ローラン・ピック フランス大使講演

文学部グローバル化推進委員会主催
東洋大学 トップリーダー連携教育支援プログラム第3回講演会
講師 :ローラン・ピック 駐日フランス大使
日時:2019年10月1日(火) 13:00~14:30
場所:東洋大学白山キャンパス6号館B1階 6B13教室
テーマ: 今日の世界における外交官の使命


10月1日、東洋大学トップリーダー連携教育支援プログラムの第3回講演会として、ローラン・ピック駐日フランス大使による講演会(文学部グローバル化推進委員会主催)が開催されました。
講演のテーマは、「今日の世界における外交官の使命」です。大使はまず、今日急速に進むグローバル化の波が、世界中のさまざまな人々の間の交易や交流と繁栄をもたらす一方、国家、地域間の対立や紛争は依然として解決せず、経済分野における激しい競争や、格差の深刻化、世界規模での環境破壊など、深刻な問題が生み出されており、そうした問題の解決には、世界レベルの相互協力が不可欠だということを強調されました。そして、外交官の使命とは、その相互理解と協力の推進のために働くことであるが、そのためには、政治、外交、国際交流などさまざまな分野における専門的な知識、相手の国への深い理解、そして互いに異なる者同士の理解と交流を推進する力が求められるのだとされました。大使は、赴任した国を理解することの一環として、学生など若者との対話を常々大切にされているそうです。

そののち、イランをめぐる危機、中国とアメリカの対立、北朝鮮の核問題、EUからのイギリスの離脱などの政治・外交の諸問題、気候変動や海洋プラスチック汚染などに現れた深刻な環境破壊、国・地域・階層・経済・性別などさまざまな分野における不平等、グローバル企業による富の独占や税金問題などといった具体的な問題における外交の取り組みの例を挙げながら、外交官の役割とは、「妥協」の道を見出すことであり、「妥協」は一見ネガティブなイメージでとらえられるが、それこそが、互いに背景や利害の異なる国々の協力を生み出し、世界を持続可能にする唯一の方法なのだとされました。

さらに大使は、グローバル化という現象が、国家の枠を超えたさまざまなレベルでの広がりをつくり出していることを指摘し、世界を持続可能なものにするための取り組みは、国家のみならず、地域、企業、NGOなどの団体、また、個人のレベルにおいても可能であり、私たち一人ひとりの人間にもできることがあるのだ、ということを強調されました。
講演ののちには、学生から、環境問題におけるアメリカの一国主義と世界の対処、グローバル化と固有の文化など、興味深い質問がいくつも上がり、大使は、その一つひとつに丁寧かつ精力的に答えてくださいました。

本講演には本学学生、留学生、教職員を合わせ、300名近くの来場者がありましたが、大使はその一人ひとりに、現代の世界の重要な課題を認識し世界に関わっていくことの大切さを伝えるメッセージを贈ってくださったと思います。

ピック大使には、分刻みのスケジュールの中で本学にお見えくださり、このような貴重な時間を共有させていただいたことに対し、あらためて深くお礼を申し上げます。また、近年本学が推進するグローバル化において、フランス大使館には、大学間協定、研修、さまざまな講演、シンポジウム、留学、語学学習啓発の催しなど多岐にわたるご協力をいただいていますが、そのことに対しても、この場を借りてお礼を申し上げます。

講師紹介
ローラン・ピック駐日フランス大使
1964年8月2日、パリ14区生まれ

学歴
パリ市アンリ4世高等学校卒業
フランス国立東洋言語文化学院(INALCO)ロシア語学修士号取得
パリ政治学院卒業

経歴
1993-95年:フランス外務省大陸ヨーロッパ局で、ロシア、独立国家共同体、コーカサスの外交政策を担当
1995-97年:在バーレーン・フランス大使館1等書記官
1997-2001年:フランス外務省ヨーロッパ協力局で、ヨーロッパ連合(EU)とアフリカ、カリブ海、太平洋の各地域諸国との関係およびEU開発政策を担当
2001-02年:ピエール・モスコヴィシ・ヨーロッパ問題担当大臣官房技術参事官
2002-06年:在ブリュッセル(ベルギー)・ヨーロッパ連合(EU)フランス政府代表部1等書記官
2006-08年:在ニューヨーク(アメリカ)・国際連合フランス政府代表部2等参事官
2008-09年:ヨーロッパ問題事務総局(SGAE)次長
2009-12年:フランス外務・ヨーロッパ問題省事務次官付秘書官
2012-14年:ジャン=マルク・エロー首相官房外交顧問
2014-16年:駐オランダ・フランス大使
2016-17年:ジャン=マルク・エロー外務・国際開発大臣官房長
2017年6月より:駐日フランス大使

受章歴
国家功労勲章シュバリエ