古田 直肇ゼミ

テーマ「英語学をコミュニケーションに活かす―高度な学習言語能力の獲得を目指して」

担当:古田 直肇(ふるた なおとし)准教授

 

ゼミの概要:

このゼミナールは、英語学の探求を通して高度な言語能力を養うことを目的としています。具体的に求められることとしては、グループでプレゼンテーションを行うことと卒論の執筆の二本立てです。

コミュニケーション力が大事だというのは、あまりにもよく聞くフレーズで陳腐な決まり文句に聞こえてしまいますが、やはり真実です。コミュニケーション力とは、いわゆる「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能のことですが、本当に皆さんは、日本語であれ英語であれ、文章を正確に読めているでしょうか? 他者の話に耳を傾けて対話できているでしょうか? 本や論文を読んで得た情報をもとに自らも調査し考えた結果をわかりやすく話して、あるいは誤解の起こらない簡潔明瞭な文章を書いて他者に伝えられるでしょうか?

人文系の大学教育に意義があるとすれば、こうした高度な言語能力の涵養でしょう。こうした能力は、学習言語能力と呼ばれ、日常的な会話を行う力とは区別されます。大学で養うべき「コミュニケーション力」は、日常会話能力ではなく、学習言語能力であり、大学4年次のゼミナールは、その学習言語能力を完成に近いレベルにまで持っていくための場です。

これを踏まえて、私のゼミでは、個々人が卒論を書くことに加えて、春学期も秋学期もグループでプレゼンテーションを行ってもらいます。春学期も秋学期も英語で書かれた英語学の本を教科書(たとえば2020年度春学期は、Abby Kaplan, Women Talk More than Men…And Other Myths about Language Explained)として指定し、そのうちの1章を各グループに割り当てます。そして、まずは担当の章を正確に読む。その上で、自分たちでも調査を行い、「わかりやすくて面白くて為になる」プレゼンテーションをするために、各グループで工夫を凝らしてもらいます。Academic Englishで書かれた英文を正確に読みこなせるか。リーディングを通して得た情報をグループ内で共有して、自分たちで調査を行うことができるか。そうして作り上げた素案をわかりやすい構成のプレゼンに落とし込めるか。こうした作業を通して日本語と英語二つの言語を高度なレベルで使いこなせる力を育てていくことができるはずです。

個々人で行う卒論執筆については、英語学に関するものであれば、何でも自由に選べます。自分のやりたいことをやってください。人文系の学問は、「面白い」という知的快感と「もっと知りたい」という知的探求心こそが原衝動であるべきだからです。これまでのゼミ生も、マーベル映画やミュージカルに出てくる黒人英語の特徴を調べてみたり、ディズニー映画の「女性言葉」を研究してみたり、上手なスピーチの共通点を調べてみたり、アーサー王伝説に出てくる聖杯の起源を調べてみたり、機械翻訳と人間の翻訳を比べてみたり、早期英語教育の是非について調査したりと、それぞれ自分の好きなことについて卒論を書いています。クラス内では、それぞれ自分の調査経過をシェアしてクラスメイト同士で批評を行いながら、各自が論文の内容を深めていき、卒業論文の完成を目指します。

このように卒業論文の準備となる発表や執筆、およびグループでのプレゼンテーションを通して、読む力、考える力、自らの考えを文章化し、論理立てて構築する力、そしてそれを発表する力を養い、「学士(Bachelor of Arts)」の名にふさわしい高度な言語能力を身につけてほしいと考えています。

 

卒業論文テーマ例:

・A Study of the Standards of English as an International Language: The Intelligibility and the Acceptability of African American Vernacular English

・A Sociolinguistic Study of Language in Musicals: The Use of African American Vernacular English in Hairspray

・A Study of the Relationship between Gender and Language: The Evolution of Disney Princesses

・A Study of Rhetorical Patterns in Speech: The Features that Distinguish Great Speakers

・A Study of Arthurian Legend: The Origin of the Holy Grail

・A Study of Translation: The Limitations of Machine Translation and the Potential of Human Translation

・A Study of Teaching English for Early Childhood: What Can We Do for our Children?

・A Study of English Education Policies: What Kinds of English Skills do Japanese People Need?

・A Study of English Education in Japan: Future Direction of English Education at Japanese Elementary School

・A Study of Standard English and Non-standard Englishes: Our Bias against Non-standard Englishes

・A Study of Sound Symbolism: The Sounds Associated with Masculinity and Femininity

・A Study of Stereotypical Speech: Men's Language in Japanese and English Movies

 

授業風景: