磯野謙さん/自然電力(株) 社長
平和のために再生可能エネルギー100%を目指す
本誌で掲載されているインタビュー記事の一部をご紹介します
きっかけは2011年の東日本大震災、福島の原発事故が起こり「自分にできることをやらなければ」との思いから、同年6月に仲間たちと再生可能エネルギー100%を目指す自然電力株式会社を創業しました。
エネルギービジネスを通して環境問題を解決したいのはもちろんですが、どうやって世界の平和に貢献できるかを考えています。
というのも、エネルギーが自給できれば他国からエネルギーを輸入する必要がなくなるので、エネルギー源を巡る戦争が起こりにくい。その状態を作るためには、各地域でインフラが自給できたらいいのではないか。つまり「ベーシック・インフラ」※の普及が世界平和の実現につながると信じています。
再生可能エネルギーを広めることは、初期投資がある程度必要ですが、時間の経過とともに電力コストは下がっていきます。「その地域に行くと生活コストが低く、カーボンニュートラルが実現できている」という状態を世界各地に作ることを目指して、事業を進めています。
※ベーシック・インカム(すべての人に対する所得補償として一定の金額を支給する制度)にヒントを得た造語。エネルギーを地産地消し、できるだけ環境負荷やコストをかけないという考え方。
Enjoy the planet. 地球を楽しもう
23歳のときに約40カ国を旅し、紛争や貧困などを目の当たりにしてショックを受けました。特に印象的だったのは、ベネズエラの離島郡の環境汚染問題です。驚くほど豊かな自然に恵まれた場所ですが、話を聞いてみると、石油開発の影響でどんどん自然が壊されてしまっていると。地球の裏側の私たちの「普通」の生活、例えば車に乗るなどの行為が美しい自然を壊すことにつながっていると知り、恥ずかしい気持ちになりました。
大学卒業後は人材系の会社を経て、屋久島でエコツーリズムの会社を企業しました。当時まだそれを仕事にしている人も少なく、自分が何者か明確に伝えることができない辛さがありました。20代は試行錯誤の繰り返しで、国際協力という分野もよく知らず、「社会の問題解決を仕事にする」ところに行き着くまでに苦労しました。
当社では、特に「Enjoy the Planet(地球を楽しもう)」という価値観を大切にしています。この地球の自然を感じ、その中で過ごす時間を大切にしようとする意味もありますが、世界中どこでも、その国や地域にパッションがあるなら、好きな場所で仕事を作ればそれが事業になるという意味もあります。
ベーシック・インフラもカーボンニュートラルも地域単位でスタートし、その積み重ねが広がれば、達成も見えてくると思っています。このビジョンを世界中の地域(ローカル)と共有するイメージを持っています。
採用対象は世界79億人。190カ国展開を目指す
現在、当社従業員の国籍は23カ国。留学生がインターンとして入って、そのまま現地マネージャーとして採用するパターンも多いです。日本語が必須でないインフラ会社は国内では珍しいのかもしれません。
当社の最初の海外拠点はブラジルでした。本来、経営戦略的にはそんな遠いところで事業をやらないのが普通ですが、それよりも、いい人材がいて行きたいと思う場所で事業をやりたいという気持ちがあったからです。これからも世界中190カ国に事業を広げていきたいので、採用対象は世界79億人。人種や国籍は問いません。
地球温暖化はすでに生活に影響を及ぼしていますが、解決できる問題だと信じています。同じ思いを持つ世界中の仲間たちと共に、再生可能エネルギー100%の実現にコミットしていきたい。画一的なグローバル化ではなく、世界中のローカルをつないで新しい価値を生み出すネットワークを創っていきたいです。