ゲンジボタルの国内外来種問題(中学校3年生もしくは高校生向け)

多くの生物では同じ種であっても、地域によって遺伝子型が異なり、生態にも違いが見られることが知られています。

ゲンジボタルのアルコールジェル標本

左が雄、右が雌。

雄は腹部先端から2節目まで発光器だが、

雌は2節目のみ発光器で1節目は発光しない。

例えば、ゲンジボタルでは遺伝子型が異なる地域個体群間では、発光パターンが異なることが知られています。

関東型は4秒に1回、関西型は2秒に1回発光します。

ゲンジボタルは日本の里山環境に適応した種であり、里山環境の減少に伴い、個体数が減少しています。

ゲンジボタルの個体数を回復させるため、日本各地で放流活動が行われていますが、その多くは遺伝子型を考慮しない放流であることが報告されており、

場合によっては数少ない個体群がこの放流によって絶滅することもあるようです。

多くの場合、放流よりもその生息環境の保全が優先事項であり、そのことについて考える機会を作る教材を作りました。

授業はグループ活動①~③から成ります。2コマ(50分×2)を想定していますが、1コマでも実施できると思います。

添付したPDFファイルにより情報提供を行いながら、グループで問いに対する考えをまとめます。

グループ活動①での問い 「 日本各地でゲンジボタルの放流が行われている現状についてどう思うか。」

グループ活動②での問い「 関東型が関西に、あるいは関西型が関東に放流されたらホタルに何が起こるか考えてみよう!」

グループ活動③での問い「 地元のホタルを守ったり増やしたりする活動をしたい人たちにどんなアドバイスをするか。」

グループ活動②では下記の映像を使い、遺伝子型の違いにより発光パターンが異なることに気付かせます。

●期待される教育効果

・同じ種であっても遺伝子型が異なる個体群間では生態が異なる場合があることを理解できる

・遺伝子型を考慮しない放流は、地域個体群を絶滅させてしまう場合があることを理解できる(国内外来種問題をもたらす)

・放流よりもまずは生息環境の保全が重要であることを理解できる

・ゲンジボタルは一生の間に複数の環境を利用するため、ゲンジボタルを保全することで生態系を保全することができることを理解できる。

関連論文

山野井貴浩・佐藤千晴・古屋康則・大槻朝(2016)

ゲンジボタルの国内外来種問題を通して生物多様性の保全について考える授業の開発.

環境教育25(3):75-85.