『プロカウンセラーの賢く怒る技術』(2025)創元社
怒りっぽくキレやすいという悩み、怒るべき時に怒ることができないという悩み、そういう人たちへの周囲の対応などについて、カウンセラーの立場から考えたこと。一見、怒りの問題とは関係なさそうに見えても潜在的には怒りの問題が重要な要素となっているような問題(自傷、依存症、不安障害など)についても説明した。怒りを単に取り除くべき害毒と見るのではなく、適応的な意味を持った感情として捉える見方を強調している。また怒りの問題を、その当人の問題としてのみ見るのではなく、当人と周囲の人との関係の中で起きる問題として捉える見方に重点を置いた。
『心理支援における社会正義アプローチ:不公正の維持装置とならないために』(2024)誠信書房
和田香織・杉原保史・井出智博・蔵岡智子編
心の苦悩を文化的・社会的・経済的な文脈で捉え、個人だけでなく社会の側にも変化を求める心理支援の考え方。第Ⅰ部はイントロダクション、第Ⅱ部は多様な学派からのアプローチ、第Ⅲ部はトピックス、第Ⅳ部はトレーニングという、4部構成。「はじめに」、第6章「心理力動的心理療法における社会正義アプローチ」、第9章「新自由主義と現代人の心」を担当。
『プロカウンセラーの面接の技術』(2023)創元社
プロカウンセラーの面接のコツを50のトピックで示した。カウンセリングの研修会では学派ごとの固有の技法の習得が中心になっているが、実際のカウンセリングの効果は、それに加えて明確な形のないコミュニケーションのスキルによって大きく左右される。そうしたコミュニケーションのスキルを構成するちょっとしたコツを記述したもの。カウンセラーだけでなく、様々な相談窓口の相談員や、インタビュアー、面接調査員など、面接の効果をあげたいと願う人たちを対象としている。
『テキストカウンセリング入門』(2023)誠信書房
杉原保史・原田陸・長村明子編
メールやウェブフォームなど、まとまった文字のやり取りによる心理相談について概説した書籍。理論篇と事例編の二部構成となっており、事例編では6つの事例が示されている。
『学生相談カウンセラーと考えるキャンパスの危機管理』(2022)遠見書房
全国学生相談研究会議編 杉原保史編集代表
学生相談カウンセラーが、教職員や学生に向けて、学生生活上のさまざまな危機についてレクチャーする際の手引き書。突然の事故、災害、性被害、ハラスメントなどに見舞われた学生をどのように理解し、どう対応すればよいのか。これは学生相談カウンセラーだけではなく、すべての教職員にとって必要な知識です。 本書は、現場で多くの困難に向き合い、対応してきた経験豊富な学生相談カウンセラーたちが、学生生活のさまざまなリスクについて解説し、トラブルを未然に防ぐ方策や、緊急支援などの実践ですぐに活かせる対応策をきめ細かに説明しています。 学内研修に使える13本のダウンロード可能なスライド・データ付き。
『SNSカウンセリング・トレーニングブック』(2022)誠信書房
杉原保史 ・宮田智基・畑中千紘・樋口隆弘・鈴木優佳 編著
LINE相談の相談員のスキルの向上のためのワークブック。第I部ではスキル向上のトレーニングのあり方について解説しました。第II部の事例検討では、SNSの画面のようにレイアウトされたログを読みながら、効果的な応答について考えます。第III部の応答技法エクササイズでは、さまざまな難しい場面において、どのように応答するかを考えます。
『心理療法統合ハンドブック』(2021)誠信書房
日本心理療法統合学会監修 杉原保史・福島哲夫 編
心理療法統合についての日本での最初の総合的な概説書です。心理療法の統合について知るべきことが一通り収録されています。
『SNSカウンセリング・ケースブック』(2020)誠信書房
杉原保史監修 宮田智基・畑中千紘・樋口隆弘 編著
LINE相談の現場で出会う様々な事例を紹介しながら、LINE相談の可能性や難しさをお伝えしています。
心理カウンセリングとしてのSNSカウンセリング、対面の心理カウンセリングへの移行、外部リソースとの連携、繰り返し訪れる相談者への継続的対応、見守りが必要な相談者への「声かけ」、ありがちな失敗、といったテーマを扱っています。応答技法エクササイズもついています。
『プロカウンセラーの薬だけにたよらずうつを乗り越える方法』(2019)創元社
一般向けのうつの養生法。うつ状態で専門的な支援を求めても、向精神薬を処方されるだけになっていることもしばしばあります。自分自身のうつ体験も踏まえながら、薬だけにたよらずうつを乗り越えていく方法について述べています。うつに苦しむ方の参考になればと思って書きました。
『SNSカウンセリング・ハンドブック』(2019)誠信書房 宮田智基との共編著
LINEを活用した心理学的支援が急速に社会に広がりつつある中で、一定の知識・理解を備えた相談員の養成が急務となっています。本書はSNS相談員が備えておくべき知識と理解をまとめて提示したテキストです。
『心理学的支援法』(2019)北大路書房 福島哲夫・東斉彰との共編
公認心理師養成カリキュラムの中にある学部科目『心理学的支援法』に対応したテキストです。多様な学派をオープンな姿勢で学ぶことを推奨するスタンスに立って、心理学的支援の諸原理をできるだけ学派に縛られないようにしながら記述しています。
『SNSカウンセリング入門』(2018)北大路書房 宮田智基との共著
近年、若者の電話離れが急速に進行し、電話相談に電話してくる若者はかなり少なくなっています。現代の若者は電話で話すよりも、LINEやTwitterのようなSNSを使って文字でトークすることを好みます。しかし対面以外の悩みの相談は、あいかわらず電話が主流という状態が続いており、長らくミスマッチ状態にありました。
そんな中、2017年の9月、長野県が中高生に向けて行ったLINE相談「ひとりで悩まないで@長野」は、行政による初めてのLINE相談でした。そこには電話相談にはとうていありえないような、桁違いに多くの相談が寄せられました。本書はその際の相談経験をもとに、LINE相談の考え方や、応答技術などを論じたものです。
『マンガで読み解く プロカウンセラーの共感の技術』(2017)創元社
『プロカウンセラーの共感の技術』が、やまさき拓味さんの手によってマンガ化されました。6つのストーリーを読み進む中で、『プロカウンセラーの共感の技術』のエッセンスがイメージ的に伝わるようになっています。
共感の技術は、ただ頭で理解するものではなく、心で感じ、体験的に身につけていくものです。そう考えると、マンガを通して伝えることの意味は大きいと思います。マンガには表情や姿勢などのボディ・ランゲージもありますし、背景やコマ割りなどの視覚効果もあります。言葉以外の表現によって伝わるものがたくさんあります。共感を磨くには、感情に良質の注意を向けて味わうように体験することが大切です。ストーリーマンガを読むことから効果的に伝わるものがあるでしょう。
『心理カウンセラーと考えるハラスメントの予防と相談』(2017)北大路書房
ハラスメントの問題についての書籍は、弁護士などの法律家や、フェミニズムの立場に立つ社会学者によるものが目立ちます。実際のハラスメント相談窓口では、しばしば心理カウンセラーが相談を受けているにもかかわらず、心理カウンセラーからの発言は少ないように思います。ハラスメントの問題には心理学的な視点に立った議論が有用であり、現状においてもっと必要とされていると思います。
こうした現状があるのも、心理カウンセリングの主流の考え方においては、今なお精神内界と外的環境とを二分する見方が強く、「心理的な」援助は、そのうちの精神内界の方に関わる援助だという暗黙の前提があるからだと思います。そうした見方においては、ハラスメント問題のような外的環境要因が主要な役割を果たしている相談は、心理的な援助ではないと見なされてしまうのです。
本書は、そうした問題意識を前提として、心理的な視点からハラスメントの予防と相談について論じたものです。
『キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門』(2016)北大路書房
キャリアコンサルタントは、平成28年(2016年)に国家資格になりました。国は今後キャリアコンサルタントの養成にさらに力を入れていくようです。キャリアコンサルタントの業務のかなりの部分はキャリアカウンセリングです。厚生労働省が示したその能力要件にもカウンセリングの知識やスキルが挙げられています。私はキャリアコンサルタントの養成講座においてカウンセリングの部分を担当するようになったことで、キャリアコンサルタントの方々と交流するようになりました。そうした経験の中で、キャリアコンサルタントの方々にもっとカウンセリングの知識や技術を伝えていきたいと思うようになりました。本書は、キャリアコンサルタントの方々に向けて、カウンセリングの理論やスキルを分かりやすく解説したものです。
『プロカウンセラーの共感の技術』(2015)創元社
共感をテーマに、カウンセリングの実践経験に基づきながら、一般の方向けに書いた一般書です。共感とは何かをわかりやすく説くだけではなく、愚痴の聴き方からネガティヴな感情との関わり方、対立する相手への共感、言葉を使わない共感の伝え方など、カウンセラーとして蓄積してきた経験知を紹介しています。
『 アート(技芸)としてのカウンセリング入門』(2012)創元社
カウンセリングの実践を、技芸(とりわけパフォーミング・アート)の一種と見なす立場から書かれたカウンセリングの入門書です。カウンセリングの概説、クライエントの心理における不安の働きの理解などの理論的な内容とともに、聴く技術、話す技術、身体的な感受と表現の技術、などの具体的な技術について、平易な言葉で解説したものです。なお本書は、学術専門誌である心理臨床学研究の第30巻 第6号の書評において取り上げられ、「こういう本を待ち望んでいた人は多かったのではないだろうか」と高い評価をいただきました。
『12人のカウンセラーが語る12の物語』(2011)ミネルヴァ書房
髙石恭子先生と2人で企画編集し、12人の仲間と一緒に作った本です。個人的には単著以上に思い入れのある本です。12人の実力派のカウンセラーの方々にそれぞれ1つの事例物語を創作していただき、寄稿してもらいました。つまり本書は、フィクションとしての事例物語を12話収めた短編小説集なのです。私自身は第2話「殺意の自覚」と、最後の解説的な補章「事例小説-事例報告でも事例研究でもなく」を執筆しました。12人は私の他に、高石恭子さん、中川純子さん、山本大介さん、高橋寛子さん、田中健夫さん、伊藤一美さん、古宮昇さん、田名場美雪さん、杉江征さん、道又紀子さん、安住伸子さんです。単純に小説として面白く読めるものを目指して書きました。科学的な手続きを踏んでいるかどうか以前に、小説として描いたときに面白いということが、よい事例のプロセスの条件の一つなのではないかと私は考えています。本書もまた、心理療法やカウンセリングはサイエンスよりもアートに近いものではないかという考えに基づく一つの試みなのです。なお、本書は学生相談研究究の第31巻 第3号の書評において取り上げられ、「事例研究という方法をしでもなおかつ描ききれないものがあるという感覚を、現場のカウンセラーはどこかで感じているのではないだろうか。小説というスタイルを、この問題に対する冒険的で大胆な試みとして評価したいと思う」と評価いただききました。
『統合的アプローチによる心理援助』(2009)金剛出版
統合的アプローチに関してこれまでに執筆してきた数編の論文を収録しながら、書き下ろしの原稿を加えて1冊にまとめた著作です。心理療法の実践は科学とよりもレトリックと近縁性があるというフランクの考えを紹介し、心理療法の実践をパフォーミング・アートとして見る見方に依拠した論考を展開しました。ポール・ワクテルの循環的心理力動アプローチをはじめ、様々な統合的アプローチについて紹介しています。また、こうした見方に立った自らの実践経験について、いくつかの話題を取り上げて考察しています。なお、本書は家族療法研究の第26巻 第3号の書評において取り上げられ「全体的に優しく丁寧に読者に語りかけているようであり,非常に読みやすい。そして,謙虚でありながらも,著者の統合的アプローチに対する自信と強い信念も感じられる」と評価いただいています。
統合的心理療法と関係精神分析の接点(2019)金剛出版
杉原保史(監訳) 浅田裕子・今井たよか(訳)
Paul Wachtel著、Cyclical Psychodynamics and the Contexual Self: The Inner World, the Intimate World, and the World of Culture and Society.2014. の全訳。ワクテルの心理療法や心理的現象についての考えを、幅広く多様なテーマにわたって解説した論文集です。第一部は心理療法に関する論考からなっており、第二部はより大きな社会的な問題についての論考からなっています。
ポールワクテルの心理療法講義:心理療法において実際は何が起こっているのか? (2016)金剛出版
杉原保史(監訳) 杉原保史・小林眞理子(訳)
Paul Wachtel著、Inside the session: What really happens in psychotherapy. American Psychological Association.2011. の全訳。本書には、ワクテルの理論的立場を解説した2つの章に続いて、3つのセッションの完全な逐語記録と、その詳細な解説が収められています。うまくいったところも、うまくいかなかったところも、すべてがありのままに文字化され、セラピスト自身がそのとき感じていたことや考えていたことの開示も含めて、詳細に理論的に解説されています。まさに心理療法の実際そのものを示した本です。
心理療法家の言葉の技術 [第2版]:治療的コミュニケーションをひらく(2014) 金剛出版
Paul Wachtel著、Therapeutic communication. Second Edition : Knowing what to say when. Guilford Press. 2011.の全訳。本書の初版は、1993年に原著が刊行され、2004年に拙訳によって翻訳が刊行されました。今回の第2版では、近年の心理療法の理論的発展について論じた2つの章が加えられるとともに、全体的にアップデートが施されています。有能な治療者が、難しい局面において、どのように巧みにクライエントの防衛を回避して治療的なコミュニケーションを切り拓いていくか、その言葉の工夫を具体的に述べながら、その背後にある治療原理を詳細に考察した名著です。
説得と治療:心理療法の共通要因(2007)金剛出版
Jerome Frank & Julia Frank著、Persuasion and Healing: A Comparative Study of Psychotherapy. The Johns Hopkins University Press, 1991.の全訳。本書は、心理療法を、広く説得活動ないしは社会的影響活動と見て、宗教的魔術的治療、聖地への巡礼、宗教的回心、カルトによる洗脳ないしはマインド・コントロール、思想改造、プラシーボ投与、などと同列に論じながら、それらに共通する治療要因を探究したものであり、心理療法統合運動における共通要因アプローチを主導してきた古典的名著です。
私は本書から大きな影響を受けました。本書の射程は非常に広く、心理療法をより大きな枠で捉える視点を与えてくれます。
心理療法の統合を求めて:精神分析・行動療法・家族療法(2002)金剛出版
Paul Wachtel著 Psychoanalysis, Behavior Therapy and the Relational World 1997 APA の全訳。本書は第1部と第2部から成っています。第1部は1977年に出版された Psychoanalysis and Behavior Therapy(Basic Books)がそのまま収録されたもので、第2部はその後の20年間の間の発展を加筆したものです。第1部では精神分析と行動療法の要素を共に含んだ統合的なアプローチが探究されています。第2部では、精神分析のその後の関係論的な発展や家族療法など、関連する問題がさらに幅広く検討されています。著者は、心理療法の統合運動の中心人物の一人で、本書は著者の代表的な著作です。
なお本書は心理臨床学研究の第21巻 第1号の書評において取り上げられ、下山晴彦先生から「本書は、心理療法の統合を論じた書物であるだけでなく、臨床心理学が全体としてどのような構造として発展しつつあるのかを解説した書物となっている。そこには、心理療法は統合に向けて大きな流れを形成しうるものだという力強い意志のようなものが感じられる。それは、心理療法、そして臨床心理学の発展への希望を読者にもたらすものである。このような意志や希望が感じられるところが、本書の最大の魅力となっている」「できる限り多くの臨床心理士に読んでほしい書物である。大部の書物であるが、訳は読みやすく、辞書的に拾い読みもできる。このような書物を個人訳で成し遂げた訳者の労を多としたい」と評されました。他にも、こころの科学109-5、精神療法 第28巻4号、臨床精神医学 第31巻6号などの書評で取り上げられました。