原貫太さん/フリーランス国際協力師・ユーチューバー

無関心ではなく、ただ知らないだけ

本誌で掲載されているインタビュー記事の一部をご紹介します

特定の組織に所属しない立場で国際協力に関わっています。

ボランティアでアフリカでの支援活動に携わりながら、YouTubeなどでの情報発信を続けています。



今、発信活動を通じて感じているのは、社会問題について「知る機会がなかった」という人の多さです。

「社会問題に無関心な人が多い」という言葉を耳にすることがありますが、実際には無関心なのではなく、単に知らないだけの人が多いのではないでしょうか。



そうした人に正しい情報を発信することが自分の役割だと思っています。内容が専門的で難解すぎないよう、伝え方にはかなり工夫をして発信しています。

国際協力への潜在的関心層をもっと掘り起こしたいからです。

わかりやすさを強調すれば、細部が見えなくなる


YouTubeなどで発信するときには、「世界は必ずしも正しい方向に動くとは限らない」ということを前提にしています。

いくら理念が正しくても、全員がその通りに行動できないこともあるのではないでしょうか。



例えば「環境に配慮していて高価な商品A」と「環境配慮はしていない安価な商品B」が並べられたら、Bを選んでしまう人も多いと思います。いくらAが正しいと叫んだとしても、全員がそれを選ぶとは限らないのです。



「カーボンニュートラル」も同じで、それが正しいとわかっていても、全ての人が賛同してすぐに行動に移すことは簡単ではありません。

電気自動車に対してエコでクリーンなイメージを持っている人は多いでしょう。


でも、電気自動車に必要な電池の製造過程で児童労働や水不足の問題が起こっていることや、リチウムイオン電池の廃棄方法が確立されていないことを知ったら、どう感じるでしょうか。



「この選択肢しかない」と考えることで、自ずと視野が狭くなってしまう可能性があります。

カーボンニュートラルは進めて行く必要がありますが、ひとつのわかりやすいメッセージだけが正しい方向とは限らないという視点は大切です。



なので、発信するときには自分の正義感や倫理観を全面に押し出さないように、わかりやすさを強調して細部が見えなくならないように、気をつけています。

課題解決への第一歩は、仲間を増やすこと


カーボンニュートラルを目指すには、一人一人が多角的視点からバランスよく情報を見極め、考えることが必要だと思います。今後、世の中の動きを正しく捉えていくためには、たくさんの情報の中から、どう本質を見抜くかということが重要です。



そのためにチェックするべきは「そこに議論があるかどうか」です。例えばツイッターであるニュースが話題になっていたら、そのツイートだけでなく、引用ツイートやコメント欄などを見て、別の視点からの議論が行われているかどうかを見ることが必要です。



また、自分が身を置くコミュニティを多様にしておくことも大切です。学校や会社だけでなく、共通の興味を持つ人の集まりなど、所属するコミュニティを増やすことで多様な視点を知ることができます。



国際協力の業界にはたくさん「すごい経験」をしている人がいますが、それを発信している人はそんなに多くありません。僕がやりたいのは、国際協力の現場にいる人と、そこにいない人をつなげること。人と人をつなげ、同じ思いを持つ仲間を増やしていくことが、課題解決への大きな一歩になると思っています。