実践事例1

教材を生徒にとって身近なものにする

ー映像資料をゲストティーチャー的に扱うー

林 雄一 Hayashi Yuuichi

愛知県 一宮市立浅井中学校 教諭

【ヤングケアラー】認知症の父を介護する小学6年生

【専門家が回答】認知症はどのように進行していく?

教材名:「一冊のノート」(『私たちの道徳 中学校』文部科学省)

ねらい:祖母の思いが書かれたノートを見ることで変化した主人公の心を考えることを通して、自分も家族から愛情をもって育てられていることに気づき、父母や祖父母への敬愛の念を深めようとする道徳的心情を養う。

内容項目:C(14)家族愛、家庭生活の充実

家族相互の支えから生まれる笑顔や幸せについて、深く考える

 「家族愛、家庭生活の充実」を学習する教材を扱う際には、多様化している家族構成や家庭環境への配慮が必要です。また、家族という生徒にとって身近な題材が、生徒の家族構成や家庭環境によっては実感の伴わないものとなってしまうことがあります。

 生徒と教材との間を取り持つ役割として、ゲストティーチャーはとても大きな効果を期待できます。さらに、実際に経験した人にしか出すことのできない説得力で生徒の心や感性に訴えかけ、より深い考えに導くことができます。しかし、ゲストティーチャーを呼ぶには少なくない労力が必要ですよね。そこで、ゲストティーチャー的に映像資料を活用し、生徒の考えを深める学習を紹介します。

 本実践では、認知症の祖母と「僕」とのやりとりから、「僕」の行動について考えることで、家族について多面的・多角的に考えていきます。「家族を尊敬し、愛情をもって接するべきだ。」と言うのは簡単ですが、認知症の祖母を罵ってしまう「僕」の心情に共感したり、我慢し続けた場合の「僕」の心の健康について考えたりすることで、本時の課題の難しさに直面します。

 そこでゲストティーチャー(映像資料)の登場です。実際に介護をしている少年のインタビューを聞くことで、家族相互の支えから生まれる笑顔や幸せについて深く考えることができます。さらに日本が抱える社会問題の「ヤングケアラー」について考えるきっかけにすることもできます。