杉原保史 プロフィール

現職 京都大学学生総合支援センター教授
教育学博士(京都大学)
臨床心理士

心理療法やカウンセリング等の心理的な援助を、実践経験に基づきつつ、研究しています。私は、心理療法やカウンセリング等の心理的な援助は、科学によって導かれ、検証されるべきものではあるものの、その実践自体は決して科学ではなく、技芸(パフォーミング・アート)の一種であると考えています。また、心理療法やカウンセリングにはさまざまな学派がありますが、単一の学派に忠誠を誓ってそれを極めるよりも、多様な学派に開かれた態度で接し、多様な視点や技術を身につけて、相談にこられた方の状況に合わせてそれらを柔軟に運用することに援助上の利点があると考えています。

また私は基本的に、社会や環境と精神内界とは常に瞬間、瞬間に相互作用しながら共進化、共発展するという見方(持続的構築モデル)に立っています。この見方においては、外界と内界とは、もはや鶏か卵かというようなものではなく、いずれがもはやはっきりと峻別できないほどに入り混じりながら展開する1つのプロセスなのです。この見方からすると、現在の心理療法の世界においては、社会や環境の問題が個人の心の問題に及ぼしている影響力の大きさがかなり軽視されているように見えます。つまり現在の心理療法の世界は、過度に個人主義的だと考えられます。

さらにまた、これとも関連して、現在の心理援助の世界は、過度に専門家中心主義的でもあります。心理援助の専門家は、専門的な知識や技術を一般市民に広めていくことをしばしば危険だと考えています。そのような考え方には一理ありますが、その危険は専門家の防衛的な姿勢によって過大視されていると思います。専門家は、心理カウンセリングの専門的な知識や技術を一般の人たちに分かりやすく伝えることにもっと労力を割いてよいと私は思っています。そのことによって、社会に影響を与えていくことが重要だと思います。私にとって一般市民向けの研修会や執筆活動は、面接室の外に広がる社会に向けた重要な心理臨床活動です。


略歴
1961年 神戸市生まれ。
京都大学教育学部、京都大学大学院教育学研究科にて臨床心理学を学ぶ。
大谷大学文学部専任講師、京都大学保健管理センター講師、京都大学カウンセリングセンター講師、教授を経て現職。

主な著書
『心理カウンセラーと考えるハラスメントの予防と相談』 北大路書房 2017年
『キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門』 北大路書房 2016年
『プロカウンセラーの共感の技術』 創元社 2015年
『技芸(アート)としてのカウンセリング入門』 創元社 2012年
『新世紀うつ病治療・支援論』(共著)金剛出版 2011年
『12人のカウンセラーが語る12の物語』(共編著)ミネルヴァ書房 2011年
『統合的アプローチによる心理援助』 金剛出版 2009年
『大学生がカウンセリングを求めるとき』(共編著)ミネルヴァ書房 2000年
『臨床心理学入門』(共編) 培風館 1998年

主な訳書
『ポール・ワクテルの心理療法講義』(ポール・ワクテル著)金剛出版 2016年
『心理療法家の言葉の技術[第2版]』(ポール・ワクテル著)金剛出版 2014年
『説得と治療:心理療法の共通要因』(ジェローム・フランク&ジュリア・フランク著)金剛出版 2007年
『心理療法家の言葉の技術』(ポール・ワクテル著)金剛出版 2004年
『心理療法の統合を求めて』(ポール・ワクテル著)金剛出版 2002年

主な学術論文
「ハラスメント相談における心理援助の専門的視点の意義について:大学におけるハラスメント相談窓口の経験から」(共著)2010 心理臨床学研究、28巻3号、313-323頁
「多元的に機能する援助的介入について:統合的アプローチの模索の中から」2006 心理臨床学研究、24巻1号、110-115頁
「過剰適応的な青年におけるアイデンティティ発達過程への理解と援助について」2001 心理臨床学研究、19巻3号、266〜277頁
「自我同一性地位における早期完了型について」1988 心理臨床学研究、5巻2号、33〜42頁
「テストによる評価が内発的動機づけに及ぼす影響:テスト不安との関係において」1985 教育心理学研究、33巻3号、232〜236頁


より詳細な研究業績は京都大学教育研究活動DBを参照して下さい