■2030本完売!皆様に感謝を!2019年のGHHビールプロジェクトは終了しました。
報告|ビアグレインの堆肥化
■はじめに
持続可能な志民ビールプロジェクト2019は、SDGsに貢献するビールづくりをコンセプトとして企画され、ビール瓶2030本分のビールが醸造されました。
このビール醸造にあたっては、通常廃棄されるビアグレイン(ビール粕)を有効活用することにより、主にSDGsのゴール12(つくる責任つかう責任)へ貢献することを目標に掲げ、ビール粕を使った焼き菓子や堆肥作りが検討されました。
ここでは、ビール粕を用いた堆肥作りをラボレベルで行い、その効果を検証するため、コマツナによるビール粕堆肥の栽培試験を報告します。
■ビール粕の活用の現状
通常、ビールの醸造工程では、ビール粕、麦芽根、ホップ粕、ビール酵母など、様々な副産物が産出されるが、最も多量に算出されるのがビール粕となっています。ビール粕は、麦芽(オオムギ)の糖化液から麦汁を濾別する際に残る不溶解物であり、粗繊維質や粗たんぱく質が多く、安価な国産飼料として牛など家畜の飼料に適していますが、水分含量が高く、放置すればすぐに腐敗してしまうという性質から、利用が進んでいないという課題があります。
GHHビールの醸造を行っている門司港地ビール工房から発生するビール粕も、過去に北九州市内の畜産農家によって飼料として活用していた実績がありましたが、畜産農家の運搬負荷や農家数の減少の課題から、現在は産業廃棄物として廃棄されています。
■結果概要
・すべての試験区で、発芽率は80%以上であり、堆肥による植害作用は見られませんでした。
・ビール粕を含む堆肥を施用した試験区では、対象区と比較して、地上部、地下部ともに伸長成長を促進する効果が見られました。
・堆肥を施用した試験区では、成長にばらつきがみられ、堆肥が全体に分散しない堆肥ムラができたことから、堆肥施用時には、土壌とよく混合する必要があります。
■試験概要
準備
・門司港地ビール工房から届いたビアグレイン(ビール粕)をしばらく天日に干して乾燥させました。
・ビール粕のみとビール粕+生ごみ堆肥に分け、通気性のある容器入れて雨に濡れない場所に保管しました。
・2日に1回、スコップでよくかき混ぜました。
・少量の水分を加えましたが、それ以外は何も加えていません。
使用資材
・花と野菜の土
・ビール粕を約6週間発酵させ堆肥化したもの(ビール粕堆肥)
・ビール粕を生ごみ堆肥と混合して、発酵させ堆肥化したもの(ビール粕+生ごみ堆肥)
・コマツナ種子(朝日工業)
試験方法
・ポリポット(直径10.5㎝)に花と野菜の土と堆肥を混合し、コマツナの発芽及びその後の成長を観察した。
・対照区には、堆肥は混合せず、花と野菜の土100%とした。
・異なる資材を混合したサンプルを3試験区用意し、各試験区につき2反復した。試験区ごとの資材は表1のとおり。
・各ポットに、コマツナ種子を10粒ずつ播種し、適宜灌水を行いながら9週間(約2か月)生育した。
・9週間後、ポットからコマツナを取り出して水洗いして土を取り除き、地上部、地下部の長さを計測した。
■結果
発芽率
発芽率は、全ての区画で80%以上であり、堆肥による植害作用は見られませんでした。
地上部長(植物の地上に出ている部分の長さのこと)
グラフは、各試験区の地上部長さをプロットしたものであり、×で示されている値は、各試験区の平均値です。
地上部の長さは、ビール粕堆肥を施用した試験区が、最も成長し、次いでビール粕を生ごみ堆肥と混合して発酵させた堆肥も同じように成長しました。これらのビール粕を含む堆肥は、対象区と比較して本葉が出る時期が早く、本葉の成長も早かったが、対象区では、ほぼ双葉の時点で2か月目を迎えました。
ポットごとのばらつき
・地上部長の結果について、ポットごとにばらつきがある試験区とほとんどない試験区がありました。
・ ポットごとの葉長のばらつきが大きかった試験区は、肥料を施用した区が多く、ポット 内で肥料ムラができたことが原因のひとつとして考えられます。
地下部長(植物の地上に出ていない部分の長さのこと)
下のグラフは、各試験区の地下部の長さをプロットしたものであり、×で示されている値は、各試験区の平均値です。
地下部の長さは、ビール粕を含む堆肥が対象区よりも1.3~2.3倍程度の長さまで成長していました。
ポットごとのばらつき
・地上部長の結果について、ポットごとにばらつきがある試験区とほとんどない試験区がありました。
・ ポットごとの葉長のばらつきが大きかった試験区は、堆肥を施用した区が多く、ポット 内での堆肥ムラが生じたことが要因の一つと考えられます。
・また、発根が著しかったため、根同士が絡まりあい、測定時に途中で切断したものがあったことなども原因として挙げられます。