領内で開催される仮面武闘会は、領都で開催される本戦で幕を閉じる。
つまり、領内で開催される最後のイベントで、その規模は最後を飾るにふさわしいものとなった。
バルバロスたちも領都に押し寄せ、街では昼夜を問わずバカ騒ぎが繰り広げられている。
そんな表の喧騒とは裏腹に、控室のその奥、貴賓室では静寂が漂っていた。
工芸都市グラッセの市長オニキスの表情は明るい。
口元に慈愛に満ちた微笑みを浮かべる市長とは裏腹に、その前に立つスノーリアの表情は硬かった。
「お願いできるわね?」
それは疑問の形をとった確認。
是以外の答えを良しとしない問いに答える声は是以外なかった。
否、是以外の答えを用意すべなど最初からなかったのだ。
「必ずや、裏切り者の首を御前へ届けて見せます」
凍らんばかりに響く声に、彼女は微笑みを深める。
「期待しているわ……そうね、今は仮面武闘会。
期待に応えてくれるのならば、素敵なご褒美を用意していてよ?」
「褒美など……」
「あら謙虚なこと」
クスクスと嗤う。
「そうよね。貴女も大変よね?
お兄様のお馬鹿な娘(年上の姪)の尻拭いなんて、本当に大変だわ」
「……」
「身内の恥は身内で処分したい?
その処理での褒美なんて不要、なんて考えているのかしら?」
「……」
「でもね? 内々で済まそうなんて虫が良すぎるのではなくて?」
何も答えられないスノーリアにオニキスは柔らかな声で囁く。
そのささやきは、裏切者には容赦をしないという意思を言外に伝えるものだった。
そして、秘密裏に事は動き出す。
[卓情報]
開催日:2017/07/05 21:00~24:18
参加PC:
★一般兵
アイカ(ナイトメア/女)
ラリサ(ナイトメア/女)
★スノーリア'sメイド
ノンシュ(タビット/女)
ゲイル(エルフ/男)
登場NPC:
★高級軍人
スノーリア(ドレイクナイト/女)
イリーガル(ドレイクナイト/女)
★護衛官
ドレイユ(ソレイユ/男)
リザルト:
経験点:1000EXP(基本)+440EXP(追加)+(1ゾロ×50EXP)
報 酬:スノーリア男爵就任記念章(装備箇所『その他』/効果:魔防+2/売却価格3000G)
名誉点:20点(基本)+35点(追加)
成 長:1回
【あらすじ】
霧雨をまき散らしていた分厚い雲も晴れ渡り、絶好の武闘会日和だった。
工芸都市グラッセの代表選手だというドレイク女が竜化し、咆哮を上げる。
順調に勝ち進んでいる姿に、誰もがグラッセの勝利を疑わず、それに合わせてオッズも変動していた。
そんな中、とある一室に集められたPCたち。
現在進行形で勝ち進んでいるグラッセ代表選手であるドレイク女の抹殺命令が出たのだ。
件のドレイク女は隣領とつながっており、数々の情報漏洩は彼女の仕業であり、グラッセ市長であるオニキス様は決して裏切りを許さない。
現在竜化しているとなれば、一時間は人化することなく、変化が出来ないとなれば、変化による体力気力の回復はありえない。
今が狙い時だと、控室に進む。
市長からの話が通じているのか、あたりに警備の姿は少なく、その少ない警備兵たちも居眠り(物理)や説得(物理)により、床に沈む。
時同じくして、控室からはドレイク女の驚愕の声が上がる。
仮面の力が無くなり、能力が低下したのだ。
その仮面は守護者であるとあるオネエソレイユの力を移したもので、そのソレイユの力が本人に戻ったとき、仮面は無力化し、逆に呪いとして能力を奪って行ったのである。
ちなみに、そのオネエソレイユにより、100年ほど前、フロマージュ全土に謎の痔が流行し……事態を重く見た現領主とグラッセ市長が迷宮に閉じ込めたのだ。
とてつもなく恐ろしい出来事だった、当時を生きていたソレイユ男は語る。
そして、ドレイク女と相対するPCたち。
ドレイク女に魔法攻撃を叩き込み、大ダメージを出すも、決定打にかけ、ドレイク女は生き延びる。
ドレイク女は自身の前に立つ年下の叔母に怒りを募らせる。
自身の前に立ちはだかる邪魔なものとして、父親であるフロマージュ領主に認められたいのだと叫ぶ。
しかし、魔法の前は無力であった。
倒れたドレイク女は捕縛され、グラッセ市長に渡される。
グラッセ市長は嗤い、褒美を渡した。
隣領から献上された無用の土地を……
恭しく賜ったドレイク少女は、PCたちに言い放つ。
左遷された自分に付き従うことはないのだ、と。
されど、PCたちは、自分の意志で選択するのだった。