ウェルビーイングとは?
1. 新たな教育理念の追求
文部科学省の中央教育審議会は、科学技術イノベーション基本計画に示された社会の動向をガイドラインとして、内閣府や他の省庁、経済界での議論も参考にしながら、教育振興基本計画や学習指導要領改訂において、新たな教育の理念や政策を打ち出している。第6期科学技術イノベーション基本計画は、①国民の安全と安心を確保する持続可能で強靱な社会、②一人ひとりの多様な幸せ(well-being)を実現すべき社会として打ち出した。
(参考) 科学技術イノベーション計画:https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain.html https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kyouikujinzai/index.html
教育振興基本計画: https://www.mext.go.jp/content/20220603-mxt_soseisk02-000023170_01.pdf
2.ウェルビーイング 社会及び個人の在り様、相互循環する教育政策
<多様な幸せ>
科学技術・イノベーション基本計画をベースに、2023年3月に答申された教育基本振興計画では、①2040年以降の社会を見据えた持続的社会の担い手、②日本社会に根差したウェルビーイング向上が基本方針とした。前者における「多様な幸せ」は、後者でより具体的に「日本に適合したウェルビーイング」とより具体化された。経済的豊かさに加えて自己肯定感や自己実現等など個人で獲得する良い状態としてOECDの議論に登場したウェルビーイングを、日本では他者や社会との繋がりの中で、利他、社会貢献などの協調的要素を加え、調和と協調をベースとする独自の道を示した。 図1 日本独自のウェルビーイング(答申)
https://www.mext.go.jp/content/20220715-mxt_soseisk02-000024006_2.pdf
<生徒の学びの意欲>
この独自の道は、協調の上に自己実現を目指す2階建ての構造とも言え、令和の学校答申の「個別で協調の学び」や、指導要領の「主体的・対話的で深い学び」に通じる。経済的豊かさに加えて心の豊かさ、自分だけでなく他者や社会全体の幸せ、現在から未来へと深化するものでもある。生徒の学びに向かう力(意欲)は、家族や仲間との繋がりに元気をもらい学び、社会に触れ、自分の役割を自覚する。健康、感謝の心はその基盤である。 図2 協調系と獲得系幸福(内田委員講演:以下添付)
<先生のウェルビーイング>
生徒の学びの意欲高揚は、家族とともに先生の大きな役割である。「知識」に限らず、「思考」「態度」などを支援するには、先生自身が調和と協調をベースとするウェルビーイングの実践者であることが必要である。先生仲間の繫がりの上に、生徒をワクワクさせる授業への改善を図る事が第一歩であろう。次のような活動がボトムアップからトップダウンに繫がり、更なる政策推進が期待される。