日時:2026年3月22日(日)14:00 開始
会場:株式会社内田洋行 新川本社(東京都中央区新川2-4-7)ユビキタス協創広場 CANVAS
参加者:60名
参加者:61名(大学教員30名、大学職員18名、その他13名)
1996年に学校法人共愛学園に入職、共愛学園前橋国際大学国際社会学部長、副学長等を経て、2016年より学長。
文部科学省や内閣官房など政府の各種委員のほか、中央教育審議会では大学分科会、同高等教育の在り方に関する特別部会(副部会長)、教育振興基本計画部会をはじめ各種委員を歴任。
地域では群馬県青少年健全育成審議会会長、群馬県教育振興基本計画策定懇談会座長、県都まえばし創生本部有識者会議座長等各種公的委員を多数務める。
群馬県総合表彰(男女共同参画分野)、群馬県男女共同参画社会づくり功労者表彰。全国の学長が注目する学長ランキング4年連続1位(『大学ランキング』)
児童教育コース教授。東京学芸大学連合大学院修了。博士(教育学)。2005年共愛学園前橋国際大学に着任。元中学校教員。専門は、教育人間学、家庭科教育学、住環境教育。人間の日常生活の事象から人間について考察し、さらにそこから教育のあり方を捉え直すための教育研究に取り組む。主な著書は『子ども・若者の自己形成空間―臨床教育人間学のまなざし―』(共著、東信堂 2011年)等著作多数。
文科省補助事業「大学教育再生加速プログラム」の責任者として教育改革推進を担当し教育成果の可視化と教育の質保証に取り組む。群馬県読書活動推進会議議長、埼玉県蕨市子ども子育て会議議長。
国際社会学部長、情報・経営コース教授。明治大学大学院商学研究科修了。博士(商学)。日本経営システム学会理事。2012年4月に共愛学園前橋国際大学に着任。2016年4月より現職。専門は人的資源管理論、情報管理論、組織論。教育面では海外でのPBL研修など、グローバル社会に対応した問題発見・解決力の育成に取り組む。主な著書は『経営情報のネットワーキング戦略と情報管理』(編著、同文舘出版)。
2026年3月22日(日)、株式会社内田洋行 新川本社(東京)にて、第8回大学リーダーシップ公開研究会を開催しました。全国から61名の教職員・関係者にご参加いただきました。
大学の教育ビジョンが、学長から副学長・学部長を経て、一人ひとりの授業担当者に届き、最終的に学生の成長につながるまで――そのプロセスには何が起きているのでしょうか。
第8回は、共愛学園前橋国際大学から大森昭生学長、後藤さゆり副学長、村山賢哉学部長の三者が揃って登壇するという、これまでにない試みで実施しました。同じ大学の「トップ」「ミドル」が、同じ改革について、それぞれの立場から語ることで、そこに現れた「見え方の落差」こそが、今回最大の発見でした。
大森学長は、共愛学園の全体像と教学マネジメントの仕組みを紹介したうえで、自身の役割をこう表現しました。「国の動向を共愛学園に合う形に翻訳するのが私の仕事。具体化は頼んだ、と言って任せる」。12の力とカリキュラムの関係、新学部のDPの整合性について、2人のミドルから説明を受けて「感動した」というエピソードが印象的でした。
村山学部長は、「改革の進め方の裏側」として、2つのマネジメント・パターンを提示しました。平時は現場から課題が上がり、ミドルが走り回って調整する「分権型」。有事には学長がビジョンを発出し、「具体化は頼んだ」とミドルに委任する「トップダウン型」。この2つのモードの使い分けが、共愛学園のダイナミズムの核であることが明らかになりました。学長が学内を「歩いて」現場の声を拾い、ミドルがそれを受けて「走る」という構図は、「歩く学長・走るミドル」という言葉で会場の共感を集めました。
後藤副学長は、「自律的組織を生成する――対話による合意形成」と題し、ビジョンを組織に浸透させるための方法論を語りました。後藤先生の整理では、ビジョンの共有において「権威的な伝達」は機能せず、「賛成・反対の議論」にも限界がある。異なる専門分野の教職員が互いの見え方を「チューニング」する対話の積み重ねこそが、自律的な組織を作ると述べました。カリキュラム改革では、トップダウンで一案を示すのではなく、各コースに「どんな形が望ましいかを考えてください」と投げかけ、約1年かけて対話で収斂させたプロセスが紹介されました。
山本啓一(北陸大学)のファシリテーション、吉村充功(日本文理大学)・成田秀夫(日本文理大学)のコメントを交えたパネルでは、三者の関係性がさらに立体的に描き出されました。
翻訳は多層的である。 山本が「大森先生自身がまず翻訳者ですよね」と指摘し、村山学部長が「共愛的に翻訳するのが学長。うちの学生版に翻訳するのが自分」と応答。ビジョンは1回の翻訳ではなく、複数の段階を経て現場に届いていることが明らかになりました。
板挟みは後藤副学長にあった。 吉村先生の「誰か板挟みになっている人はいるのか」という問いに、村山学部長が「後藤先生だと思う」と即答。後藤副学長は「やっているときは必死なので、板挟みとは感じませんでした」と応じ、会場の笑いを誘いました。
止まったら死ぬ。 成田先生が「自転車操業で動いてるから先に進んでいるのでは」と問いかけると、大森学長が「逆に言うと止まったら死ぬんですよ」と即答。変化する社会に対して動き続けることの意味が、三者に深く共有されていることが伝わりました。
学生を錦の御旗に。 村山学部長は「我々が常に錦の御旗にあげるのが学生」と述べ、シラバス改革も学生アドバイザリー委員会の声をきっかけに進めたことを明かしました。「学生のために」という言葉が、教職員の対立を調停する共通言語として機能している実態が見えてきました。
成田秀夫(日本文理大学)のファシリテーションにより、9グループに分かれてのワークを実施しました。「ビジョンが現場に届いている部分」「途切れている部分」を書き出し、「明日からの一手」を言語化するという構成です。
各グループの報告からは、多くの大学に共通する課題が浮かび上がりました。「ビジョンは副学長・学部長までは届くが、その下の教員には届きにくい」「危機感が共有されていないと、何を言っても自分ごとにならない」「教員と職員のコミュニケーションの分断」――これらは、共愛学園の事例が「特別な成功例」ではなく、多くの大学が直面する構造的課題への一つの回答であることを示しています。
一方で、「味方を増やす」「学生の声を起点にする」「対話の場を制度として作る」「インナーブランディングで建学の精神を浸透させる」といった具体的な一手も多く提案されました。
フロアからの「共愛さんの初期の頃の危機を乗り越えた経験こそが今を作っているのではないか」という問いに対し、大森学長は「入学定員充足率64%まで落ちたことがある。座して死を待つのみだった」と率直に語りました。そのうえで、「上がやってくれないと言っているうちは自分ごと化されていない。仕組みを作って動いて、上の人たちをそこに引き込むところまで仕掛けないといけない」と述べ、若手教職員へのエールとなりました。
文部科学省の板倉康洋学術研究推進課長(プライベート参加)からは、「教員が大事だということは言うまでもないが、それを支えるスタッフの能力を活かしきれているかという視点が非常に大事」とのコメントをいただきました。
閉会挨拶で吉村充功(日本文理大学)は、当日の音声をAIで分析して生成したインフォグラフィックスを提示し、今後の研究テーマとして「学生参画」「対話による組織開発」「両利きの経営の実装」「マネジメントスタッフの専門性」「高大接続」の5つの柱を示しました。
また、「新学部を作り、新しい先生方が入ってくるなかで、本当に同じビジョンで走っていけるのか。4年後の答え合わせを楽しみにしている」と、今後の継続的な追跡への意欲を語りました。
大学リーダーシップ研究会は、科研費・基盤研究(C)「ダイナミックな教学マネジメント体制の構築~ミドル教職員の育成と組織開発に向けて」の助成を受けて活動しています。第8回は、科研第2期の探索・構造化フェーズにおけるパイロット事例研究として位置づけられます。
今回の最大の知見は、「翻訳」という概念の拡張です。ビジョンの翻訳はミドルだけの仕事ではなく、トップ自身も翻訳者であること。翻訳は上から下への一方向ではなく双方向であること。翻訳は各層の文脈に合わせた創造的なリフレーミングであること。そして何より、翻訳は互いへの信頼関係のもとで成立していること――これらの発見は、今後の調査の設計にも活かされます。
次回(第9回)は2026年7月に開催予定です。詳細が決まり次第、ご案内いたします。
ご参加いただいた皆様、会場をご提供いただいた内田洋行様に、心より御礼申し上げます。
本研究はJSPS科研費 基盤研究(C)の助成を受けたものです(「変革を生み出すダイナミックな教学マネジメントを支える組織とミドルリーダー研究」(代表:山本啓一))
リーダーシップ研究会は、多くの方々に支えられて、これまで続けられています。ご支援いただいている皆様に深くお礼申し上げます。
大学リーダーシップ研究会事務局
事務局:京都府京都市北区紫野北花ノ坊町96 佛教大学キャンパス内(水谷俊之)
メールアドレス toshimiz@bukkyo-u.ac.jp ℡075-493-9021(宗教課)