淋菌は薬剤耐性を獲得しやすい細菌です。ペニシリンなどの抗菌薬に対する淋菌の耐性は、50年間で約100倍の薬剤量を治療に要するほどになっています。実際には100倍の薬剤は服用できないので、新しい薬剤を用いることになります。
性行為があって2~7日の潜伏期間の後に尿道口から濃い膿が多量に出て、強い排尿痛を認める場合は淋菌による尿道炎(淋菌性尿道炎)が疑われます。
尿道口から出ている膿を顕微鏡で観察すると、淋菌は白血球内に存在する、2個ずつ対をなす球形の菌(双球菌)として観察されます【図】。クラミジアは普通の顕微鏡では観察できず、白血球のみが認められます。淋菌の確認は培養法、または遺伝子増幅法という淋菌に特異的な遺伝子を増幅して検出する方法で行います。
注意しないといけないのは淋菌性尿道炎の20~30%にクラミジアが混合感染している場合がありますので、淋菌性尿道炎ではクラミジアの検査も同時に行うことがすすめられます。
現在、わが国でみられる淋菌では経口の抗菌薬が効きにくくなった菌が増えていますので、淋菌に強い殺菌力を示す注射薬を1回のみ投与する単回投与療法がすすめられています。クラミジアは経口の抗菌薬が良く効きますが、一般的に7日間内服しなければなりません(ただし、1回のみ内服する薬もあります)。症状が軽くなっても必ず毎日内服し、最後まで続けることが重要です。中途半端に中止すると再発する場合があります。また、治療後にも検査を受け、治癒していることを確認することも重要です。
淋菌
○ナイセリア科ナイセリア属
○微好気性グラム陰性双球菌
○感染経路…血液感染(性行為)
○症状…尿道炎、副睾丸炎、膣炎、子宮頚管炎
○治療…抗菌薬投与
男子尿道炎
A. 淋菌性尿道炎
・起炎菌 Neisseria gonorrhoeae (グラム陰性双球菌)
・症状 潜伏期間 約3~7 日
外尿道口より濃厚な膿の排泄 初期排尿痛 外尿道口の発赤
咽頭炎 直腸炎 産道感染
前立腺炎 精巣上体炎の併発 尿道狭窄
・診断 尿沈渣 培養検査
・治療 Spectinomycin(SPCM) Cefodizime(CDZM)の単回投与
Cefixime(CFIX) 400mg 2× 3 日間内服