私はこの度Save the Childrenの伊藤愛様に日本の子どもの貧困についてオンラインインタビューを行いました。このインタビューでお聞きした質問はSOIS生対象に行ったアンケートで募集した質問を7つ抜粋したものです。尚、伊藤様がお答えくださった内容は実際にこの問題の支援を行なっている1人の意見としてご覧ください。
質問① 子どもたちが今困っていることは何ですか?
子どもたちが今困っていることは、貧困によりさまざまな選択肢が奪われることだと私は思っています。例えば、高度な医療を受ければ命が救われる病気になったとしてもその医療を受けるお金がなければ、それは諦めなければいけなくなります。また、教育においても大学に進学できなかったり、習い事を受けることができなかったりと貧困が原因でさまざまな選択肢が奪われてしまうのです。
質問② 日本の子どもが貧困に陥る大きな原因は何だと思いますか?
何かが原因で貧困が起こるというよりも、貧困が原因でさまざまな問題が起きてしまうことがの方が課題だと私は思っています。まず、子どもの権利条約というすべての子どもたちがもっている「権利」について定めた条約があり、Save the Childrenはこの条約を世界中で実現するという目的で活動しているのですが、その中でも大きい権利が4つ定義されています。「生きる」「育つ」「守られる」「参加する」。これらの権利が全て貧困が原因で奪われることが問題だと考えております。
子どもの権利条約について詳しく知りたい人はぜひSave the Children様がまとめてくださっているこちらをご覧ください。
質問③ 世界の先進国と比べて日本の政府の対策は遅れていると感じますか?
はい。これは実際に数字に表れています。日本の子どもの相対的貧困率は13.5%(2019年)で、これは7人に1人の割合です。そしてこの数値はG7の中でアメリカに次ぐ2位であり、先進国でも最悪の水準に達します。このことから日本の貧困対策はまだあまり成果は出ていないと感じています。
対策が遅れてしまっている要因は色々ありますが、1つは選挙が関係していると思います。選挙で選ばれた人が政策を作るのですが、若年層の投票率が低く、且つ、人口の比率で見ても高齢者数が多いため、選挙に受かろうとする政治家は高齢者向けの政策を出す方が当選率が高くなると考え、どうしても子ども・若者の問題解決が手薄になってしまいざるを得ないのが現在の状況です。
※G7:アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス、日本の7カ国のこと
質問④ コロナによって貧困支援の状況は変わりましたか?
コロナによって現状が大きく変わったため、支援も大きく変わりました。貧困は貧困層と富裕層のという2つの層がくっきりと分かれていないため、グレーゾーンというその間に属する人々を表す言葉があります。そしてコロナの影響により、元々このグレーゾーンにいた人々が職を失ってしまい、貧困層に落ちてしまうといったケースがいくつも出てきました。通常は一度職を失ったとしても再就職できますが、コロナの場合はそれが非常に難しい状況にあります。このようにコロナの影響でグレーゾーンだった人が貧困層に落ちてしまう、且つ、いつにいなったらこのパンデミックが終息するかという先行きが見えない。そういった意味で支援対象が広がってしまい、支援内容も大きく変化しました。例として、Save the Childrenでは今まで行ってきた食べ物の支援は感染拡大防止のため宅配で行ったり、研修もオンラインで行ったりと遠隔による支援を増やしていきました。
質問⑤ 子どもの貧困とおとなの貧困の違いは何ですか?
子どもの貧困とおとなの貧困の違いはその貧困がどれだけの影響を与えるかだと考えています。子どもの権利条約において「生きる」権利や「参加する」権利はおとなにもありますが、「育つ」権利と「守られる」権利は子どもだからこそあるべき特徴な権利です。貧困によって勉強したり、友達と遊んだり、誰かに守られたりする機会が奪われてしまうというのは私は問題だと思っていて、それはおとな以上に影響が大きいと考えています。
質問⑥ 子どもの貧困の現状を改善するためにはどのような協力や施設、支援が必要なのでしょうか?
子どもの貧困はとても大きな問題ですので個人や1つの団体だけでは解決できません。できるだけ国や市町村、地域や企業、また私が属しているSave the ChildrenのようなNGO・NPOの組織全てが協力し、取り組むことが必要だと思います。これはSDGsの考え方と同じで、複合的な視点を持ちつつ、政府も企業も民間の団体も力合わせてパートナーシップを持ち、課題解決を進めていかなければいけないと考えています。
質問⑦ 私たちが貧しい子ども達のためにできることは何だと思いますか?
まず、現状を知ってもらうこと・伝えることが私たちにできることです。また、日本全国の人が少しでも子どもの貧困は非常に問題であると言うことを認識し、選挙に行くというのも私たちができることです。たとえば、子どもの貧困に対する政策を出している政党を調べ、より取り組みをしている政党に票を入れるというのをいう積み重ねていくと、政治家は当選するためにそこを意識せざるを得なくなります。特に高校生18歳からは選挙権が与えられるので積極的に選挙に行き、投票することが問題解決につながります。加えて、募金や寄付、投票も私は子どもの貧困解決のための意思表示の1つだと思っています。ただなんとなく募金をすればいいというわけではなく、きちんと調べて自分が共感できたり、今これが必要だと思える団体や企業、寄付の使い道をオープンしてくれるところを選ぶということも大切です。
プロフィール
伊藤愛 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン