防災教育教材としての位置づけ
減災アクションカードゲームの防災教育教材としての位置づけについて、「ゲーム形式」、「思考促進型」、「防災・減災」の 3 点から、概説します。
① ゲーム形式について:ゲーミング・シミュレーション
この教材では、災害(地震と津波)が発生した直後からの、自分の身を守るための行動を考え、そしてより正しい行動を理解することを目指しています状況の設定は問題文によって、例えば「あなたは学校の教室にいます。地震で建物が大きくゆれています」、というように地震や津波といったハザートが生じたこと、そしてプレーヤーがどこにいるかを指定されます。プレーヤーはさらに、どのような教室か、教室内のどこにいるのか、何をしているか、誰といるのか、などを設定して身を脅かすものから身を守るための行動をシミュレーションしていきます。カルタのように、「問題文を聞いて回答する」というゲーミングであり、かつ「回答となるカードをとっさの判断で選ぶ」という点に、ゲーム性とシミュレーション性の一致する設計となっています。
② 思考促進型について
この教材でいう思考促進型とは、論理的に思考する能力を学ぶ教材であるという意味です。防災教育の現場で、例えば避難訓練の「おはしも(おさない・はしらない・しゃべらない・もどらない)」といった標語は、簡単で覚えやすいといったある一定の評価がされています。一方で、標語を覚えるような型どおりの防災教育では、対応できない危険があることも事実です。この教材では、例えば、なぜ走らないのか、どういう場合なら走るべきなのか、といったことを論理的に思考することを求めます。思考促進型としての本教材は、プレーヤーが、身を脅かす危険を仮定し、その仮定にしたがった身を守る行動を、他者に説明することを通じて、身を守るための行動をより正しく理解することを目指します。
③ 防災・減災について
防災とは「災害を防ぐ」、減災とは「災害を減らす」と、まずは文字通りに理解しても誤解はないでしょう。災害は、地震や津波といった自然現象が人間社会へもたらした好ましくない影響と言うことができます。自然現象の発生を完全になくすことは不可能です。また、近年の災害は人間社会や科学・技術の限界をあらわにしました。災害をゼロにすることはできなくとも、人的な被害を少しでも減らすことはできます。この教材では、特に自分の身を守ることで災害を減らすという思いを込めて、「減災アクション」と名付けています。