2025年7月12日
第7回公開研究会
大学の生き残りとポスト教学マネジメント
― 深化と探索を加速する、ミドル教職員の役割を再考する ―
大学の生き残りとポスト教学マネジメント
― 深化と探索を加速する、ミドル教職員の役割を再考する ―
2025年7月12日(土)、芝浦工業大学豊洲キャンパスにおいて、第7回大学リーダーシップ公開研究会を開催いたしました。今回のテーマは「大学の生き残りとポスト教学マネジメント-深化と探索を加速する、ミドル教職員の役割を再考する-」です。変化する高等教育環境における大学組織のあり方について、活発な議論が交わされました。
基調講演では、共愛学園前橋国際大学の大森昭生学長がしました登壇いただきました。大森学長は「教マネを回すだけでは生き残れない。深化と探索を融合し、ダイナミックな教学マネジメントが必要だ」と強調しました。
従来の静的な制度運営から動的な教学マネジメントへの転換が急務であると訴え、「映える」カリキュラムや科目の創出、螺旋状の教学マネジメントサイクル、地域連携といった具体例を通じて、教学マネジメントと生き残り戦略の統合的アプローチの重要性を示しました。
続いて、山本啓一(北陸大学教授)より、ダイナミックな教学マネジメントの理論的整理として、4つの要素からなるフレームワークを提示いたしました。
①マネジメントとリーダーシップの統合
②深化と探索の両立(両利きの経営)
③非公式ネットワークの活用
④組織開発による文化変革
このフレームワークの核心は、既存の学位プログラムの質保証と新たな教育改革の同時推進にあります。ミドル教職員が「変革のエンジン」として、トップのビジョンを現場に翻訳し、現場の知を上層に媒介する役割を担うことが重要です。
事例報告では、芝浦工業大学の榊原暢久教育イノベーション推進センター長と鈴木洋情報システム部長に実践事例をご紹介いただきました。
榊原センター長からは、カリキュラムの整合性確保から主要授業科目の要件策定まで5年をかけたプロセスについてご説明いただきました。センターが「黒子」として学部・学科の自律性を重視し、「問い」の形で課題提起を行う仕組みが印象的でした。
鈴木部長からは、改革総合支援事業12年連続選定の実績を背景に、授業評価アンケートを廃止し学生の自己評価型に転換する取り組みや、職員の人材育成について具体的な事例をご紹介いただきました。これらの実践は参加者から大きな反響を呼びました。
鈴木洋 情報システム部長
榊原暢久 教育イノベーション推進センター長
パネルディスカッションでは、芝浦工業大学の教育イノベーション推進センターが大学の内部質保証体制図には描かれていないというご指摘が印象的でした。これは、真の改革エンジンが制度図には現れない「実践の領域」にある可能性を示唆しています。
また、教授会を年4回に削減し教員の時間を最大限活用する「減らす」改革や、部署を超えた横断的なチーム編成の日常化など、具体的な業務効率化事例も共有されました。
役立った点
・教学マネジメントを通じた大学の生き残りの視点が得られた
・他大学との連携や実践事例共有が有益だった
・参加者が似た課題意識を持っており、共感と情報交換ができた
・芝浦工大の具体的な取り組み(授業評価アンケート廃止、「問い」の形での課題提起等)が参考になった
・教学マネジメントと学生募集の両立について、整理された説明を得られた
・ミドル教職員や教職協働の重要性を改めて実感した
テーマに関する意見
・現在の大学が置かれている状況に合致した、時宜を得たテーマだった
・「ポスト教学マネジメント」という切り口が新鮮で、形骸化した教マネからの脱却を考えるきっかけになった
・教学マネジメントと生き残りの統合は、継続的に議論する価値のあるテーマ
本研究会は、従来の制度論的な教学マネジメント論を超えて、実践に根ざした「ダイナミックな教学マネジメント」の可能性を示すことができました。また、18歳人口減少という構造的課題に直面する中、大学の生き残りと教育の質向上を両立させるためには、ミドル教職員の役割が決定的に重要であることが明らかになりました。
大学改革は制度設計だけでなく、実践の積み重ねによって実現されるものです。そのための実践知の蓄積と共有がますます重要になっていくことが改めて確認されました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
リーダーシップ研究会は、多くの方々に支えられて、これまで続けられています。ご支援いただいている皆様に深くお礼申し上げます。
本研究はJSPS科研費 基盤研究(C)の助成を受けたものです(「変革を生み出すダイナミックな教学マネジメントを支える組織とミドルリーダー研究」(代表:山本啓一))
大学リーダーシップ研究会事務局
事務局:京都府京都市北区紫野北花ノ坊町96 佛教大学キャンパス内(水谷俊之)
メールアドレス toshimiz@bukkyo-u.ac.jp