植物バイオマスとは?
セルロースという言葉を聞いたことがあるだろうか?このセルロースこそ、植物の茎、幹、葉などを作っている主成分である。植物の細胞は動物の細胞とは違い、細胞膜のもう一つ外側に細胞壁という構造を持つ。この細胞壁は細胞の形を維持したり、骨格構造を持たない植物を支えている重要な働きをしている。故に、植物のそのほとんどがセルロースと考えていい、わけではないが、セルロースをはじめとする多糖類が植物の体を作っている。多糖類とは、グルコースやキシロース、アラビノースなどの単糖が長く重合してできたもので、グルコースがβ-1,4-結合で重合したものがセルロース(β-1,4-グルカン)、キシロースがβ-1,4-結合で重合したものがキシランである。次際には、植物細胞壁はセルロースを主成分とし、その周囲にキシランなどのヘミセルロースがセルロース同士の間を補強するように存在している。また、リグニンというポリフェノール類の重合体もセルロースにくっついていて、複雑な構造をしている。特に、植物バイオマスは、構成している成分から、「リグノセルロース系バイオマス」と呼ばれることもある。
バイオエタノール
バイオエタノールは植物バイオマスと微生物を利用して生産できる。微生物のエタノール発酵では、1分子のグルコースから2分子のエタのノールが生産される。言わずもがな、セルロースはグルコースから出来上がっているので、重合したグルコースを単糖のグルコースに分解すれば、それを利用する微生物からエタノールが得られる。バイオエタノールは植物バイオマスのグルコースを用いて作られることがほとんどであるが、一番簡単な方法はトウモロコシやサトウキビに含まれる糖を利用することである。この場合のバイオエタノールは第一世代と呼ばれ、アメリカやブラジルで多く生産されている。しかし、一時期、人の食料や家畜の飼料の原料との競合が起こり、バイオエタノール生産に使用することが避けられるようになった。ここで、人間や家畜が食べない「リグノセルロース系バイオマス」を原料にするようになってきた。これがいわゆる第2世代バイオエタノールである。しかし、原料としては非常に使いにくい性質である。前述したが、「植物細胞壁はセルロースを主成分とし、その周囲にキシランなどのヘミセルロースがセルロース同士の間を補強するように存在している」ため大変硬くて、分解しにくくて、使いにくいのである。せっかく、「緑の惑星・地球」には植物(木、草、ワラ)などが大量に存在して、たくさん使えるのに、使いづらいのである…。
植物バイオマスを微生物の酵素で分解!
では、何を使って重合したグルコースを分解するのか?それは微生物の酵素である!!微生物の中にはセルロースの分解を得意とするものが多数存在する。なぜ得意かというと、セルロースを分解する酵素「セルラーゼ」をたくさん作れるからである。植物バイオマスを自分自身の"食事"としている微生物は植物バイオマスを自分が食べられる状態まで"調理"しないといけないのだが、そこで使うのがセルラーゼなのである。セルロースを分解した微生物は単糖のグルコース、またはグルコースが2個連なった二糖セロビオースを細胞内に取り込む。そして、微生物はそれらを利用し、エタノール代謝をする場合であれば、エタノールを生産する。私が注目しているのは、全くの新しい方法でなはく、すでに長い間地球の生態系の中に存在し微生物の中で行われてきたものである。が、これが実際にどう言う仕組みで行われているか?どれくらいの力を秘めているのか?など未知な部分が多い。すでに身の回りにある事柄を「なぜだろう?」、「どうなっているのだろう?」と考察することが(生命)科学であり、「どう言うふうに利用できるだろう?」と考えるのが農芸化学であると考える。