抽出物はDNAであるかを確かめる(高校生向け)

中学校や高等学校の授業でブロッコリーなどからDNAを含む抽出物を得る実験は行われていますが、

その抽出物にDNAが含まれているかどうかを確認する実験はほとんど行われていません。

先行研究(倉林・片山2015,生物教育56(1)21-28)から、

材料(例えばバナナ)によっては白いもやもやにはDNAがほとんど含まれていないことが報告されており、

白いもやもやがDNAであると説明するのは問題があります。

また、この白いもやもやがDNAであると説明されても、納得できない生徒もいることが報告されています。

(「DNAは二重らせん構造」の認識が強く、二重らせん構造が見えなかったので、抽出物はDNAではないと判断した生徒もいるようです(馬場ら2013,生物教育53(4)168-175))

そこで、ジフェニルアミンを用いた対照実験を通して、抽出物はDNAであるかを確かめる実験を開発しました。

市販のサプリメントのDNAを陽性対照(ポジティブコントロール)、コラーゲンを陰性対照(ネガティブコントロール)とし、

抽出物はDNAであるかを確かめる実験です。材料にはサケの白子を選びました。


右写真 左から「白子からの抽出物(白いもやもや)」「DNAサプリメント」「DHA」「コラーゲン」

生徒実験は、白子からのDNA抽出(実験1)と、抽出物はDNAであるかを対照実験により確かめる過程(実験2)からなります。

実験1では、食塩、洗剤、エタノールを加えることで細胞に何が起こるかを描画してから、抽出に移ります。

実験2では、対照として何を選ぶか、試験管ごとにジフェニルアミンによる染色はみられるのかを予想してから、実験を行います。

●期待される教育効果

・抽出物はDNAであると納得できる

・DNA抽出の原理についての理解が深まる

・対照実験についての理解が深まる

関連論文

谷津潤・山野井貴浩(2016)抽出物がDNAであることを確かめる対照実験を伴う検証の必要性.

理科教育学研究57(1),63-70.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjst/57/1/57_15056/_article/-char/ja/