髙田春奈さん/WEリーグ(公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ)チェア、取材時:Jリーグ(公益社団法人日本プロサッカーリーグ理事

Jリーグ全試合でカーボンオフセット実施

本誌で掲載されているインタビュー記事の一部をご紹介します

1993年に開幕されたJリーグには現在58のクラブがあり、それぞれのホームタウンで社会課題に取り組んでいます。活動内容はスポーツの普及やサッカー教室だけでなく、環境や多文化共生など多岐に渡り、それらの総称を「シャレン!(社会連携活動)」としています。



その中でも今後より一層、気候変動対策に注力していきます。

来年30周年を迎えるJリーグは、「世界一クリーンなリーグ」を目標として本気で社会課題に取り組み、環境、人権、健康などさまざまな課題解決に対する活動を進めていきます。



サッカー界も気候変動の影響を受けていて、試合などでは多少なりとも環境に負荷を与えています。Jリーグでは、まずこの現状を把握し、CO₂排出量削減の目標に貢献するべきだと考えます。



その第一歩として、Jリーグ公式戦全試合でカーボンオフセットを実施することを宣言しました。

そして、サッカーをきっかけに気候変動対策に興味を持つ人を増やして日々の行動変容を促すことで、大幅なCO₂削減に貢献していきます。


サッカーで平和の輪を広げる


私は長崎出身ということもあり、平和を意識して育ちました。元々スポーツは好きで、平和の祭典であるオリンピックなどで「スポーツの力」を感じていました。スポーツで直接的に平和にすることはできないかもしれませんが、スポーツを通して「みんな一緒に生きている」と感じることはできます。


2017年にV・ファーレン長崎の経営に関わることになり、平和活動に力を入れました。その取り組みの一つとして、2020年の夏にクラブと高校生平和大使で連携協定を結びました。サッカーという多くの人に浸透しているスポーツ、地元でも愛され受け入れられているチームと平和大使の活動を提携させることで、より平和活動の輪を広げていけるのではないかと考えたからです。



V・ファーレン長崎だけでなく、サンフレッチェ広島、FC琉球など戦争の記憶が強い地域のクラブが積極的に平和活動をしています。ロシアのウクライナ侵攻が起こった際には、反対のメッセージを打ち出すクラブもいくつかありました。

このように、サッカーを通じて人々の根底の人権意識を作っていくことができるのかもしれません。

日本のサッカー文化を軸に


スペインリーグで指導者をしていた佐伯夕利子Jリーグ前理事は「日本のサッカー文化には、優しさや人とのつながり、フェア精神など高い価値がある」とおっしゃっていました。

少し遠回りかもしれませんが、日本のサッカー文化を軸に独自の地域密着型の活動を展開しているJリーグの「シャレン!」が、日本全体をハッピーにすることができるのではないでしょうか。


全国のクラブが地域で行なっているそれぞれの活動をまとめたら、大きな輪になるでしょう。待ったなしの気候変動問題について、Jリーグはもっと積極的に発信していきたいと思います。全国に多くのサポーターや連携企業を持つJリーグだからこそ、世の中に大きな影響を与えられるからです。


2021年6月、Jリーグは環境省と連携協定を結び、勉強会などの交流を続けてきました。2023年にはJリーグ発足30周年を迎えます。この節目に向けて、Jリーグは気候変動をはじめとする社会問題に対して本気で取り組む姿勢を表明します。

そして、その解決に向けたさまざまな活動に取り組む「世界一クリーンなリーグ」を目指します。