Mathematical Biology Workshop 2019

研究集会「数理生物学の歩みとこれからの展望」

総合研究大学院大学・先導科学研究科・生命共生体進化学専攻・数理生物学研究室では、進化的な視点を軸に生態学・疫学・遺伝学・人間行動科学等の研究を行い、これまで研究成果の発信と若手研究者の育成に努めてまいりました。

本研究シンポジウムでは佐々木顕教授の還暦を記念し、また令和の幕開けという時代の節目にあたって数理生物学のこれまでの歩みを振り返り、皆様と一緒に今後の数理生物学の展望について議論したいと考えています。

  • 開催日時

    • 令和元年9月28日(土) 13:30〜16:30(開場13:00)

  • 開催場所

    • ビジョンセンター横浜 3F 309号室(横浜駅西口から徒歩約5分)

    • (神奈川県横浜市西区北幸2-5-15プレミア横浜西口ビル 受付3階)

  • 講演者 (confirmed)

    • 佐々木顕 氏(総合研究大学院大学 先導科学研究科)

    • 佐藤一憲 氏(静岡大学 工学部)

    • 中丸麻由子 氏(東京工業大学 環境・社会理工学院)

    • 中林 潤 氏(横浜市立大学 先端医科学研究センター)

    • 山道真人 氏(東京大学 総合文化研究科)

    • 内海 邑 氏(総合研究大学院大学 先導科学研究科)

  • 事前登録の必要はなく、参加は自由です。皆様のご参加をお待ちしております。

  • 本研究集会に関するお問い合わせは大槻(ohtsuki_hisashi[at]soken.ac.jp)までご連絡ください。

プログラム

  • 13:30 - 13:35 開会の挨拶

  • 大槻 久(総合研究大学院大学 先導科学研究科)

  • 13:35 - 13:55

  • 佐藤一憲 氏(静岡大学 工学部)

  • タイトル

    • 格子空間上の感染症モデル

  • 概要

    • 感染症のコンパートメントモデルは、1927年に公表されたKermack とMcKendrick によるSIRモデルが最初であると言われている。また、格子空間上のSISモデルは1974年のHarrisによって始められた。1990年前後に九州大学で、松田博嗣先生と佐々木顕先生と考えた格子空間上の感染症モデルはもう少し複雑なものであった。当時をなつかしく思い出しながら、それから約30年の時を経た現在、格子空間上の感染症モデルはどこまで理解が進んできたのを駆け足で振り返ってみたい。

  • 13:55 - 14:15

  • 中丸麻由子 氏(東京工業大学 環境・社会理工学院)

  • タイトル

    • 箱崎キャンパス理学部3号館数理生物学講座 お茶部屋とセミナー室での雑談と閃き:推移的推論の進化

  • 概要

    • TBA

  • 14:15 - 14:50

  • 佐々木 顕 氏

  • タイトル

    • 進化の謎に挑んだ、ある数理生物学者の迷走とその出会い

  • 概要

    • 生物の示す不思議な現象に魅せられて、様々な数理モデルを考案したり、解析に格闘してきたこれまでの自分の研究を少しだけ振り返って、モデルの構造や結果で「美しい」と感じた部分、研究の「意外な(?)」エピソードを中心にお話します。

  • 14:50 - 15:10

  • 休憩

  • 15:10 - 15:30

  • 中林 潤 氏(横浜市立大学 先端医科学研究センター)

  • タイトル

    • 私は如何にして上り坂を愛するようになったか

  • 概要

    • 2007年に佐々木先生は九州大学から総合研究大学院大学へ移られました。九州大学から佐々木先生と一緒に総研大へ移ったメンバーの一人として、佐々木研創設時の出来事やラボメンバーの様子などを、研究内容とともに振り返りたいと思います。

  • 15:30 - 15:50

  • 山道真人 氏(東京大学 総合文化研究科)

  • タイトル

    • プランクトンとカタツムリから考える生態進化ダイナミクス

  • 概要

    • 環境の変化に対応して、生物は迅速に適応する。そのため、迅速な適応進化と個体数変動は互いに影響を及ぼし合い、生態学的プロセスと進化的プロセスの間に複雑なフィードバックが生じうる。本講演では、種分化・絶滅・共進化などの生態進化ダイナミクスを理解するために、プランクトンとカタツムリの実証研究にもとづいて構築した数理モデルの解析結果を紹介し、今後の展望を議論したい。

  • 15:50 - 16:10

  • 内海 邑 氏(総合研究大学院大学 先導科学研究科)

  • タイトル

    • 細胞内共生者における分裂自粛の進化と毒性の進化

  • 概要

    • 進化の主要な移行の一つである原核生物から真核生物への移行は、細胞内共生者がミトコンドリアや葉緑体へオルガネラ化することで生じた。この過程において特に重要なイベントが、分裂同調の獲得である。細胞内共生者の細胞分裂はしばしば宿主と同調するように抑制されており、この分裂同調によって、共生者は宿主の分裂をとおして過不足無く宿主の娘細胞に分配され、宿主内で永続的に維持されている。しかし、共生者にとって、宿主の遅い分裂との同調は増殖率の低下につながるため、共生者の適応の観点から、分裂同調の進化は逆説的にみえる。そこで本研究では,共生者の分裂率の進化動態をモデル化し、共生者が宿主に合わせて分裂の「自粛」を進化させる条件を理論的に調べた。その結果,共生者の分裂自粛が進化するには,相利共生による利益(死亡率の低下とした)が共生者だけでなく,宿主にとっても十分大きい必要があった。逆に、どちらかの利益が不十分な場合は共生者の分裂率が際限なく大きくなるように進化した。従来の議論では分裂同調は宿主に強制的な制御によると信じられてきたが、本研究は、宿主が強制しなくとも相利共生の利益が十分ありさえすれば、共生者が自ら分裂率を下げるように進化しえることを示している。本講演ではこれらの研究の紹介とともに、従来盛んに研究されてきた毒性の進化との関係についても述べる。

  • 16:10 - 16:30

  • 総合討論