アーキトレーブ
Architrave エンタプラチュアの一番下の要素
アーケード
Arcade 教会堂では身廊と側廊の間を区切るアーチ状の構造(大アーケード:メインアーケード) 街中ではアーチ状につながった外通路などを指す 現代では屋根付きの通路をそう呼ぶことが多い 壁面に装飾的に造れた開口部の無いアーケード構築をブラインド・アーケードという
アーチ
Arch 石造(レンガを含む)の壁や橋などで下部に空間(窓や通路等)を空けたい場合の方法の一つ。特別な材料を使うことなく、元々の材料を細工し、半円形に組み合わせることで構造的に安定となり可能となる。石造の場合はアーチを構成する迫石(せりいし、ブーソア)と、中央頂部に置き全体を安定させる要石(キーストーン)からなる。木材による建築である日本建築では全く一般的ではない構造。
アーチの種類 形状により分類。
・半円アーチ:一番オリジナルなアーチ。古代社会やロマネスクによくみられる 。ゴシック期に尖頭アーチ が流行ったがルネサンスで復活した。
・馬蹄形アーチ(アラビックアーチ):半円アーチの下をすぼめ伸ばした形 イスラム建築で多用
・フラットアーチ:上部が円形ではなく水平になっている
・尖頭アーチ(ポインテッドアーチ):先端が尖ったゴシックの特徴をなすアーチ
・ランセットアーチ:二つの円弧によるアーチ
・オージーアーチ:上部がS字型を描くゴシックによくみられる
・チューダーアーチ:高さの低い屋根型のようなアーチ
・四心アーチ:チューダアーチの背を高くしたような形
・三弁型アーチ:半円アーチの上に尖頭アーチをつけたような三つの山型をしたアーチ
・多弁型アーチ:多数のボコボコした山形を連ねるアーチ
・トライアンファルアーチ 凱旋門のように中央の大きなアーチの左右に小振りなアーチが並ぶ三連アーチの形式
・ブラインドアーチ 開口部のないアーチ
アーヘン礼拝堂
(ドイツ・アーヘン) Aachener Dom 805献堂 ビザンツ建築の影響 東方的な集中式教会堂(中央に八角形クーポラ)
アームピット
armpit 教会堂の内陣と袖廊の間 ドイツ・ロマネスク教会堂ではここに塔が建てられることが多い
アール
Halle 市場(いちば)が開かれる軸組構築物(非壁式)上部階に役所機能併設もあり
アール・デコ様式
Art Déco 20c初頭~ 定規・コンパスで作画できるデザイン様式(建築構造の様式ではない)端正なルネサンス様式と親和性が高い
アール・ヌーヴォー様式
Art nouveau 19c末~ 植物の様態を模したデザイン様式(建築構造の様式ではない)ダイナミックなバロック様式と親和性が高い
アヴィニョン
(フランス) Avignon 14世紀:市壁構築 アヴイニョン教皇宮殿(1335-55頃) 中世最大の宮殿建築にして城塞建築 ゴシック様式を世俗建築に転用 サン・ベネゼ橋(1177-88)→ 1680年に放棄
いわゆる「アヴィニョンの橋の歌」の橋
アウレリアヌス城壁
(イタリア・ローマ) Mura aureliane カエサルにより撤去されていた城壁を再建271~ 総延長19Km(西側はテヴェレ川) レンガ作り6m高、3.5m幅、27m間隔で塔 既存の建造物も利用しながら急造
アクロテリオン
akrōtērion ペディメントの頂部に置かれる小像
アクロテリオン・アングラー
ペディメントの隅部に置かれる小像
アゴラ
Agora 古代ギリシャ都市の中の広場 周囲にストア(集会場や商店)を配することが多い
アザム教会
=>ザンクト・ヨーハン・ネポムク聖堂
アティック
凱旋門のエンタブラチュアの中央に掲示される皇帝の成果を示す碑文
アトランティーズ
atlantes 男性上半身の姿をした柱 テルメ柱と同じ?
アトリウム
atrium 古代ローマの住宅で入口奥にある中庭風の広間。中世のバシリカ式教会堂の柱廊に囲まれた前庭(=>クロイスター) 現代ではガラスなど光を通す屋根で覆われた大規模な空間。
アファイア神殿
(ギリシャ・エギナ島)Naos tis Aphaias 紀元前480年頃に建造 六柱式の周翼式(ペリプテロス)神殿(正面6、側面11) 初期の太いドリス式
アプス
apse 教会堂の内陣より先 あるいは祭壇部 教会堂の中では一番聖なる場所となる
アポロン神殿
(ギリシャ・エギナ島) Naos tou Apollona BC6c 六柱式神殿(正面6、側面11)
アミアン大聖堂
(フランス・アミアン) Cathédrale Notre-Dame d'Amiens 1220-1266 ノートルダム・アミアン大聖堂 典型的ゴシック様式 5廊式 42m高の天井(右塔がゴシック) 3大ゴシック教会堂で「ゴシックの王」と呼ばれる
アヤソフィア大聖堂
=>ハギヤソフィア大聖堂
アリウス派洗礼堂
(イタリア・ラヴェンナ) ラヴェンナの初期キリスト教建築の一つ
アリュール (歩廊)
allure 城壁のカーテンウォールの頂部に設けられた擁壁上部通路
アルター
altar 祭壇
アルハンブラ宮殿
(スペイン・グラナダ) la Alhambra 1238-1391 グラナダ城塞内 ムーア様式(13c後半ムーア人配下に)欧州でのイスラム教最後の拠点となりイスラム建築の影響も強い 室内壁:スタッコ細工と彩釉タイルによる華麗な模様 イスラム庭園文化:庭園+水盤・水路+植栽
皇帝カーヒル5世宮殿16c 外観は正方形平面ルネサンス様式の2階層建築 内部に完全円形の庭園とそれを囲むポルティコ
アルベルティ
(建築家) Leon Battista Alberti 1404-72 ルネサンスの大建築家 1452「建築技論」を出版 地面→間取り→壁(石造)→屋根→窓・扉の構成=壁式構造(組積造構造) サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂 パラッツォ・ルチェッライ
アロー・スロット
Arrow slot 矢狭間 城壁やバスティオン等に開けられる矢を射る為の狭間
アンサント
Ansanto 陣地を取り囲む防御用施設 城壁、城門、城塔などの全体を示す
アン女王朝様式
18c前後 イギリスで生まれ、アメリカで華麗に流行した小住宅向けの様式 外観は不規則なデザイン 小さな塔や玄関ポーチと連続したベランダ 窓に特長がありベイ・ウィンドウ(台形に張り出した出窓)、ダブルハング・ウィンドウ、窓周囲の額縁意匠など。
アンドレア・ポッツォ
(建築家) AndreaPOZZO,1642-1709 建築家 透視図法の名手といわれたイエズス会士 サンティニャツィオ教会堂
アンフィラード
中世の宮殿などで廊下で部屋をつなぐのではとなく、部屋と部屋が直接つながっている形式。部屋のハイアラーキーを表現する。
アンフィ・テアトルム
半円ではない円形劇場=>テアトルム(半円劇場)
イエズス会
Societas Iesu 1534カトリック宗教改革の一環(対プロテスタント)として設立したカトリック宗教団体。イル・ジェズ型教会堂を構築。新しい信者獲得の為の海外布教も推進 フランシスコ・ザビエルも所属。
イギリス積み
日本のレンガ積みの方式名称 列ごとに長短入れ代わる =>フランス積み(同列内に長短交互)
イコン
Icon 聖画像 イエス・キリスト、聖人、天使、聖書における重要なできごとや例え話、教会史上の出来事を描いた画像。偶像が禁止されている東方教会堂では必須のアイテム
石落し
=>マシクーリ
イスラム建築様式
ビザンツからの影響(ドーム、モザイク) アラベスク(唐草模様)や幾何学的文様、文字文様の装飾 多様なアーチ 馬蹄形アーチ パロティや中庭の重視 中庭にグリッド状に木を並べる 例:メスキータ、アルハンブラ宮殿 =>モスク =>アーチ
イタリアの教会堂
鐘楼と洗礼堂を本堂とは独立して建築することが多い
イル・ジェズ型教会堂
Il Gesù イエズス会活動1534- で使われた教会堂、17c以降のマニエリスム期に流行る。ヴィニョーラにより考案された。
▷山形の教会堂ファサードの身廊と側廊の高さの差をルネサンス様式の二階立ての建物として見せる工夫。1階2階の不連続性を渦巻き状模様(ヴォリュート)で流麗化。
▷ファサードはマニエリスムの双子柱のピラスターや凸凹のあるエンタブラチュアを採用し、内部も含めて全体はバロック様式に収斂していく。
▷ルネサンス様式にみせる対案としてはパラーディオによるジャイアントオーダを使った形式あり。=>ジェズ教会
イル・レデントーレ教会堂
(イタリア・ヴェネチア) Il Redentore パラーディオ作 異なるオーダを使用→イルジェズ型への対案
インターナショナル・スタイル
欧州で言うモダン・ムーブメント(日本ではモダニズム建築)の米国での表現
インポスト
impost アーケード柱のアーチを受ける意匠(エンタブラチュアのイメージに起因)
ヴァンセンヌ城塞
(フランス・パリ) パリ郊外 ドンジョンを中央に配置する中世城塞
ヴィースの巡礼教会堂
(ドイツ) hâteau de Vincennes 1745-1754 外観は質素な氏名教会堂 内部は豪奢なロココ調 キリスト像が涙を流したという奇跡でも有名
ヴィニョーラ
(建築家) Giacomo Barozzi da Vignola 1507-1573 5種のオーダー(トスカナ式、ドリス式、イオニア式、コリント式、コンポジット式)をまとめる イル・ジェズ型教会堂を考案
ヴィチェンツァ
(イタリア) Vicenza パラーディオ建築の街 世界遺産
・パラッツォ・デッラ・ラジオーネ(パラディアン・モチーフ)
・パラッツオ・ヴァルマラーナ(ジャイアントオーダ)
・ヴイツラ・カープデ ロッジア・デノレ・カピタニャート(ジャイアントオーダ)
・パラッツォ・ポールト・ブレガーンツェ(同)
・パラッツォ・バルバラーノ(四方に神殿様式、パラディアニズム)
・テアトロ・オリンピコ(遺作)一点透視図法的な舞台)
ウィトルウィウス
(建築家) Marcus Vitruvius Pollio ~紀元前15年 共和政ローマ期の建築家 =>「建築十書」の著者
ヴィラ
Villa 農村部の邸宅 都市部の邸宅は=>パラッツォ
ヴィラ・ロトンダ
=>ロトンダ 1550~15C末 中央に円形ホールがあり、四方の出入口に6本のイオニア式柱を持つのギリシャ神殿の正面意匠を設置
ウェゲティウス
(建築家) Flavius Vegetius Renatus 4c末 「軍事学概論」を著す 12c頃まで活用される 築城fortificationと囲城戦siegeの理論
ヴェストヴェルク
=>西構
ウエストミンスター宮殿
(イギリス・ロンドン) Palace of Westminster 1840-1860 ゴシック・リバイバル 垂直方向が強調された意匠 外壁のコラムの上にはピナクルが乗る整然としたスタイル 中央塔によるシンメトリー構成 ビクトリアンタワー、ビッグベン(時計台)が附属 現在は国会議事堂 ウェストミンスター寺院、聖マーガレット教会堂が連続する
ヴェネツィア
(イタリア) Venezia 14-15cに海洋帝国として最盛期 世界遺産 サン・マルコ礼拝堂(集中式5ドームのビザンツ様式)→ヴェネツィア総大司教座聖堂 パラツォドッカーレ(総督宮殿)1階ロッジア2階ポテイテッドアーチのアーケード3階大会議場
ヴォールト
vault 石積みの内部天井 屋根はこの上に木造で架けられる
・トンネル(半円筒)ヴォールト トンネルのように半円形断面で連なる天井 古代ローマ
・四分ヴォールト ゴシック中~後期 一つのベイの四隅からリブが伸ばされる 上から見るとX形となる
・六分ヴォールト ゴシック初期 二つの連続したベイの四ツの隅と二つのベイの中央からリブが伸ばされる 上から見ると横軸が入ったX形となる
・ファン・ヴォールト イギリスの教会堂にみられる扇模様
・交差ヴォールト 直交するトンネルヴォールトを各々がぶつかる交差線で接続する形状
・リブヴォールト ヴォールト工法上の接合線をリブという石で補強したもの 13c以降には装飾的な扱いになる
ヴォリュート
volute 一般的に渦巻き模様 イル・ジェズ型教会堂では1階部分と2階部分の落差をデザイン的に整合を取らせる為の渦巻き状模様 イオニア式オーダでは柱頭の渦巻き部分
腕木・腕木穴 中世の石積み工事は石積み壁面に腕木穴を作りこそに腕木をさし足場にして行われた 完成後もその穴が残れることが多い 特にイスラム系の建築に多い
ヴュルツブルク司教館
(ドイツ・ヴュルツブルク) Würzburger Residenz 1720-1765 ドイツ・バロックの典型的宮殿 両翼の中央に円形のパビリオン 世界最大のフレスコ画
ウルム大聖堂
(ドイツ・ウルム) Ulmer Münster ゴシック様式 161.5mの教会堂としては世界一の高さの単塔を持つ 献堂1383 塔完成1890
エクサン・プロヴァンス
(南仏、南伊) Aix-en-Provence イタリアとスペインの問の交通の要所 1182プロヴァンス伯の本拠地となる 円環状の市壁 サン・ソーヴール大司教座聖堂:様式混合
エスカラード
escalade 城壁を梯子などで登攀する攻撃方法
エディクラ
aedicula(又はエディキュラ) 両脇に円柱を立て三角形の小屋根(ぺディメント)を配置した空間。小祠、小神殿。
エルミタージュ(冬宮)
(ロシア・ザンクトペテルブルク) Ermitazh 1754-1762 ロマノフ王朝が建設 全体としてはロの字型の大宮殿 外周は大オーダの2本積み重ね 薄緑と白の窓枠による特徴的な華麗さ(建築当初は黄色)
エクレティシズム
eclecticism =>折衷主義建築
エンタシス
entasis ギリシャ神殿で柱に膨らみをつけ遠方からみた時に直線にみえるようにした工夫
エンタブレチュア
entablature 梁の部分 ギリシャ風神殿では下からアーキトレーヴ(柱受け相当)+フリーズ(梁小口部分相当)+コーニス(軒相当)部分を言う フリーズは横方向にトリグリフ(3連の縦模様を持つ、小口の象徴)とメトーブ(化粧板)が交互に装飾される
=>オーダー
円柱
=>コラム
円柱 取り付け形態
構造体としての取り付け(古代ギリシャ神殿)
装飾体としての取り付け
・デタッチド・コラム(壁前独立柱)
・ハーフコラム(半柱):半円形を壁に取り付け、
・ピラスター(付け柱):板様の柱模様物を壁に取り付け
円柱 構成要素
円柱とその上下構造=柱礎(ベース)→柱身(シャフ卜)→柱頭(キャピタル)→アーキトレーヴ→フリーズ→コーニス→ティンパノン(破風)→アクロテーリオン
エンタブレチュア=アーキトレーヴ+フリーズ+コーニス
・神殿の円柱は正面をn本とすると側面は2n+1本が標準
・ドラム 石材の円柱は1本の長い石材手はなく短いドラム缶型の部材(ドラム)から構成される
・フルート 円柱の表面に縦に刻まれる凹み
・スタイロベート 円柱の土台となる床
=>オーダー
円柱 クレタ島様式
上が太い形
円柱 ジャイアント・オーダー
大オーダー 階を貫く背の高い柱様式 マニエリスム~バロック期に登場
円柱 ペア柱
マニエリスム~バロック時代の柱の使い方の一つ 従来は等間隔に単独設置だった柱を二本ペアにして並べて使う形式
横断アーチ
建物の建築方向と直角に横断するアーチ構造
オーダー理論
Order 柱梁に使われる柱の様式 オーダ理論はヴィニョーラによりルネサンス後期のマニアリスム期に成立 5種類のオーダー(トスカナ、ドリス、イオニア、コリント、コンポジット) ドリス・イオニア・コリントは古代ギリシャ由来、トスカナ・コンポジットは古代ローマ由来 =>円柱
オーダー
Order オーダーは西欧歴史建築学の中でも根幹を成すといってよい概念。オーダーは柱(シャフト)と梁(エンタブラチュア)を組み合わせた様式をいう。ギリシャ起源が3種類(ドリス式、イオニア式、コリント式)、ローマ起源が2種類(トスカナ式、コンポジィット式)があり、更に細かく分けられる場合もあるが、一般的には16cヴィニョーラよって5種類に整理されている。
オーダーは要素毎に細かく区分され、様式はそれ毎に細かい違いがある。
簡易的にはエンタブラチュアにはあまり気を回さずに、柱の様式、とりわけ柱頭の様式をオーダーと称する場合もある。
オーダー(古来の用語)
ロマネスク時代とゴシック時代では柱を支えるアーチ状のモールディングを意味した
オーダーの積み重ね
二階、三階とオーダーを積み重ねる場合は下層からドリス式→イオニア式→コリント式→コンポジット式と重ねるのがルール。更にその上に乗せる場合はカリアテッド(女像柱)を乗せる。
岡田信一郎
(建築家) 1883-1932 明治生命館1934日本の古典建築の秀作 中央区立常磐小学校(復興小学校) 黒田記念館本館
オクルス
oculus 眼窓 円窓 セントラル・オクルス:ドームの頂点に開けた開口部 例:ローマ・パンテオン
オスベダーレ・デリ・インノチエンティ
=捨子養育院、孤児養育院 (イタリア・フィレンツェ) Spedale degli Innocenti 1421-1445 ブルネッレスキ 初期ルネサンス建築の代表例コリント式円柱とそれをつなぐ連続アーチのポルティコ(柱廊) ただしインポスト(エンタブレチュア相当)無し
オッピドゥム
oppidum ガリア人が作った丘の上の集落 その後のローマ人は丘の上には住まず放棄・衰退する
オピストドモス
opisthodomos ギリシャ神殿の裏口側の部屋
オベリスク
obelisk 元は古代エジブトの神殿に立てられた柱 転用しローマ都市計画で各広場のランドマークトとして置かれる
オリエンテーション
orientation 教会堂建築でアプスを東側に持ってくること(入り口は西側を向く) 建築場所によってはそうは出来ない場合も多い
オリュンピエイオン(ゼウス)神殿
Olympieion 132 アテネ コリント式を本格的に採用したローマ時代では最大の神殿 正面8本、側面21本の柱