2015年の会 趣旨説明

Baker (1965, 1974)は、人為的撹乱地に生育する植物を雑草と定義し、雑草に一般的な12の種特性を提示しました。様々な場所で著しく増加する雑草の種特性は“侵略的外来植物”にも通ずると考えられ、外来植物研究においても“侵略種に共通の種特性が存在するのか?”を明らかにしようとする試みが数多く行なわれてきました。そのような研究では、例えば生産種子数や自殖率といった形質において、分布を拡大している種としていない種の間に違いがあるのかを比較します。外来植物を例に述べましたが、刈り取り圧の高い環境に生育する種や、水田輪作で優占する種についても同様に、様々な形質を種間で比較することはよくあるでしょう。その際に問題になるのが系統的制約というものです。

生物は無限の選択肢の中から自由に形質を進化させてきたわけではありません。祖先がどのような形質を持っていたかによって、変化できる幅に制約があります。このため、近縁種はそうでない種よりも形質が類似していることが多くなります。従って、種間比較を行なう際には、系統的制約に依存した違いと、我々が着目する違い(例えば分布拡大種とそうでない種の違い)を区別して考える必要があります。

今回の勉強会では、なぜ系統関係を考慮した種間比較を行なう必要があるのか、どのように行なえば良いのかについて、統計学・進化学・系統分類学の分野で幅広くご活躍の三中信宏さんにお話していただきます。次に、外来植物の侵略性に関わる種特性について、膨大なデータベースに基づいて解析された宮脇成生さんに、系統関係をどう考慮したのかも交えながらお話していただきます。