで、風景を構成する一員であることを認識する場所を作る提案を行う。 本作品では雨の日のスクランブル交差点で、そこを通る通行人が自然に行う行為である歩行を通して渋谷の風景を作る一員であることを体験することを目論む。

渋谷という場所は古来、すり鉢状の谷底の地形だった。この地形が発展して現在の渋谷の都市がある。 特に渋谷のスクランブル交差点がある場所は最も低い場所に位置し、谷の地形とともに渋谷川と宇田川の二本の川の結節点でもある。大山街道 (現在の国道246号線 )の発展からできたことも考えると、 地形的・文化的にも渋谷駅は古来から現在まで、ハブとしての役割を持つ場所であると言える。

“時空散歩  歩く・見る・書く  2006-01-08.

https://yochiyochi.blogspot.com/2006/01/blog-post.html

今回の提案では夜という時刻と雨という環境が揃った状況でのみ発生するイベントの提案としている。雨が降った夜にのみ、LEDを取り付けた光る傘を持ってスクランブル交差点を渡り、周辺のディスプレイに映し出すことで渋谷のスクランブル交差点の風景を一時的にハックする。映し出されたディスプレイにより無限に流れ続けるような広告ではなく、自分自身がどこかに存在し、その場所の風景を作り出していることを思いながらスクランブル交差点を歩くという体験へと変化する。