私たち鉄道研究部では、今回の展示を通して、私鉄有料特急をテーマにさまざまな角度から調査や研究を行ってきた。そして結果として、JRを含めた全国の有料特急列車を、その役割に応じて以下の3つに分類できるのではないかという仮説に至った。
長距離の旅行客に速く快適な移動手段を提供するための有料特急
例:京成スカイライナー・新幹線など
観光客に楽しい空間を提供するための有料特急
例:西武Laview・小田急ロマンスカー・JR踊り子号など
通勤客に確実に空席を提供するための有料特急
例:平日のS-TRAIN・京王ライナー・東急Qseatなど
以上の3種類の列車は、スピードや車内設備において求められる規格がそれぞれ異なっている。鉄道会社が古くからその点を理解し、需要に応じて車両の改良をしてきたことで、今日のように多様で奥深い有料特急の世界が生まれたといえるだろう。あるいは苦戦を強いられている特急列車があれば、その役割が以上のうちのいずれであるかを再確認し、それに応じた車両やサービスを導入することが状況を変える一手になるかもしれない。
現在、多くの私鉄有料特急がコロナ禍によって大きな影響を受けている。国際的な往来が途絶えたことで空港へのアクセス特急は壊滅的な打撃を受け、観光客向けの特急列車もいまだ不安定な状況にいる。一方で、密状態を避けて快適に通勤できるライナー列車は、今後も徐々に需要が増加していく可能性を秘めている。
我々は本誌のはじめに、私鉄有料特急は鉄道会社の顔であると述べた。ここで、ロマンスカーを看板として進められた戦後の観光開発、グローバル化の波に乗るように誕生したスカイアクセス線、そして通勤スタイルの変化に伴うライナー列車の新設など、有料特急が歩んできた歴史を今一度振り返ってみたい。私鉄有料特急は過去から現在に至るまで、時代の変化を映す鏡として、あるいは新たな時代を作る先駆けとして機能してきたといえるのではないだろうか。
新しい生活様式が浸透したことで、コロナ収束後の鉄道輸送の姿、そして私鉄有料特急の未来がどのように変化していくのかは未だ分からない。しかし同時に、時代の変化に合わせた新しい特急列車の誕生が大いに楽しみでもある。これからも時代の先頭を走り続けるであろう私鉄有料特急に心からの期待を示し、結びとさせていただく。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
2021年10月 中高鉄道研究部
・JR東日本ホームページ
(www.jreast.co.jp:2021年8月19日閲覧)
・西武鉄道ホームページ
(www.seiburailway.jp:2021年10月16日閲覧)
・京王グループホームページ
(www.keio.co.jp:2021年10月9日閲覧)
・京成電鉄ホームページ
(www.keisei.co.jp:2021年9月14日閲覧)
・小田急電鉄ホームページ
(www.odakyu.jp:2021年10月16日閲覧)
・東急電鉄ホームページ
(www.tokyu.co.jp/railway:2021年10月14日閲覧)
・京王チケットレスサービス
(www.keio-ticketless.jp:2021年10月16日閲覧)
・Qseatチケットレスサービス
(q-seat.tokyu.co.jp:2021年10月16日閲覧)
・地理院地図
(maps.gsi.go.jp:2021年10月16日閲覧)
・国土交通省ホームページ
(www.mlit.go.jp:2021年10月5日閲覧)
・成田空港ホームページ
(www.naa.jp:2021年9月9日閲覧)
・ロマンスカーミュージアム
(神奈川県海老名市めぐみ野1-35:2021年10月9日訪問)
2021.10.29~2021.10.31
筑波大学附属駒場中学校・高等学校 第70回文化祭「EVERGREEN」
中高鉄道研究部展示『TKライナー』公式ホームページ
執筆:部員一同
著作・制作:中高鉄道研究部
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