私はこの度、世界の子どもを児童労働から守るNPO法人 ACE(エース)の青井彩乃様へ、ZOOMを通してオンラインインタビューを行いました。
SOIS生対象のアンケートによって集めたものの中から6つの質問を抜粋し、ご回答いただきました。
以下は、青井様に口頭でご回答いただいた内容を私なりにまとめたものです。
質問① チョコレート製品を買う際、その製品が児童労働によって作られたカカオを使っているのか、消費者が確認する方法はありますか?
確認できれば良いのですが、難しいのが現状です。そもそもどこの誰が作ったかをはっきりすることが難しいのです。カカオ豆からチョコレート製品になるまでには、さまざまな農園からカカオ豆を集める業者、それを輸出する業者、そして輸入する商社等を経て、私たちの手に届く製品を作る、企業の手に渡ります。多くの人が関わって作られる過程で児童労働が関係しているのかについては、企業自身もわかっていないのが現状であり、それをしっかりと把握するということが今現在の課題です。
国際フェアトレード認証ラベルなど、認証ラベルのついている商品は(ラベルの種類にもよりますが)生産者の暮らしを支えることを目指しているので、児童労働の可能性は低いと考えて良いと思います。そういった商品を積極的に選ぶということが、児童労働を減らすことにつながっていくと考えています。
「認証」にもさまざまな種類があるので、ぜひ調べてみてください。
さらに、アメリカの労働省の方推奨の、人権リスクがある製品について調べることができるアプリがあるので、ぜひチェックして見てください。
スマートフォン用アプリ Sweat & Toil
質問② チョコレートの需要が下がらない限り、今と同じだけの労働力が必要になると思います。具体的な解決策は何だと思いますか?金銭的な支援ではなく、持続可能な根本的な解決策はありますか?
実は、需要があるからその分多くの労働力が必要ということは一概に言えません。たくさん買ってもらえると儲かるため、需要がある方がいいと考えられがちですが、そもそも需要の有無に問題があるのではなく、いくら働いてもカカオ農家さんが儲からないということに問題があります。問題解決に向けては、カカオ農家への金銭的な支援ではなく、適正な価格で取引できるようにすることが一番重要であり、きちんとカカオ農家が稼げるようになるという環境づくりが必要です。
ガーナのカカオ農園は、家族経営の小さな農園が多く、もともとが貧しいために親も教育を受けたことがない家族がほとんどです。つまりは、カカオ生産の知識や技術も持っていないために、カカオの収穫量が十分得られず、家族全員の生活を支えるだけの収入も得られていないのです。ACEでは、カカオ農家に対して農業トレーニングをおこなうことで、カカオの収穫量を増やし、家庭の収入を向上させる活動も行っています。
質問③ なぜ児童労働問題が明るみに出ているにも関わらず、完璧には取り締まられないのですか?ガーナ国内の法律でどうにかできないのですか?
ガーナの法律で児童労働は禁止されています。だからといって完全に取り締まることができるわけでもありません。その原因として、貧しい地域から来た移民があげられます。ガーナの田舎にそういった移民がくると、住民票などの管理が完璧にできず、自治体もどんな人が何人その地域に住んでいるか把握できていないという事態が起こっています。このような人々の激しい移動があるガーナでは、義務教育を受けていない子どもがいてもそれを完璧に把握することは難しいのです。
さらに、貧しい家庭では、貧しいから学校に行けなくて当たり前、学校は裕福な人が行くところだという考えがまだあり、学校に行かずに働く子どもがいるのは普通だ、と思っている人々も多くいるのが現状です。また、児童労働はいけないと分かっていても、子どもの労働力に頼らざるをえない家族は、「貧しいから子どもにも働いてもらわないと生活していけない」と考えているため、「分かっていてもやめられない」という現状もあります。
質問④ 児童労働によって作られたチョコレートが売られていた場合、その商品を買わないというのは正しい選択ですか?あまり意味のない選択でしょうか?
ACEでは、そういった商品を買わない「ボイコット」を促進することより、児童労働解決への取り組みをして作られた商品を積極的に買う「バイ(Buy)コット」を呼びかけています。そのような商品を積極的に消費者が買うことで、問題解決に取り組む企業も増えます。ボイコットをしてしまうと、その売れなくなった商品にも生産者がいて、彼らは困ってしまいます。そのような方法ではなく、皆で良い方向に持っていく、「バイコット」をしていくことができればいいなと考えています。
質問⑤ 今まで、ACEさんが実際に現地に行った支援活動の中で、一番印象に残っている活動はなんですか?また、ACEさんの活動の中で一番やりがいを感じた時はどんな時ですか?
・人身取引から救出
https://acejapan.org/info/2010/06/2453
ACEの現地スタッフが、人身売買をされてしまった子どもを救出した、ということがありました。本当は家族のもとに帰りたいけれど、助けてくれる人いないためにどうしようもなかった子どもを実際に救うことができたことは、成果を感じられたことの一つでした。
・学校再開、人々に伝わっていた!
https://acejapan.org/info/2021/04/30895
コロナウイルスの影響で学校が休校だった間、「学校に行かないなら」と労働に戻ってしまった子どももいたようで、「学校に行く」という日常が無くなってしまっていた子どもたちが学校に戻ってきてくれるのか心配していました。
しかし、学校が久しぶりに再開すると、村の人々が協力して学校を掃除するなど、ほとんどの子どもたちが学校に帰ってきました。村のおとなたちの間で学校に通うことは大切だという認識が根付いていて、人々の気持ち、心が変わっていたことがわかったときは、すごく嬉しかったです。
・チェンジの扉
https://acejapan.org/childlabour/books/change
これは、児童労働から抜け出した子ども達、その周りのおとなたちがどんなふうに変わっていったかをまとめた本なので、ぜひ読んでみてください。
やりがいを感じたこととしては、このようにACEの活動がきっかけで問題について知り、その後こんな活動をしました、行動がこのように変わりました、などの報告を受けるとすごく嬉しく思いました。
質問⑥ コロナ禍の影響として、児童労働問題の現状に何か打撃はありましたか?コロナがなければ行うことができていた支援などはありますか?
児童労働問題への打撃としては、学校の休校や世界的に貧困が増えたことで、子どもを教育ではなく労働に追いやる力が高まってしまっています。コロナ以降の児童労働の統計はまだ出ていませんが、増えているだろうと予想します。
行えなくなった支援としては、人々が集まれなくなり、学校での活動ができなくなっため、学校を拠点としていた多くの活動ができなくなりました。また、ロックダウンの影響で、スタッフが家庭訪問をすることもできなくなりました。
さらに、日本でもコロナの影響による貧困で、ACEの活動資金である寄付金が減ってしまいました。これも支援活動が難しくなった要因の一つです。
ガーナではコロナによって約9ヶ月休校していたため、教育の遅れがあります。政府はオンライン授業を配信していた、としていますが、田舎ではインターネット環境が整っておらず、オンライン授業もできない子ども達も実際には多くいました。しかし自動的に学年は上がってしまい、どのように学習の遅れを取り戻すのかも課題です。
<追加質問>コロナ禍以降、実際にACE様のスタッフが現地に行かれたことはありますか?
コロナ禍以降、ガーナに関してはオンラインで活動をしています。一方で、「児童労働フリーゾーン」(児童労働のない地域)を拡大するガーナ政府の国家計画を、JICA(国際協力機構)から受託し行っており、その活動ではスタッフは3回ほど渡航しています。しかし村の方にはまだ行くことができていません。