神山研究室

[メンバー]


講師神山翼
PD:岩切友希 (学振PD; 2024年5月からソウル大学校のJ. S. Kugさんのところに滞在)
D1鳥山菜海子(休学; 民間企業にて就業中)
M2三田優里
M2吉田史織
M1武藤真璃
B4牧野希良理
・過去のPD:高須賀大輔学振PD; 2020年度; 現在は東北大学助教)
・2019年度の発足以来,現在までに学士取得16人,修士取得10人

[Why] 百年後の科学を作る


神山は「短距離走」とか「時間制限付き試験」とかが苦手な人間です。

センター試験は3回受けました。

・前期後期合わせて東大入試は5回受けました( 笑)。

米国大学院入試は1年半かけて準備しました(そうは言っても皆さんを留年させないようにはします笑)。


平均的な情報科学に比べて,気象学は非常に「遅い」学問です。

・僕が大学院で所属していた研究室のDennis Hartmann教授には,いつも“Tsubasa, it’s a marathon, not a sprint.”(これは短距離走ではなくてマラソンだよ)と言われていました。

・僕はよく「Tsubasaは目的志向(goal-oriented)すぎる」「論文を書くためではなく,理解するために研究しなさい」と諌められていました。

・何を隠そう,気象学の研究は「我々は百年後の人類のために何を残せるか?」が最大のテーマです。ちなみに,僕が初めて書いた論文で最初に引用した文献はNewton(1687)です。笑

「現象を理解して,論文にまとめる」ことが私たちの仕事です。収穫ではなく,種蒔きでもなく,畑を耕すことです。

「すぐにでも役に立ちそうな」プロダクトなどは,提案するのが難しいです。もちろん,そういうことをやりたい人も大歓迎ですが,その場合は本研究室で3年間勉強して基礎知識をつけて,気象庁や気象関係の研究所,あるいは気象関係の民間会社に就職してから挑戦してください。


「スピーディーさ」とは直交した(逆ではない)能力を求めます。

メリット→焦らずじっくり自分のやりたいことを突き詰められます。

デメリット→学内表彰,奨学金などは取りにくいかもしれません。

裏を返せば「他人の短期的評価にとらわれない」「自分の幸せは自分が決める」タイプの人じゃないと,幸せになれない研究室かもしれません。


[How] ゆっくり急げ(Festina Lente)


雑談の時間を大切にします。

・時にはグデグデとお茶を飲んだりアイスを食べたりしながら「いやぁ何もわからないね~^^ でも面白いね~笑」みたいな感じで非常にゆっくりと理解が進んでいきます。

神山は雑談を大切にしています。研究の世界において,「どうでもいい雑談」は実は全然「どうでもよくない」です。雑談の「パス」が普段から通っている状態にしておくと,科学の勉強やアイデアの発見のために良いだけではなく,きっと研究室の問題も発見しやすくなるんじゃないかなと思ってます。それは科学が生まれる「雰囲気づくり」の一つとしてとても大事だと考えています。

気象学の勉強・研究には定期的なおしゃべりが必要です(「ねぇ,なんか今日すごい低気圧いるよ!」とか)。それゆえ,たまに気分が乗らないときはダラダラとネットサーフィンしててもいいので,なるべく頻繁に研究室に現れて欲しいです(とはいえ,神山は子育てのために18時くらいには帰ることが多いです。)。

・「のんびりできる」研究室ではありません。むしろ「ずっと地道に同じことを考え続けるしつこさ」が要求されるという意味で,好奇心の乏しい人にとっては大変しんどい「ブラック研究室」になることすら予想されます。

・「スパートをかける時期」は必要です。学会発表・投稿論文にする段階になったら,時には「ガーッと」まとめられる力も必要です。常に急いでいるわけではないというだけで,最大出力はそれなりに求められます。


指導方針:「神山が出来ないことをする」。

神山が出来ること・やったことがあることを上意下達で教えた方が,軽微な研究結果は早く出るだろうと思います。

しかし,ロングタームで考えたときに,神山が出来ることを上意下達で教えるだけでは,

・いつまでも神山を超えられない

・頭を使って自分で考える訓練にならない

各人の研究テーマが神山の能力や経験に制約されてしまう ←これが一番マズイ

などという弊害が生じます。

そのため神山研では,必ず神山が出来ないことを研究テーマにしてもらいます。

そして,神山の雑なアイデアやアドバイスをもとに,自ら調べながら進んでもらいます。

 (当然,神山が間違えている場合もいっぱいありますので,ちゃんとご自身の心に問うて進まないと大変なことになります。)

わかりやすく言うと,物理学が専門の神山と,情報科学が専門の学生さんで,気象学の共同研究をするみたいな感じでしょうか。

神山研を卒業する皆さんには,僕の出来ないことだらけの研究発表をしてくれることを期待します。


[What] 趣味と実益をかねる気象学


わからないことがたくさんある。だから自然はおもしろい!

気候変動(地球温暖化)や異常気象(豪雨,台風,エルニーニョ,etc.)など,人類が今世紀半ばに必ず直面する問題に,情報科学的視座でアタックすることを目指します。

・というのが「外向きの宣伝」および「成し遂げたい社会貢献」ではありますが,神山が学問的に興味があるのは「地球の気象・気候の現在の姿とふるまいはどのように決定されているのか」です(例:なぜ台風の眼の直径は約40 kmなの?)。たまには,そういう話にも付き合っていただくかもしれません。

・3年ちゃんとやれば,気象に関する高い専門性と,応用数学・統計処理など,世間でいわゆる「データサイエンス」と呼ばれるものを扱う能力がつきます。

気象学は物理学です!物理の計算が得意な必要はありませんが,物理学の考え方を面白いと思えない人は,来ない方が良いです。

・手法は,気候データ解析および気象シミュレーションです。特にデータ解析では,従来の気象学ではあまり使われてこなかった情報科学的手法を積極的に使うことで,meteoroinformatics(メテオロインフォマティクス)とでも呼ぶべき分野を盛り上げたいと考えています。

詳細な説明は,下記リンク先をご覧ください。

https://drive.google.com/file/d/1CeEBbP-HGxYrYdriN_H5ROiGko7qDa7f/view?usp=sharing

・ベースとなる基礎知識は「微分積分学5・6(微分方程式・ベクトル解析)」「線形代数学3・4(行列の固有値・固有ベクトル・対角化)」および,初等的なプログラミング全般です。

プログラミングについては,内部生の研究室配属条件になっているのは下記の内容です。https://sites.google.com/site/tsubasakohyama/%E6%B0%97%E8%B1%A1%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E8%A7%A3%E6%9E%90

他にも画像処理などのスキルは役に立つ可能性がありますので,色々と知っているに越したことはないです。

・地球が好きなら一生モノの趣味ができるかも?気象予報士資格とか勉強するのも楽しそう。「予報士会」とかあるらしいよ。


他の研究室が専門とする情報科学的手法に,学問的興味の主眼がある場合。

その場合,たとえ扱いたい題材が気象だとしても,そちらの研究室を志望してください。お相手の先生が許せば,共同研究者として全面協力します。

・気象データの可視化を研究したい→伊藤研?

・気象データをわかりやすく伝えるUIをつくりたい→椎尾研?

・気象予報に関する知能情報処理や自然言語処理を研究したい→小林研?戸次研?

・可視化を用いて気象を理解したい→神山研へ(伊藤先生,共同研究お願いします!)


タイムスケジュール。

B4:まだまだ勉強。

・気象学の基礎と研究手法をしっかり身につけます。勉強用の題材として,未知のことにも挑戦しましょう。

(美容師さんの修行に例えると,シャンプー担当の「見習いスタッフ」といったところでしょうか。でも,シャンプーがちゃんとできる人は,良いスタイリストになると思います。)

・神山があまり指導できない分野(積雲パラメタリゼーション,海洋乱流,陸面過程,気象観測器製作など)に興味を持った人,あるいは神山研の思想と根本的に相性が合わないことに早くも気づいてしまった人(おそらく一定数いるでしょう)には,他大(おそらく多くは東大の院)に「輸出」する準備をします(全面協力します)。

・神山が多少指導できる分野に興味を持ち,かつ神山と研究したいと思ってくれた人には,共同研究を積極的に取り付けていきます。

M1:勉強+研究のハイブリッド。

ゼミを積極的にリードしながら,国内・国際学会発表や原著論文投稿を目指しましょう。

M2:修論まとめ。

修論はじっくり仕上げましょう。博士に行く人は研究最前線に行くための準備も進めます。

D1-3:自律走行で世界の仲間と気象学を前進させる。

共同研究者である神山に専門分野を教えながら,ぜひ大活躍してください。


[まとめ]求める学生像


「好奇心」・「諦めの悪さ」・「心の余裕」の3点を明確に求める研究室です。

(それらを満たさない学生さんにとっては,居心地が良くないかも)

・学問,特に科学が好きな人

神山は,たぶん科学に関する理想が高い方です。科学に全く興味がないと,非常に付き合いづらい人間だと思います。

たとえば現在,神山は「初夏に神保町の古本屋街を巡礼するゼミ」とか企んでいます。そういう知的探求でワクワクできる人を求めています。

・物事を理解し,解決するために主体的に動ける人

「勉強できる環境に身を置くことは贅沢なことである」「研究は気分が乗らないときにするものではない」という思想を持っています。研究活動には主体性を強く求めるので,学生さん側からの働きかけが何もないときは,(善意で)数ヶ月間そっとしておくこともあります。指示待ちタイプだと「私は〇〇さんよりも放置されている」と感じる方もいるかもしれません。

逆に,教えを乞われたらなるべく時間を割こうと努力します。何をして良いかわからないときは「〇〇を勉強したいので,何か課題を与えてください」でも構いません。学生さん側から,主体的に学ぶ意欲を示してくれることを強く期待します。

・好奇心がデフォルトで備わっている人

好奇心を育てるのも教員の仕事だと思っています。ただし申し訳ないことに,新米教員で未熟なので,好奇心を引き出す方法がどうも今のところちゃんと分かっていません(色々と勉強中です)。現時点では,好奇心がデフォルトで備わっている人に来ていただけるとありがたいです。

・じっくりと自然の不思議を知りたい人,スピーディに結果が出なくてもあまり病まない人

神山は,半年,1年,2年,5年,10年,30年,100年程度の時間感覚で良くなると思う側に,物事を判断し,決定し,投資します。

「秒で結果を出したい」タイプの人は,ちょっと見ていてイライラするかもしれません。笑

・なるべく大学にたくさん来て「住み着いて」くれる人,知識欲や読書欲がある人

耳学問がどうしても必要な分野なので,日常の雑談量がアイデアの質を決めます。いわゆる「座学」以外の方法でも知識を蓄えていける人が強いです。

そういった事情から,用事のない日には研究室に来る習慣をつけてくれると嬉しいです(神山は,雑談ベースで研究のアイデアを渡します。意欲的に研究室に来てくれる方はガンガン伸ばせますし,逆に来てくれないとずっと進みません)。

・おしゃべりが好きな人

上記のことと関連しますが,「ちょっと居室でしゃべっていかない?」と声をかけることが多いので,雑談を時間の無駄だと思わない人の方が幸せだと思います。

・地道な人,しつこい人,諦めが悪い人

座学でも,プログラミングでも,わからないことにぶち当たって研究が進まなくなることは非常に多いです。「もうダメだ」と思ったときに,自分の頭で調べたり考えたりして「さらにもう一歩先に進めるかどうか」があとで大きな差を生みます。(「人はね   限界だと思ってから   もうちょっといける」)

・あまり生き急いでない人

不思議と「浪人生を引き寄せる」ことに定評のある研究室です(現役生ももちろん歓迎ですよ笑)。

・いわゆる「物理数学」に抵抗がない人(前提知識は微分積分学56,線型代数学34程度)

苦手でもいいので,数式を「かっこいい」と思える感覚は必要かも。逆に,「数式を見るのも嫌」な人だと結構辛いかもしれません。

・自分は運が良いと思う人

楽観主義は超大事です。

・英語の読み書きも必須

突然,英語論文を渡すことがあります。研究発表も,大学院以上だと国際会議で発表する可能性があります。

・博士後期課程に進むことに興味のある人、歓迎します

D進はむやみに勧めることはありませんが,覚悟のある方は一緒に夢を追いましょう。

気象学という学問の性質上,何かを身につけるには修士までではあまりにも短すぎます。

何かの小領域で世界のトップに立つにはさらにあと3年必要なので,研究が面白くなってやめられなくなっちゃった人は博士へ進んでください。


気象学の研究には「暇な時間」がたくさん必要です。

逆説的ですが,すごく頑張って「暇な時間」を作ってください。

神山研の理念"百年後の科学を作る”に共感してくれる「機嫌の良い」学生さんをお待ちしています。

Brian HoskinsとMike Wallaceの2024年度日本国際賞受賞に際して,帝国ホテル東京にてMike Wallace(写真中央)と研究のディスカッション。写真左はBrian Hoskins,右はHisashi Nakamura。

3年生合宿のスライド(2019年度版なので、古い情報も含みます):https://drive.google.com/file/d/13n9vYkuIYeR5KrFpLA7eh_RNTy9HxwUN/view?usp=sharing