実践事例3

2つの映像資料から、おいしいチョコレートの

隠れた真実に迫る授業

谷口綾美 Taniguchi Ayami

岡山県 岡山市立岡山後楽館中学校 教諭

谷川俊太郎「そのこ」

チョコレートがつないだひとつの物語

ねらい:国際社会の問題解決について考え、世界の幸福に貢献しようとする道徳的態度を養う。

内容項目:C(18)国際理解、国際貢献

今まで考えたことがなかった世界の問題に目を向けるきっかけに

 自分の好きな情報を好きなだけ見ることができる時代において、自分のことだけを考えるのではなく、国際的な視野をもち、世界の情勢に広く目を向ける学習を展開しました。  

 映像を2種類使用することで、それぞれ異なる効果が期待できます。「そのこ」においては、世界ではまだまだ解決できていない問題がたくさんあることや、その解決の難しさに気づかせるとともに、問題意識をもたせることができます。「チョコレートがつないだひとつの物語」では、自分たちのアクションで未来を幸福にできるかもしれないと気づかせることができます。「そのこ」だけだと、生徒は、開発途上国の人は「かわいそう」「不幸だ」という印象を強くもち、未来への不安が大きくなるだけで終わってしまいがちです。しかし「チョコレートがつないだひとつの物語」では、開発途上国の笑顔あふれる子供たちの姿や、夢を追い、志を高くもつ大人たちの姿を見ることができます。このような映像から、自分たちもこの笑顔を守ることに貢献したいという道徳的態度や、世界はつながっているんだと感じられる道徳的心情を育むことがねらいです。

 本教材の内容は、生徒の日常生活と直接的に結び付くものではないため、身近なこととして感じられない生徒がいることも予想されます。また、何か答えがあるわけではなく、簡単に解決できるものでもありません。しかし、この教材での学習によって、今まで考えたことがなかった世界の問題に目を向ける生徒がいるかもしれません。実際、授業後には、「知らなかった。」「もっと詳しく調べたい。」「フェアトレードの商品を購入してみたい。」という感想が見られました。そのため、生徒の考えを広げるきっかけになる実践であると考えています。