小泉進次郎さん/衆議院議員・前環境大臣

カーボンニュートラルは日本の成長につながる/

小泉進次郎さん(元環境大臣)

本誌で掲載されているインタビュー記事の一部をご紹介します

私は、カーボンニュートラルを「気候変動問題」としてだけでは捉えていません。日本の成長産業の育成だと考えています。最大の成長分野であるといっても過言ではありません。


日本は、食糧やエネルギーなどの多くを海外に依存しています。衣類で言えば、98%が輸入です。しかし、その裏に存在する世界の格差や人権などの問題に対して、我々の理解は十分でしょうか。


気候変動問題も同じで、カーボンニュートラルに関して、国民の理解が十分であるとは言えない状況です。しかし、それを待っている時間はありません。政治家として批判は甘んじて受けると覚悟を決め、とにかく前に動かしたいという思いで、カーボンニュートラル実現に取り組んできました。

次世代の声に応えたい


2022年5月、日本版気候若者会議の政策提言を受け取りました。昨年とは異なり、今回、自民党環境・温暖化対策調査会のメンバーと一緒に受け取った理由は2つあります。1つ目は、党内での理解者を増やすため、2つ目は若者に気候変動対策に取り組む議員が増えていることを感じてもらうためです。この政策提言以外にも、多くの人や団体がすでに動き始めています。

例えば、静岡県の浜松にある館中学・高校では、生徒から「学校を再エネ100%にしたい」という要望が出てきて、学校をあげて気候変動対策に取り組んでいます。長野県の白馬高校では、生徒が学校に断熱のリフォームを要求して学校が動きました。エアコンから排出するCO₂を少しでも止めたいという声が上がったのです。


他にも、環境大臣時代に小学校6年生の男の子から、「飲料ペットボトルをやめてマイボトルを持つようになりましたが、マイボトルのまま給水ができる給水器が少ないから増やしてください」と手紙が送られてきました。まずはできることから実行しようと、環境省の管理下である新宿御苑で、マイボトル給水器を6器、設置しました。「世の中を良い方に変えたい」と行動している次世代の思いにはこれからも応えていきたいです。


浜松開誠館中学校・高等学校の再エネの取り組み


白馬高等学校の断熱リフォームの取り組み

カーボンニュートラルは

日本を資源制約から解放する


私がなぜカーボンニュートラル実現の政策に力を入れているのか、それは、日本を資源制約から解放するためです。近年の電力のひっ迫や、食料や資源の高騰は、日本が資源制約をいかに抱えているかを改めて突きつけています。


次世代に豊かで平和な日本を引き継ぐために、資源制約という課題によって日本が誤った道を歩まないようすることが、政治家として取り組まなければならない最大のテーマであると考えています。


日本には、脱炭素のために活かせる高い技術力があります。足りないのは「カーボンニュートラルは世界的に成長する産業分野」という視点です。気候変動問題への取り組みは、コストではなく成長分野です。この意識を持つことができたら、世界は可能性に満ちたものになるのではないでしょうか。

国際協調の大切さと2050年への挑戦


世界全体としては、2050年に向けてますます国際協調が必要になると思います。残念ながら、戦争や対立で国際協調の難易度は上がっています。しかし、世界はこれまでもどんなに大きなハードルがあっても、前に進んできました。


若い世代のみなさんが私くらいの歳になったときに花開くはずだと信じて、これからもカーボンニュートラル実現に取り組んでいきます。これを成長産業と捉え、みなさんにも果敢に挑戦していただきたいと思います。