光の可能態
光の可能態
東京駅から上野駅までの約4㎞の高架下には、立ち飲みの居酒屋などが並んでいたが近年徐々に空洞化するようになってきた。その空洞化しつつある高架下の空間を、その場の環境を巻き込んだ装置へと変化させる。
夜、沿線沿いを歩いていると、電車が通る瞬間にヘッドライトや車窓からの光のよって、周辺の景色が鮮明に浮かび上がる景色を見た。その経験から、有楽町の使われなくなりつつある空間に、電車のヘッドライトという機能的な光を、高架下の「空間」を知覚する装置に変換する提案である。
空洞化する高架下の空間に地上から線路まで貫通するガラスの柱を立てる。ガラスの柱の先端は鏡面仕上げにすることでヘッドライトの光をより取り込む。これにより電車がガラスの柱の上を通る瞬間に高架下の空間に光が届く。
電車の光を素材とし、東京という巨大都市を舞台とする。
巨大都市を時刻表にしたがって走る電車は、数分の狂いも許されない。電車は正確に人間の時間軸を組み込んで動き続ける機械である。その機械が発する光を、別の用途に転用することで機械的な存在からの逸脱を図る。
今回の提案では、電車が通過する瞬間のみ高架下の空間に部分的に光が差す仕組みを作っている。高架下の空間では瞬間的に光が差すことでその周辺のオブジェクトの素材や光が差した場所の位置から空間の奥行きを認識することができる。そのため、高架下の空間を視認できる瞬間は今日の照明計画のように全体を認識できるような機能性の高いものではなくなる。この、機能性の下がった状態の光こそが大都市に組み込まれた人間スケールの機能的な光からの逸脱となるのではないかと考えている。