余田 真也ゼミ

テーマ「現代アメリカ文学研究」

担当教員:余田 真也(よでん しんや)教授

 

授業の概要

文学の研究は対象が極めて多様で、方法も多彩で、したがって自由度が高く、やり甲斐もありますが、それだけに進め方が不適切だと論文が書けないという事態に陥りかねません。もちろん卒論を完成させるのは受講生一人一人なので、完成までの全工程において各自で主体的に取り組んでいただきますが、論文の作成にあたっては、習得すべき技術や、守るべき約束事や、整えるべき体裁があります。受講生は授業の課題への取り組みを通してそれらを学習します。

この授業は論文執筆のプロセスに沿って展開します。文学の研究論文を教材にして、論文の形式や要件や評価軸などについて学び、資料検索・収集の方法やワープロの効果的な使用方法なども含めた論文執筆の実践的な知識を蓄えます。またレポートを意識して各自の研究を進めながら、プレゼン(研究発表)を通じて各自の研究内容を説明し、質問や助言に応答する力を鍛え、他のゼミ生の研究内容を理解し、質問や助言をする力を養います。そうした鍛錬は、文学の読解力ばかりでなく、汎用的な思考力を身につける機会にもなるはずです。

論文の構想段階からしばらくはモヤモヤした状態が続きますが、授業の課題と並行して粘り強く取り組むうちに、少しずつ論文の輪郭が整い、なすべき作業も明確になっていきます。作品を原文で精読しながら研究ノートを作ったり、根拠にもとづいて論理的な文章を組み立てたりしていくうちに、執筆自体が楽しくなっていきます。論文執筆というのは創造的な営みでもあるのです。

 

題材と問い

このゼミに所属する学生は、主に19世紀末以降のアメリカ文学作品について卒論を書きます。研究対象とする作品は、受講生自身の関心に沿って選べばよいです。(実質的には3年次の秋口までに自分で読んだことがある作品のなかから選ぶことになります。)

ただし、作品(題材)が決まっただけでは論文は書けません。論文とは自分で立てた「問い」に対する答えという形で書いていくものです。だから論文を書くためには「問い」を設定しなければなりません。どんなに素朴でもよいので、作品についてなるべく多様な問いを発して問題意識を明確にすることが大切です。たとえば、主人公の成長、作品内の人間関係、物語の構造、表現の様式、作家の伝記、歴史的な背景、人種/民族・ジェンダー・セクシュアリティなどの観点から作品について考えを巡らせつつ問いを洗練させていきます。問いの立て方は、論文の出来を大きく左右します。良い問いを立てれば、研究の目的が具体的になり、目的を達成するための方法が明確になります。各人にとってもっとも適切な問いが立てられるように、日頃から意識して感覚を磨いておくとよいでしょう。

 

卒業論文のタイトルの例

・A Study of The Adventures of Huckleberry Finn by Mark Twain: Racial Discrimination

・A Study of The Adventures of Tom Sawyer by Mark Twain: Civilization and Indians

・A Study of Breakfast at Tiffany’s by Truman Capote: Holly’s Place

・A Study of The Bluest Eye by Toni Morrison: Writing Style

・A Study of The Catcher in the Rye by J. D. Salinger: The Pursuit of Innocence

・A Study of The Color Purple by Alice Walker: Women’s Fight

・A Study of A Farewell to Arms by Ernest Hemingway: Love and War

・A Study of The Great American Novel by Philip Roth: American History as Seen through the Characters

・A Study of The Great Gatsby by F. Scott Fitzgerald: Gatsby and American Dream

・A Study of The Great Gatsby by F. Scott Fitzgerald: Nick as the Narrator

・A Study of Light in August by William Faulkner: A Consideration of Identity

・A Study of Lolita by Vladimir Nabokov

・A Study of The New York Trilogy by Paul Auster

・A Study of Nine Stories by J. D. Salinger

・A Study of The Old Man and the Sea by Ernest Hemingway

・A Study of One Flew Over the Cuckoo’s Nest by Ken Kesey

・A Study of Other Voices, Other Rooms by Truman Capote: The Formation of Identity

・A Study of Other Voices, Other Rooms by Truman Capote: Sexuality as Reality

・A Study of Shoeless Joe by W. P. Kinsella: Illusion and Reality

・A Study of The Sound and the Fury by William Faulkner: Memory, Time, and Consciousness