(Home-made Cloning Cable with USB connector for PC, for the ICOM IC-R6 Scanning Receiver)
秋月電子のFT232RL USB-シリアル変換モジュール(写真)は、PCにUSBで接続できる調歩同期式通信モジュールで入出力はTTLレベルです。これはクローニングケーブル(OPC-478UC=USBタイプ)とほぼ同じ電気的仕様の筈なので、クローニングケーブルの代替として使えるか実験してみました。 その結果代替として使える事が分かり、クローニングケーブルを自作しました。
変換モジュール(950円)を購入後、説明書に従ってドライバーをネットからダウンロードしてWindows XPにインストールすると、USB経由で即モジュールをCOMポートとして認識出来ました。
試しにバラックで写真のような回路を組んでみました。クローニングケーブルは、送受で1本の信号線を共有する半二重通信を行っていますから、イーサネットと同じように双方からの送信が衝突(collide)する事が前提です。衝突しても電気的に問題ないよう、回路はダイオードを1個入れて単純なWired-ORにしています。当然、送信したデータはそのまま送受双方で受信されますが、IC-R6はこの事を衝突検出・再送に使っているようで全く問題は無いです。
この状態でクローニングソフトCS-R6でIC-R6の設定を読み出してみると、高速モードでも問題なくメモリーデータを読み出せました。
この方法ではICの出力をいきなりIC-R6に繋いでいるのでドライブ能力等に若干不安がありました。 試しに正規のクローニングケーブルを計ってみると開放電圧は4V位、短絡電流は0.1mAであり内部抵抗40KΩ程度です。また、ネットに出回っている回路図によるとIC-R6側は18KΩで3.3Vにプルアップされている感じです。従って、Wired-ORは手持ちの22KΩでプルアップする事としました。
一方Sinkについては、FT232RLのドライブ能力(最大定格)はH、Lとも25mAあり、とりあえず十分でしょう。 なお、IC-R6側はトランジスタで受けており(最大定格)150mAと十分な能力があります。
なおWired-ORのプルアップ抵抗は低い値の方が安定な通信が期待できますが、イヤホン端子の接地側の接触抵抗が高いと逆効果(L側の電位が下がらない)になります。またイヤホンの方に回り込むノイズも増えます(私のIC-R6はイヤホン端子の接地側の接触がやや不安定で、イヤホンにCI-Vのノイズが回り込む場合があります)。
ということで、LT-R6(ICF-Editor)も一段落したのでクローニングケーブルの製作に取りかかりました。回路は次のようになります。D1がWired-OR用のダイオード、D2,D3は保護用ダイオードです。ダイオードは汎用のもので十分、私の場合は昔秋葉原で買ったジャンクの基板から外したもの(たぶん1S1588)が大量にあるので、それを使いました。
ケースは、不要になったスマホ充電用電池パック(単三×4)のケースが丁度良い大きさだったので、これに納めることに。 あとは手持ちの部品と、足りないものは八潮にある秋月電子へひとっ走り・・・、で、久しぶりにドリルやらヤスリやら持ち出して工作しました。
こんな出来上がりです。
FT232RL上のジャンパーは、J1が2-3を短絡(USBの電源電圧をそのままI/O側にも供給(プルアップ抵抗に供給)、J2(USBからモジュールへ電源を供給)は短絡です。)
ミニジャックが4つありますが、2つはCI-V(IC-R6接続用とスルー用)で、残り2つはイヤホンジャックです。イヤホンジャックはステレオ用とモノラル用で2つ設けました。イヤホン用と録音用みたいな使い方も出来ます。
FT232RLモジュールを外すと、こうなってます。下の基板上にダイオード1個と抵抗1個が見えます。手前のジャンパーは送信を切り離せるように設けました(保護用ダイオードD2,D3は未設置です)。
ネットブック(Windows7)にLT-R6(ICF-Editor)を乗っけて使ってみましたが、普通に問題なく使えます。ダウンロード(クローニング)もちゃんと出来ます。そしてアップロードも。
本家のクローニングケーブルは長くて硬くてIC-R6側のケーブルは本体から外せないなど持ち運びにはやや不便ですが、これならケーブルも取り外せて外出にも便利。・・・ということで、モバイル環境が出来上がりました。おまけにエラー率が本家より低いように思います。IC-R6と接続するのに多芯ケーブルの持ち合わせが無かったので、単芯シールドを二本使って音声とCI-Vを分けているのが効いているのかもしれません。
その後、オークションでオシロスコープを入手したので波形を見てみました。LT-R6でアクティブモニターした時はこんな感じです。
左半にあるパルス列がLT-R6からの問い合わせ信号、右半がIC-R6からの応答です。製作したCI-Vインターフェイスにダイオードを入れているため、問い合わせ信号のLのレベルが若干浮いていますが、まだマージンがあるので問題ないでしょう。
P.S
クローニングケーブル自作の本ドキュメント最新版(PDF)はDownloadページがらダウンロードしてください。
P.S.2
その後、D1を通常の1S1588から順方向電圧降下の少ないショットキーバリアーダイオード(ROHM RB441Q-40)に変えてみました。このショットキーダイオードはハムフェアで10本120円で売っていた物で特別なものではありません。
左が元の波形、右がショットキーに変えたときです。Lレベルが0.5V位下がっている(マージンが増えている)のが分かると思います。
以上の内容をPDF化しDownloadページに置いているので、必要ならダウンロードしてください。
その後、こんなの(作品2)も作りました。
秋月の「超小型USBシリアル変換モジュール(AE-FT234X)」を使っています。
Wired-OR用のショットキーダイオードを追加しています。
+5Vへのプルアップ抵抗は裏面に実装しています。
熱収縮チューブをを被せました。USBでPCへ接続すると、熱収縮チューブを通して青色LEDの電源ランプが光っているのが見えます。