島暮らし:南大東島

南大東島での調査はダイトウコノハズクの繁殖期に合わせるため毎年2月から7月にかけて行われます。

一日一日のデータの積み重ねが必要になるため、一度島に行ったら約半年の間、島から出ることはありません。

短期調査の場合は「沖縄旅行」ですむことが多いですが、私たちの長期調査の場合は「沖縄暮らし」をします。

毎日の動きが基本的にダイトウコノハズク中心でまわっています。

長期で生活をする以上、地域との関わりも欠かせません。

20年続く調査なので島の人たちとの関係もそれだけの歴史があります。

ここでは私たちの調査期間中の南大東島での暮らしを紹介します。

目次

 食事

調査メンバーが年によって異なるので食事の仕方もその年々によって異なりますが、一日一食はみんなで食べることが多いです。

去年と今年は

・朝ご飯:各自

・昼ご飯:各自

・夜ご飯:みんなで一緒に作る

というふうにしていました。

日中は各自の調査や仕事で時間を合わせにくいものの、夜はみんなで調査に出ることがほとんどなので、夜ご飯を日没前(17時半から18時半くらい)に一緒に食べるのというのが一番都合がいいです。

調理は当番制にする年もあれば、特に当番制にせず毎日なんとなくみんなで手分けをして作る年もあります。

各自で食べる食事は各々が好きなものを好きな時間に食べています。

研究室でみんなで食べる食事。このときのメニューはご飯、野菜炒め、野菜スープ、いただき物のキュウリとトマト、カニステルでした。忙しくて作業をしながらの食事になってしまうことも多々あります。

 メニュー・食材

調査中はどうしても忙しいので各自の食事は粗末になりがちです。

それなのでみんなでつくるご飯では、ちゃんと栄養を取ることを意識しています。

たいてい野菜炒めになることが多いですが、ときどき手の込んだものを作ります。

食材はスーパーや商店で買うこほか、島の方からいただくものも多いです。

野菜は、玉ねぎ、かぼちゃ、じゃがいも、キャベツ、大根、トマト、ニラ、ピーマン、ナス、キュウリ、パパイヤなど。

果物は、バナナ、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、パイナップル、マンゴー、スイカ、メロンなど

魚は、マグロ、サワラ、カツオ、イスズミ、グルクン、ミーバイなど

です。いつも本当にありがとうございます。

パパイヤはその辺の林にたくさん生えているので、それを採ってきて食べることも多いです。

左上:マグロのかまの煮つけ、右上:カツオのたたき、左下:親子丼の具、右下:イラブチャー(ブダイ)の唐揚げ

お店

南大東島には大きくはないですがスーパーがあるので、たいての生活必需品はすぐに手に入ります。

他にも売店がいくつかあり、そういうお店でも食品を含め生活用品を書くことが出来ます。

生鮮品(乳製品、魚介類、肉類、大豆製品、麺類、パン類など)は大東海運の船の到着の日に一斉にお店に並ぶので、その日のお昼ごろのお店は買い物客で混雑します。

悪天候で船の欠航が続く間は、どの店も品薄になります。

また、工具や金物などホームセンターで売っているようなものを取り扱うお店もあるので、調査に必要なもの(針金、ノコギリとか)も島で買うことが出来ます。

船の欠航が続くとお店の棚がすっからかんになります

移動手段

島での移動手段は、徒歩、自転車、原付、車で、メンバーや調査内容によって臨機応変に変えています。

ですが、調査では一周20kmある島の周囲を動き回ることが多いので、たいていは車を使います。

車は島の方から借りています。

乗るのはほとんどAT車ですが、稀にMT車(軽トラなど)を運転する機会があるので、調査メンバーの少なくとも一人はMT車を乗れる免許を持っている方がいいかもしれません。

原付の利用は年によります。

自分の車や自転車を持ってきていた方も稀にいました。

一日の動き

夜間の調査は時期を問わず日没後~深夜1時±1時間くらいで行います。

昼間の調査はダイトウコノハズクの繁殖ステージによって内容が変わるため、時期によって一日の中での動き方が変わります。

それなので以下では月ごとに一日の動きを説明します。

※横の円グラフはあくまで私の場合です。「作業」とされている時間では下で説明する「調査以外の仕事」を主に行っています。

2月(調査開始)

調査の開始時期であり、ダイトウコノハズクの産卵前の時期です。

この時期は毎日、島の中にある巣(約200か所)を日中に見回りすることで、各巣で産卵が始まるかどうかをチェックしていきます。

調査開始の初めの2週間ほどは新しいメンバーが島の道や巣の場所を知らないので、複数人で毎日巣の見回りを行います。

この慣れるまでの期間は巣の見回りに6時間、7時間かかることも多いので、夜間調査後すぐ寝て、翌朝9時頃にはまた巣の見回りに出発するということもざらです。

昼も夜も動いてハードな毎日になります。

昼間:巣の見回り(みんなで)

夜間:捕獲、縄張りチェック、録音などの夜間調査

という動きになります。

2月の一日の典型的な動き

3月(産卵の始まり)

ダイトウコノハズクの産卵が始まる時期です。

昼間の巣の見回りは今日は誰、明日は誰というように分担制で行うようになります。

昼間:巣の見回り(分担制)

夜間:捕獲、縄張りチェック、録音などの夜間調査(みんなで)

というようになります。

慣れれば昼間の巣の見回りは慣れれば3時間ほどで終わるので、夜間調査後すぐに寝て早起きする人もいれば、4時や5時まで起きていてお昼ごろまで寝て、午後から巣の見回りに行くという人もいます。

3月の一日の典型的な動き

4月(産卵ピーク、早い巣の孵化)

この時期は産卵のピークですが、まだ産卵していない巣がたくさんあるので日中の巣の見回りは継続します。

産卵した巣は、夕方に巣を見回ることで産卵日や卵の数、孵化を確認します。

この夕方の巣の見回りも分担制で行うので

昼間:巣の見回り(分担制

夕方:巣の見回り(分担制)

夜間:捕獲、縄張りチェック、録音などの夜間調査(みんなで)

というようになります。

4月の一日の典型的な動き

5月(遅い巣の産卵、孵化ピーク、早い巣の巣立ち)

この時期で遅い巣の産卵も終わりますので、産卵確認のための日中の巣の見回りは5月中旬には終了します。

ですが、5月からは繁殖の早い巣の巣立ちが始まるので、巣立ち状況確認のため日中の巣の見回りを行ないます。

産卵日、卵数、孵化の確認は夕方に巣を見回ることで行います。

また、20日齢で行う雛の計測が5月上旬から始まります。

昼間:巣の見回り(分担制)、雛の計測(みんなで)

夕方:巣の見回り(分担制)

夜間:捕獲、縄張りチェック、録音などの夜間調査(みんなで)

というような動きになります。

5月の一日の典型的な動き

6月(遅い巣の孵化、巣立ちピーク)

巣立ち状況確認のため日中の巣の見回りを行ないます。

この時期で遅い巣の孵化も終わりますので、夕方見回りはほとんどなくなります

20日齢で行う雛の計測がとても忙しい時期で、毎日午後はヒナの計測を行います。

昼間:巣の見回り(分担制)、雛の計測(みんなで)

夜間:捕獲、縄張りチェック、録音などの夜間調査(みんなで)

というような動きになります。

6月の一日の典型的な動き

7月(遅い巣の巣立ち)

巣立ち状況確認のため日中の巣の見回りを行ないますが、7月にはほぼずべての巣が巣立っているので年によっては7月の日中の巣の見回りはありません。

夜間の調査がメインになります

夜間:捕獲、縄張りチェック、録音などの夜間調査(みんなで)

というような動きになります。

7月の一日の典型的な動き

調査以外の仕事

島にいる間は野外調査の他にもたくさんやることがあります。

上の「一日の動き」で書いた中の調査をしているとき以外の「作業」にやることは主に、

・論文を読む、書く

・データを整理する、解析する

・研究費の申請書を書く

・各種手続きの事務作業をする

・野外調査の準備をする

で、正直いくらでもやることがあります。

どこまでやるかは個々人によって違いますが、どれもちゃんとやろうと思うとけっこう寝てる暇がありません。

ただ、調査地にいる間はこうした室内作業と野

外調査の両方が互いに気分転換になるので、忙しいものの私はけっこう効率がいいと感じています。

大学にいる間はずっと室内作業で気持ち悪くなってきます。

「研究室」でパソコンに向かいデータを整理している

睡眠

私たちのことをあまりよく知らない人は「夜は調査だから昼間は寝てるの?」と聞きます。

私たちのことをある程度知っている人は「いつ寝てるの?」と聞きます。

フクロウの調査というと夜の仕事というイメージですが、実際には上に書いたように昼間も結構調査上の仕事があるうえ、論文を読んだり書いたり、データを整理したりとやることがたくさんあります。

それなので、そうした姿を見ている人は「いつ寝てるの?」と尋ねるわけです。

実際のところ寝る時間は、夜間調査終了後から翌日の日中の調査の間で各自好きなように設けています。

朝に仕事をしたいタイプの人は、夜間調査終了後すぐに寝て翌朝から活動しています。

夜に仕事をしたいタイプの人は、夜間調査終了後もしばらく作業をして昼頃まで寝ています。

自然観察

この野外調査にくる人たちはたいてい自然や生き物が好きな人たちなので日常的に生き物観察をしています。

鳥見はもちろんのこと、面白い虫や変わった植物があれば捕まえたり写真を撮ったりしています。

南大東島は他の陸地から遠く離れた海洋島だけあって、いる生き物の種数は少ないです。

ですが、固有の珍しい生き物もいろいろいるうえ、おそらく名前もついてない新種や珍しい種が沢山いることと思います。

絶海の孤島過ぎて普段は海を見ても何もいないのですが、ごくまれに変な鳥が来ます。クジラがみられることもあります。ウミガメはほぼ確実にいます。

島の方との交流

お酒の席に呼ばれることも少なくありません。

そうした場は島のことを聞いたり、調査のことを話したりできるいい場です。

島の方のお家で食事をいただく機会や、畑仕事を手伝う機会もあります。

グラウンドゴルフ大会や南北試合、運動会といった島のスポーツ大会に参加することもあります。

島には青年会という島の若い人たちの集まりがあり、かつて南大東島で調査をしていた先輩にはその青年会の副会長を務めた方もいらっしゃいました。

こうしたことを話すと、フィールドワーカー(野外調査をする人)はコミュニケーション能力が高いなどと言われることも多いです。

確かにそうした能力がある方がよいのは間違いないですが、苦手な人でも大丈夫です。

自分のペースでよいので少しずつ素直に交流をしていけば楽しめるようになります。

去年は台風後の畑に落ちた枝や倒木の片づけ作業を手伝いました

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