実践事例7

災害の記録映像を見て、

生徒が自分ごととして考える防災道徳

渡邉はるか Watanabe Haruka

静岡県 小山町立北郷中学校 教諭

公助

〜大規模な災害に行政はどう対応できるか〜

教材名:「あなたならどうしますか? ~もしものとき、ペットは~」(オリジナル教材 「学習指導過程の例」(PDF)参照)

ねらい:災害時を想定し、身近な存在のペットを避難所に連れていくかどうかについてさまざまな立場や状況から考え、仲間と話し合うことを通して、自他の生命の尊さや公の場における他者への配慮について考えを深めようとする道徳的心情を養う。

内容項目:C(12)社会参画、公共の精神/ Ⅾ(19)生命の尊さ

葛藤場面について話し合い、「自分ごととして考える」

 本校は平成28、29年度に静岡県の学校防災教育推進校の指定を受けてから、現在も継続して防災教育に力を入れています。その一環である「防災道徳」とは、災害時や復興時などにおける心理的葛藤場面を教材化し、道徳的諸価値の視点からどのような行動を選択すべきかについて生徒が考え、議論する授業です。防災道徳において重要視するのは、葛藤場面について話し合い、その過程を通して「自分ごととして考えること」です。教材や仲間との対話を通して困難な想定に向き合い、考えた経験は、非常時においても自分自身の判断の根拠となると考えます。 

 本時では、揺さぶりの問いを適宜行うことで、課題を自分ごととして捉え、教材や仲間と対話しながら考えを深めていくことができるようにしました。また、揺さぶりの問いだけでなく、より深く考えるための資料として、映像や写真も活用しています。1回目の問いでは避難所にペットを「連れていく」と判断する生徒が多いと考えたため、避難所の様子が分かる映像を活用し、連れていった後のことまで考えて判断できるようにしました。

 揺さぶりの問いや資料によって、さまざまな立場の人々の考えに気づき、視野を広げて考えられた一方で、「連れていく」という意見に偏りすぎてしまったことから、避難生活の過酷さや周りへの配慮について掘り下げる手立てを充実させるという点が課題だと感じました。

ポイント

①1回目の判断の後、どちらの選択も揺さぶられるような問いや資料を用意し、話し合いの様子を見て適宜提示していく。資料の提示は生徒のタブレット端末で行い、話し合いの際は班で1台を使って一つの資料を見る形にすることで、自然と対話が生まれるようにする。

②一つの答えを出すことをゴールにするのではなく、自分とは異なる考えがあることを知り、その中で納得解を考えることで、自分も他者も大切に思う心が育まれる。