2. 研究内容

食物連鎖や栄養カスケードを介して広く生態系に影響を与える頂点捕食者(apex predator)や中位捕食者(mesopredator)の保全や管理を通して、生態系保全に貢献できるような研究を目指してします。資源利用、捕食者ギルド内の生物間相互作用、捕食者による直接的・間接的影響といった動物生態学の研究に加えて、捕食者の保全・復元・管理手法などの応用的なテーマにも取り組んでいます。

また、野生生物の保護管理を巡る人口減少問題にもいち早く着目してきました。人口減少が進み、土地の放棄、集落の空洞化、狩猟者をはじめとする野生動物管理の担い手減少が進んだ将来を見据えた野生動物管理の新たな枠組みについて考えています。ここでも、「頂点捕食者の生態的影響」の視点が色々な意味で役立っています。

主な研究課題の詳細は以下よりご覧ください。

中欧・東欧地域における中大型食肉目の生態研究と保全管理

豊かな自然が残る中・東欧地域においてイヌ科動物(オオカミ、キンイロジャッカル、キツネ)を主な対象生態と保全に関する研究に取り組んでいます(以下のテーマ別リンクからご覧ください)。

オオカミの生態日本へのオオカミ再導入

オオカミ再導入は私の研究者人生の原点であり、ライフワークでもあります。近年、欧米においてオオカミ再導入(自然分散による個体群回復も含む)が実現し、日本においてもオオカミ復活が度々議論されます。現在は、復活したオオカミ個体群による栄養カスケードや波及効果のレビューとオオカミ復活に向けた社会科学研究を行っています

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人口減少時代における日本版再野生化の検討

全国的な人口減少と社会の縮小を迎える将来の日本に実装可能な新たな野生生物保護管理や生物多様性保全として、特に国際的な潮流となっている「再野生化」に着目しています。また、人口減少が野生動物の行動・生態に与える影響の評価とそれを踏まえた新たな(代替的)管理策に関する研究にも取り組んでいます。

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野生生物の生態学・保全科学におけるメタ解析アプローチ

生態学や保全科学においてフィールドワークは重要ですが、個人で取り組むには限界があります。自身の取得データに加えて、既存の文献データを活用したシステマティックレビューとメタ解析のアプローチによって、広域を対象としたパターン解析に取り組んでいます。特に、食肉目の栄養ニッチや種間関係、希少生物の生活史特性の解明に取り組んでいます。

関連論文:Tsunoda & Saito (2020) J Vertbr Biol; Hisano et al. (2022) Ecol Res; Tsunoda (2023) Ecol Res

ブラックバス類等の外来肉食魚による生態的影響と管理

湖沼の頂点捕食者である外来肉食魚ブラックバス類が在来生物群集(特に魚類群集)に与える影響を解明し、個体群管理に貢献できるような研究を目指しています。ブラックバス類の適正管理に向けた社会システムにも興味があります。また、ブラックバス類とコイ科唯一の在来肉食魚ハスとの種間相互作用やハスの国内外来個体群の生態についても研究しています。

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カメラトラップ法を用いた野生動物の行動生態研究

野生動物調査において不可欠なツールとなったカメラトラップ(自動撮影装置)。動物の行動や生態をより詳しく理解するとともに、得られる膨大なデータを余すところなく活用するために研究手法や解析方法など技術面も含め検討しています。これまで行ってきた種間関係(時間・空間ニッチ)や行動解析に加え、野外実験への応用、新たな解析手法の検討、オープンデータの活用に関する共同研究に取り組んでいます。

関連業績:Watabe et al. (2022)

<競争的研究経費の獲得実績>

科研費・研究推進費等の公的機関による研究助成


その他民間団体による研究費助成など