児童労働とは、義務教育を妨げる労働や、法律で禁止されている18歳未満の危険で有害な労働のことです。具体的な例に、劣悪な環境での長時間労働、借金の肩代わりとしての強制労働、人身売買による性産業、戦争にかりだされる子ども兵士などがあり、子どもらしい成長を妨げます。児童労働が起こる背景には、貧困、教育機会の欠如、子どもを働かせる社会・文化的な習慣など複雑な要因がからみ合っています。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、児童労働が増えているのではないかという懸念があったなか、世界の児童労働者数は前回より840万人増えて、1億6000万人となりました。つまり、5~17歳の子どもの10人に1人が児童労働を余儀なくされているということになります。
さらに、この報告書は新型コロナウイルス感染症が広がる前の2020年初めに行われた調査をもとにしています。貧困が増加し、適切な対策がとられない場合、2022年の終わりまでに児童労働者が890万人増え、さらに緊縮政策によって社会的保護が十分に行わなければ、児童労働者は4,620万人も増え、2億620万人にまで達する可能性があると予測されています。
<危険有害労働>
5~17歳の子どものうち危険有害労働に従事している子どもの割合は、2016年の4.6%からわずかに増えて4.7%ですが、数は650万人も増えました。児童労働者に占める危険有害労働に従事している子どもの割合も、2016年の47.8%から2020年には49.4%と高くなっています。
ガーナは地理的、気候的にカカオの栽培に適しており、カカオは国として最大の輸出農産物です。ガーナは地理的、気候的にカカオの栽培に適しており、カカオは国として最大の輸出農産物です。カカオがチョコレートになる過程としては、
①カカオ農家(2、3年かかって実らせたカカオ豆の実を割る、運ぶ、など10ほどの工程)
②買い付け人
③ココア・ボード(ガーナ政府の財務省が管轄する組織で、ガーナにおけるカカオ流通のコントロールを行う中枢組織)が認可した買い付け会社約30社
④ガーナ産カカオ豆の国営販売企業
⑤商社または加工工場
⑥チョコレート菓子会社
⑦消費者
このうち児童労働が行われているカカオ農園では、家族経営の小さな農園が多いです。そして大量のカカオをすべて手作業で行うため、多くの時間と労働力を必要とします。
簡単にまとめると・・・
世界第2位のカカオ生産国であるガーナでは、危険な労働を余儀なくされる18歳未満の児童労働者は、77万人に上っています(2020年、シカゴ大学)。児童労働の中でも最悪の場合は、子どもだけが家族と引き離されて労働者として連れてこられるケースです。これは人身取引にあたり、国際条約やガーナの国内法でも固く禁じられていますが、実際にはなくならないのが現状です。
また、発展した都市部と農村部では貧富の差が激しく、
◯ 明日の食料がないレベルの極度の貧困状態にある人は5人に1人
◯ 十分な暮らしができないある程度の貧困状態にある人は全体の30%以上
という結果になっています。
さらに、ガーナは学歴社会であり、6年間の小学校と3年間の中学校は義務教育となっていますが、実際には
◯ 小学校の純就学率は72%
◯ 小学校に通っていない学齢児童の数は90万人以上
と推定されており、高校は数校となっています。
ガーナの教育の最大の問題は教育の質と格差にあります。6年間の小学校教育を終えても、満足に読み書きのできない子どもが半数以上という報告もあり、教員の欠勤や家庭での児童労働がその原因となっています。
<国際フェアトレード認証ラベルとは>
フェアトレードとは直訳すると「公平・公正な貿易」。つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。
国際フェアトレード認証ラベルは、その原料が生産されてから、輸出入、加工、製造工程を経て「フェアトレード認証製品」として完成品となるまでの各工程で、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)が定めた国際フェアトレード基準が守られている事を証明しています。
国際フェアトレード認証ラベル
<国際フェアトレード基準とは>
国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)によって設定されるフェアトレード全般に関する基準です。これらの基準は、基準委員会(Standards Committee)と全てのステークホルダー(フェアトレードに参加する生産者や貿易業者など)によって、定期的に見直されています。
3つの国際フェアトレード基準
<世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース)>
◯スマイル・ガーナ・プロジェクト
ACE様では、学校環境や教育の質が改善され、カカオ農家が経済的に自立することで、子どもが学校に通うことがあたりまえになるよう、村の住民、特に子どもを抱える家庭や村のリーダー、地域の行政関係者と連携して以下の取り組みを行なっておられます。
1. 住民による見回り活動と家庭訪問
2. 子ども、親、住民に対する啓発活動
3. 学校運営委員会やPTAによる学校改善活動
4. 子ども権利クラブの活動
5. 農民の収入向上トレーニング
6. 住民相互扶助の組織化
詳しくはこちら↓
https://acejapan.org/choco/smile-ghana
◯他にも児童労働解決に向けたたくさんの活動をしてらっしゃるので、ぜひチェックしてみてください。
◯募金・寄付をする
実際に現地での活動ができなくても、募金や服などの寄付をすることで、子ども達の助けになります。自分だけでは募金額や寄付するものが準備できなくても、学校で募金箱を置く、学園祭などで服の寄付を募るboxを設置するなどができます。
◯ボランティアやイベントに活動に参加する
児童労働の支援団体では様々なボランティア活動やイベントが行われています。私が今回インタビューさせていただいたACE様も、様々な活動をされています。長期休みや時間ができたときにぜひ積極的に参加してみてください。
◯バイ(buy)コットをする
国際フェアトレード認証ラベルがついている商品など、児童労働撤廃への取り組みをしている商品を消費者たくさん買うことで、そのような活動をする企業が増えます。詳しくはインタビュー内容(児童労働)の質問④をご覧ください。
児童労働ネットワーク(CL-Net)「児童労働とは」 https://cl-net.org/child-labour/ 2022/1/5閲覧
世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース) 「児童労働の世界推計発表〜2000年以来初めて児童労働が増加〜https://acejapan.org/info/2021/06/31149 2022/1/5閲覧
世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース) 「ガーナ・カカオ生産地の児童労働」https://acejapan.org/choco/childlabour 2022/1/5閲覧
白木朋子(2015).『子どもたちにしあわせを運ぶチョコレート。世界から児童労働をなくす方法』合同出版
高根務、山田肖子(2011).『ガーナを知るための47章』明石書店
FAIRTRADE JAPAN「フェアトレードミニ講座」 https://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/course.php 2022/1/7閲覧
FAIRTRADE JAPAN 「国際フェアトレード基準」https://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/intl_standard.php 2022/1/7閲覧
世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース) 「カカオ生産地での支援活動 スマイル・ガーナ プロジェクト」https://acejapan.org/choco/smile-ghana 2022/1/7閲覧
水尾順一(2012).「グローバル CSR の視点による BOP ビジネスと共益の創造: ガーナにおけるカカオ・サスティナビリティの要諦と展開」駿河台経済論集,21(2),133-171 https://core.ac.uk/download/pdf/51450737.pdf 2022/1/7閲覧