シンポジウム2

応答する教育思想史研究

――人新世の自然思想史と言語論的転回後の政治思想史をうけて ――


                 報告:田中智志(東京大学)

                    鳥光美緒子(無所属)

                 司会:丸山恭司(広島大学)


オンデマンド配信 + Webライブディスカッション(9月12日13:00-14:30)

【概要】

 感染症を扱った歴史書がこれまでになく話題とされた一年であった。パンデミックに限らず、気候変動、格差、ブラックライブスマターなど、人々は直面する問題を過去に遡って理解し、対処法を考えようとしてきた。それらの問題の解決にあたり、人々の歴史学への期待は医学や工学や法学ほどには高くないかもしれない。しかし、他とは代替できない役割が史的アプローチにはある。それは、現在を歴史的に相対化することによって問題認識の枠組み自体を問い直すことができる点にある。

本学会の前身である「近代教育思想史研究会」の設立趣意書には、今日の教育問題の原因を近代教育思想の中に求め、今日の教育的思考の歴史的構造を明らかにしていくことが謳われている。そして、社会史、観念の歴史、フーコー、ルーマン等の方法を用いて、今日の教育問題の歴史的構造を解体し問い直す実践が展開された。

本シンポジウムでは、研究会の設立趣意書に名を連ねた発起人でもある田中智志会員と鳥光美緒子会員に、設立30年後の教育思想史研究の「いま」を、両氏の研究の最先端を事例に報告いただく。

 田中会員からは「人新世(アントロポセン)」という自然史理解をめぐる議論が、鳥光会員からは言語論的転回後の政治思想史研究を取り上げた議論が報告される。「人新世」は地球史上の時代区分であり、人間の自然に対するこれまでの態度と関係を問い直す概念として注目されている。一方、言語論的転回後の政治思想史研究を代表するケンブリッジ学派の研究者らは、政治的テキストを当時の文脈の中で捉えようとした方法論によって注目された。政治的アクターを個人主体に還元しない思想史研究は、個人思想家に焦点を当ててきたこれまでの教育思想史研究を問い直すものとなるはずである。両会員によって、私たちが当然のものとして受け入れていた概念、歴史観、研究方法が相対化されることになるであろう。

【大会を終えて】

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