6. 募集

当研究グループに所属希望の研究者

本研究グループでは、日本学術振興会(JSPS)・特別研究員PDなどの博士研究員の受け入れを行っています。研究テーマ・分類群を限定することなく、幅広い専門・関連分野の研究者が集える環境構築を目指しています。当研究室では、これまでに2名のJSPS・SPDを受け入れており、生物学分野では国内で最多です。

科研費などの外部資金によって博士研究員を募集する際には、JREC、および進化生物学系のML(evolve)などに公募のお知らせを出しています。このホームページでもお知らせいたします。

共同研究をご希望の方は、メールにてご相談ください。


客員研究員制度について

先導研では客員研究員の制度を設けています。学外の研究者が、研究グループのメンバーと有機的に交流・共同研究していただく制度です。たとえば、学外の方が、葉山の施設を頻繁に利用する場合、研究プロジェクトのメンバーになる場合には、客員研究員になっていただいたほうが好都合です。また、週1日以上、葉山キャンパスにおいて研究活動に従事する方は、他に所属先がなくとも、「総研大・先導研・客員研究員」という身分をもち、科研費を申請することができます。興味をお持ちの方は、沓掛までご相談ください。 

   

当研究グループに進学希望の学生

総合研究大学院大学・先導科学研究科・生命共生体進化学専攻の入試は、8月と2月の二回行われます。博士前期課程(いわゆる修士過程)の場合には、大学院一年目に仮配属として所属し研究を行い、大学院二年目から正式な配属となります。詳しくは専攻のホームページをご覧ください。

総研大では、大学院生をサポートする数多くの制度を設けています。たとえば博士研究を行うことに対するRA制度による授業料相当の経済的サポート、主指導教官一名と副指導教官二名(以上)による複数指導体制などです。

受験・進学を希望する学生へのお願い

 例年、数多くの学生から、受験・進学の相談を受けています。オープンキャンパスに参加される以外の場合、これまでの経験から、相談はまずオンラインでお受けし、次のとして段階でキャンパスへ訪問いただくことを考えています。というのも、毎年5名程度の学生から相談を受けており、研究室に訪問していただく場合には、十分な時間をとって話し合いをするようにしています。学生の相談に乗ることは実りのある時間の使い方だと感じていますが、数多くの業務があるなか、まとまった時間を確保することが難しくなってきました。また、これまでに葉山までお越しいただいたのに、研究テーマが明らかにミスマッチであったりする場合もありました。そのようなミスマッチを避けることはお互いにとって重要なことだと思っています。ご理解いただければ幸いです。


動物行動学、行動生態学、進化生態学などを専門とする他の研究室と比較して、本研究グループの特徴は、

(1) 一般性や理論的背景を重視している点、

(2) 脊椎動物を対象にした研究が行われている点、

(3) 時間がかかる研究、長期研究を重視している点、

(4) 隣接分野の知見を取り入れた研究スタイルが可能であること、

の4点だと思います。

(1) -- 自分の研究対象のみならず、動物や生物全体を見渡して、一般的に成り立つ原理探求・仮説検証という考え方を身につけてもらうことが目的です。そうすることによって、自分の研究していることが、進化生物学のなかでどのような位置を占めているのか、どの程度、一般性のあることなのか、というを意識することができます。このような研究姿勢は、ナチュラルヒストリー、博物学、研究対象への愛着と相反する研究姿勢ではありません。一般性をふまえた上で、それぞれの生物がもつ独自性を探求してもらいたいと思っています。また、適応進化の理論を用いる行動生態学は、動物を理解する一つのアプローチに過ぎません。行動生態学以外にも、物理学的、情報学、認知科学、社会学、その他様々なアプローチがあるでしょう。そのような新しいアプローチをしたい学生も歓迎しています。

(2) -- 本研究グループでは、脊椎動物(哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類)の研究を行うことができる研究環境を目指しています。無脊椎動物と比較して、脊椎動物の研究は、サンプルサイズが集めにくい、実験が難しい、生活史が長く進化的な考察をしにくいなどの点があります。その一方、複雑な繁殖システム・社会構造をもつ脊椎動物でしか明らかにできないテーマというのもたくさんあります。この研究グループでは、脊椎動物の研究に取り組む大学院生を応援したいと考えています。このように書くと、無脊椎動物に関する研究を行うことはできないの? と思われる方もいると思いますが、そんなことはありません。無脊椎動物に関する研究を行なうことも可能です。が、その場合、専門的なアドバイスが受けにくいということもあるでしょう。

(3) -- 行動生態学の研究では、長い時間かけて、じっくりと一つの動物・テーマに取り組まないと成果が出ないものがあります。たとえば、(2)で述べたように、脊椎動物の研究は長い時間を必要とします。当専攻は5年一貫ということで、前期課程入学者全員が博士後期課程に進学するものとして研究計画を組み立て、指導を行います。成果主義の世の中にあって時間のかかる研究は敬遠されがちですが、5年間ひとつのテーマに取り込むことによって大きな研究を仕上げてほしいと思っています。ただし、そのように息の長い研究はリスキーでもあります。そのため、複数の研究テーマを同時進行で進めることが望ましいと考えています。とくに、短期的にある程度成果が見込まれる研究を行えば、ひとつの研究を完結させるプロセス(発案→文献調査→仮説→データ収集→分析→学会・論文発表→研究成果の宣伝)を早いうちに体験することができます。後期課程から入学した場合、基本的に3年間で完成する研究計画を立ててもらいます。しかし、修士課程からのテーマを変える場合、博士を修了するまで、3年よりも長い期間がかかると考えておいたほうがいいでしょう。

(4) -- 先導研の指導理念に関するものです。本研究グループが所属する先導研では、研究グループ間の垣根を低くして、異分野融合を促進する環境づくりを行っています。そのため、たとえば当分野で博士研究を行う大学院生の場合、集団遺伝学、数理生物学、神経行動学などの隣接分野の手法を取り入れた学際的研究を行うことができるかもしれません。このように異分野をまたがる研究を行うためには、人一倍の努力が必要になるでしょうが、新しいことに挑戦する意欲的な大学院生が、研究を発展させることができる環境を維持したいと思っています。

本研究グループに進学を希望する学生は、事前に沓掛までコンタクトを取ってみてください(メールが確実です)。とくに、博士後期課程(いわゆる博士課程)から進学希望の方は、入試前に教員と研究の相談をすることが必要です。入試説明会・オープンキャンパスには、毎年、日本全国から学部生・大学院生が参加しています。それ以外にも、個別に葉山を訪問してもらえれば、ラボの雰囲気などを知ることができるでしょう。大学院生の研究テーマに関しては、自分で「この種でこういう研究をしたい」というプロポーザルを歓迎します。ただし、実現可能性が低いと考えられるテーマは、再考、もしくは変更してもらいます。たとえば、ラボにて飼育できる動物に制限があります。研究費にも限りがあります。

研究テーマを選ぶ際には、以下の三つの要素が決まっていれば、研究テー マを具体化することができるでしょう。

また、自分でテーマが思いつかないという学生さんもいると思いますが、研究の現場を経験していないのですから無理もないことだと思います。図鑑や関連書籍などを読んでみて、興味があるテーマを探してみてください。それでも見つからない場合、もしくは提案されたテーマが魅力的でない、実現可能性が低い場合、大学院に入学後に、教員からいくつかのテーマを提示しますので、そのなかから興味を持てそうなものを選び、発展させていくこともできるでしょう。このようなテーマの決め方には、「大学院生が自由な発想で研究をできない」と否定的に考えるひともいるかもしれませんが、研究テーマが絞れている、研究のノウハウを効率的に学ぶことができるなど、良い点もたくさんあります。

卒業生の進路

現在までに博士課程の修了生は大学・研究所でのポスドク、小学校の先生に従事し、PDは大学の教員・ポスドク、NPOの研究者などの職についています。

Q & A (適宜、加筆・執筆中)

Q - 大学院生はどのような生活をしていますか?

A - 私のラボにはコアタイムはありません。各自がフィールドに出たり、出張していたりと、リズムがバラバラです。毎日の活動は、各自で管理してもらうことにしています。大学院生は首都圏の各地に住んでおり、逗子・葉山・横須賀など大学近辺に住む必要はとくにありません(ただし、動物を飼育して研究したい場合には、動物の世話があるので、近隣に住んだ方が便利でしょう)。葉山キャンパスには宿泊施設があり(注:寮ではありません)、学生は1000円で宿泊できます。また、週1回行っているラボのゼミには、基本的に全員参加としています。が、フィールドの予定がある人は、フィールド優先にしてもらっています。

Q - 研究にはお金が必要ですか?

A - 必要です。フィールドワークを行うためには、旅費、滞在費が必要です。学会に行くのも同様ですし、学会年会費、参加費もかかります。また、実験室での作業には、試薬、動物飼育などに研究費が必要です。現時点では、これら研究に関わる費用は、私の研究費で全て支出しています(学会年会費を除く)。ただし、この体制は、研究費があり、メンバー数が少ないときにのみできることであり、今後、変わる可能性もありますので、ご了承ください。また、JSPSの研究員となった学生、研究費を自分で取得した学生は、それらの研究費で研究活動を設計してもらっています。

Q - 教員との話し合いは定期に行っていますか?

A - 毎週行っているゼミでの議論を重視しています。くわえて、院生が自由な時間に部屋に来て、研究の内容のみならず、実務的なことについて相談しています。相談の頻度は、各人の研究進攻具合・研究スタイル(何でも相談~大事な点だけ相談)によって違います。また、コミュニケーション不足だと、先々、お互いに困ったことになるので、こまめに「ほう・れん・そう」をしてもらうよう(特に、都合の悪い事を)お願いしています。

Q - 副指導体制というのはどういうものですか?

A - 私の研究(動物行動学・行動生態学の実証研究)では扱うことができない研究アプローチを併用したい学生にいいシステムだと思います。積極的に活用することを推奨しています。たとえば、分子実験(内分泌測定、遺伝子実験)や数理モデルの指導はできないので、他の教員が指導しています。

Q - 修士で出ることは可能ですか?

A - 可能です。が、「D1~D2で就職活動をして、D3に進学しないで就職」というスケジュールは、私の研究室とは相性がよくないでしょう。というのも、五年一貫を前提としたカリキュラムが組まれているので、研究を開始する前、もしくは研究を始めたばかりで成果をまとめることになるので、修士要件に到達するかどうかわかりません。D3以降に就職が決まり、遡って修士を取得して退学するという例が多いとおもいます。ただし、修士を取得すると、博士号の取得はできません。

Q - 院生はどのくらい国内学会に参加していますか?

A - 方針としては、一定の成果が出ているのであれば、積極的に学会に参加し、発表することを勧めています。院生は、毎年、だいたい1-3回、学会発表をしています。

Q - 院生は国際学会に参加できますか?

A - 五年一貫で入った院生は2回、後期課程から入った院生は1~2回、参加しています。旅費は、専攻や私の研究費から、基本的に全額のサポートしています。

Q - どんな技術が身につきますか?

A - 研究テーマによって、身に付けることができる技術は変わります。が、どんな院生にも共通して、論理的な思考力、発表力、文章力、統計力、科学英語力を身につけてもらうように指導をしたいと思っています。また、他力依存でなく、自主性をもって研究(のみならず自分の人生)を進めてもらうことを期待しています。

Q - どのくらいの質・量の研究をしたらば博士論文を提出できますか?

A - 要件として、(副論文が合格していて)国際査読付き雑誌に第一著者として一本、というのが専攻のルールです。専攻のルールとは別に、博士論文の目標として「前期5年やるなら投稿論文5本、後期3年やるなら3本」と私は考えています。ただし、質の高い投稿論文があれば、本数にこだわる必要はありません。実際に、この目標に到達していなくとも博士論文をまとめた例はあります。