ひとみに関する新聞 、雑誌等に掲載された
記事、寄稿などを紹介します
目次
●(紹介その1)2006年1月5日 点字毎日
「未来のガイドロボット・車いすロボット 実用化までもう一歩」
●(紹介その2)2006年12月9日 日本経済新聞夕刊
「スイッチオン! ロボット社会 お供はハイテク盲導犬」
●(紹介その3)2006年9月16日 多和田 悟氏講演
「インテリジェント車椅子ひとみについて」
紹介その1
●2006年1月5日点字毎日の掲載記事 森 英雄
2006年の新春特集に掲載するということで、点字毎日の野原記者から、取材を受けました。
新聞が出てから知ったのですが、新春特集の記事は2つあり、もうひとつは㈱アメディア代表取締役の望月優氏です。
望月氏は視覚障害者がつくるベンチャーの先駆者で、野球で言えば野茂英雄みたいな人です。
紙に印刷された文章を音声で読上げるパソコンソフトを開発し販売しています。
新春特集に望月氏と一緒に私が載るのは恐れ多いことだと思いました。
(ここまで森 英雄)
(ここからは点字毎日2006年1月5日の記事の引用)
「新春特集」未来のガイドロボット・車いすロボット 実用化までもう一歩
二十一世紀は「ロボット世紀」とも呼ばれている。
今世紀前半の世界を舞台にした漫画「鉄腕アトム」の連載が始まって、五〇年以上が経った現在、人型ロボットをはじめとする、さまざまなロボットの開発が進んでおり、近い将来、人間のために働くロボットが普及する、アニメの中の世界が現実になることが期待される。
そうしたなか、視覚障害者をはじめさまざまな人の移動をサポートするロボット開発も「実用化ステージ」にまできている。
山梨大学名誉教授 (ロポットエ学)で、同大学地域共同開発研究センター内にある
ベンチャー企業「ロッタ有限会社」の代表を務める森英雄さん(六七)が開発を進めている「車いすロボット」がそうだ。
森さんは、四〇歳ごろから同大学でロボット研究開発に着手した。
しかし、その後に早期の冑がんを患い入院。これを契機に「自分の研究を、何か人の役に立つものとして残したい」という思いが強くなった。
「妻の父が色変だった」のも、視覚障害者のためのロボット研究につながったようだ。
以来、国の助成、民間企業の技術協力、県内の視覚障害者らの協力も得ながら、歩行ガイドロボット(盲導犬ロボット)の研究開発を進めてきた。
・立ちはだかる道交法の壁
しかし、道路交通法十四条では、「目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない」と定められている。
視覚障害者が歩行ガイドロボットを道路などで使用するには、法律改正が伴うという壁にぶつかった。
ところが、同法2条では「身体障害者用の車いす、歩行補助車等又は小児用の車を通行させている者」は歩行者とみなされる。
さらに、「身体障害者用の車いす」とは、「身体の障害により歩行が困難な者の移動の用に供するための車いす(原動機を用いるものにあっては、内閣府令で定める基準に該当するものに限る)をいう」と規定している。
森さんは、「電動車いすをベースにしたロボツトであれば、将来的に歩道で動かせ、より多くの人の役にたつのでは」と、車いすロボットの研究に力を注いだ。
また、車いすロボットであれば、視覚障害者、四肢障害者、高齢者、盲ろう者など、単独歩行に介助者を必要とする人たちの移動サポートも可能となる。
こうして開発した車いすロボットは、別名「次世代インテリジェント車いす」とも呼ばれている。
キャッチフレーズは、「目的地へ安心、安全に自動運転してくれる電動車いす」。
車いす右手のパイプの上にはビデオカメラ、障害物を検知する光電センサーが取りつけられているほか、いすの下に小型コンピューター、足元には万一障害物にぶつかってもショックを吸収するバンパーと障害物検知用の光電センサーなどが組み込まれている。
小型コンピューターでは、センサーによる障害物処理、画像処理、経路制御などを行う。
あらかじめ、経路・位置情報をコンピューターに打ち込めば、車いすの操縦を人間に代わって行い、目的地へ自動で運転して運んでくれる。
ただ、要所要所に車いすが正しい経路を進んでいるかを確認するためのQRコード(2次元コードの一つ)を設置する必要がある。
利用者が操作するのは、「スタートまたはストップ」「非常停止」「後退」の三つの大きなボタンが付いた操作卓のみ。
視覚障害者や高齢者らの操作性を考え、簡略化した。
走行試験はこれまで、視覚障害者や高齢者らの協力も得ながら、大学構内や病院、福祉施設、成田空港などでも行い、検証を重ねてきた。
技術的には「実用化ステージにきています」と森さんは語る。
・試乗は快適そのもの
実際に試乗してみた。スタートボタンを押すと動き出す。
「ピンポン、ピンポン」という警告音を終始、鳴らしながら走行するので、周りのほとんどの人が気づいてくれる。
時速は1~4キロ。人間が歩く早さと同じだから、乗っていて不安感はない。
障害物があっても、センサーがキャッチして減速し、一時停止。
障害物が移動したら走行を再開し、一定時間がたっても移動しなければ左右に回避する空間があるかを調べ、自動的に回避行動をとりながら目的地へ進む。
また、将来は公道での使用を前提としているだけに、急に人や物が飛び出して前方をふさいだ時でも、センサーが即座に反応して停止し、衝突を防いでくれる。
急停止しても、大きなショックは感じられない。
最初は「本当に大丈夫かな……・」と半信半疑の思いもあったが、実際に乗ってみると快適そのもの。
また、歩行ができる人であれば、車いすに座らなくても、後ろの取っ手を握りながら、ロボットに先導してもらい、車いすを押すような格好で歩いて移動することも可能だ。
ただ、車いすといえども、「ロボット」の公道走行は、まだ認められていない。
しかし、今後のロボットの普及と信頼性の向上、警察など関係機関との交渉次第では認可される日もそう遠くないかもしれない。
当面は、病院や福祉施設などの建物内、敷地内での移動用として普及を先行させる。
既に、今春から県外の福祉施設2カ所が導入を予定しているという。
森さんは「いろんな施設、現場で使ってみてもらい、課題があれば解決していきたい。さまざまな人に試乗してもらうことで、意見を聞きたい」と、より完成度の高いロボットに意欲を燃やす。
そのため、より多くの視覚障害者の試乗も歓迎している。
場所は、甲府市の同大学構内。日時は、月曜から金曜の午後で、
事前予約制・問い合わせは、電話055・220・8637のロッタ有限会社、森さん。(野原 )』
(ここまでで2006年1月5日点字毎日の引用おわり)
(ここからこの点字毎日記事に関する森 英雄のコメント)
この点字毎日の記事が載った2006年の9月に、東京女子大で開かれた視覚障害リハビリテーション学会のデモで、電動車いすに乗っている弱視者に会い、視覚障害者が電動車いすに乗っても問題ないと聞きました。
他の視覚障害者からも、白杖を持てば電動車いすに乗って歩道を移動しても交通法規上は問題ないはずだと聞きました。
内閣府令で、電動車いすは時速6キロメートル、高さ109センチ、幅70センチ、奥行き110センチを超えてはならない。超える場合は所轄の警察署の許可をとること、となっています。
この条件をまもり、白杖を携えれば、視覚障害者がひとみを利用しても法律違反にならないわけです。
知人の福祉機器研究者は、法律が先にあって物を開発した事例はない。法律は事例を後追いすると教えてくれました。
(以上、森 英雄コメントおわり)
紹介その2
●2006年12月9日日本経済新聞夕刊の掲載記事 森 英雄
日本経済新聞 東京版夕刊で、特集スイッチオン・ロボット社会が4回連続で掲載されました。
1回目は「病院案内、患者も笑顔に」で、北九州市のベンチャー企業テムザックが開発した荷物を運搬する案内ロボットです。
2回目は「縁の下 安心を支える」で、大和ハウス工業の委託で千葉工業大学が開発したシロアリなどの被害を調査する床下点検ロボットです。
3回目は「お供はハイテク盲導犬」です。
4回目は「チーム一丸運搬お任せ」です。ロボットを製造した企業名は記載されていません。臨床検査受託大手、ビー・エム・エルの総合研究所が導入したロボットです。血液などの検査資料を大型分析装置まで搬送する台車ロボットです。
ひとみは、近未来に社会で開発するロボットとして日経新聞から選ばれたのです。
ハイテク盲導犬と名づけたのはさすがだと思いました。
(ここまで森 英雄)
(以下は日経新聞2006年12月9日の記事の引用です。)
スイッチオン! ロボット社会 3 お供はハイテク盲導犬
十一月二十八曰、奈良県河合町にある老人ホーム「奈良ニッセイエデンの園」で生活する大村元肴さん(73)の元に、新型の車いすが届いた。
大村さんは四十代で緑内障にかかり、六十歳で完全に失明したが、
「この車いすで、気軽に散歩に行ける」とうれしそうに話す。
見た目は普通の重いす。しかし周囲を見渡す「目」を持った車いすロボットだ。
目的地まで案内してくれるナビゲーター機能が付いている。
あらかじめ目的地とコースを設定する。つかまって手元の操作ボタンを押すと、カメラと光センサーが点字ブロックなどを目印として認識し、道から外れないように自動走行する。
前方に障害物があると、手前で自動的に停止し、よけながら進む。
人間の歩く速さよりも少しゆっくりだ。
大村さんはさっそく、日課である往復八百メートルの散歩コースを
車いすロボットに覚えさせた。今後、コンビニや郵便局など目的地を増やした行動範囲を広げたい考えだ。
視覚障害者は外出の際つえを使うことが多い。
しかし、中高年になってから失明した場合、つえの使い方に慣れていない分だけ一人の外出は難しい。
大村さんも一人では部屋から出るだけでも恐怖心がある。
そこで車いすロボットを開発していた企業、ロッタ(甲府市)に相談し製作してもらった。価格は約二百万円。
ロツタ代表取締役の森 英雄山梨大学名誉教授は、「盲導犬の代わりになる」と期待する。
本来の車いすとしても使われている。
茨城県那珂市の「盲老人ホームナザレ園」は九月に導入した。
視覚障害と難聴を患者、歩行が困難な入所者が、食堂や談話室まで移動するのに利用している。
ナザレ園の萩野谷静子主任相談員は「利用者は部屋にこもりがちだったが、自由に移動きるようになった。本人も喜んで使っている」。
目的地まで人間を自動約に運んでくれる夢のロポット車。
福祉の分野ではすでに実用化のスター卜を切った。』
(日本経済新聞「夕刊」2006年12月9日の記事引用おわり)
紹介その3
●ひとみについての多和田悟さんの講演 森 英雄
多和田悟さんは、NHK[盲導犬クイールの一生]と松竹映画「盲導犬クイール」の指導と監修をつとめた人で、視覚障害者の方は良くご存知だと思います。
14年前、多和田さんが関西盲導犬訓練センターの所長だったときに、センターのイベントに盲導犬ロボットを費用向こう持ちで招待していただき、デモをさせてくださいました。
車いすロボットの展望と改良のアドバイスをいただいています。
(ここまで森 英雄コメント)
(ここから多和田 悟さんの講演記録)
日本ロービジョン学会学術総会・視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議(2006.9.16~18、於東京女子大)講演要旨
インテリジェント車椅子「ひとみ」について
Post Guide dog mobility?
財団法人日本盲導犬協会 多和田 悟
視覚に障害を受けると、その移動方法はその人の能力とニーズに応じて変化する。
ほとんどの人は、自ら情報の分析ができるようになるまでは、最初は手引きで情報を与えられながら歩き、その後必要に応じて単独で白杖を使って情報を収集しながら歩くようになる。
白杖より速度、歩行範囲を広げようとする人達、または盲導犬の能力に依存しなければ歩行できない人達には盲導犬が選択肢の一つとしてある。
これら手引き、白杖、盲導犬は、それぞれの使用者に求められる能力は異なる。
単独で歩行してきた人達にとって、年齢、環境によりそれが出来なくなった時、彼らの自立も同時に失う。
既存の歩行補助具を補うために、高度な能力を要求されること無く
、目的地に安全に到着できる歩行補助具として、"盲導犬ロボット"が開発され、さらにそれの実用化を目指した形で、"インテリジェント車椅子「ひとみ」"が開発された。
この歩行補助具を視覚障碍者の歩行の選択肢とするためには、専門家による処方、歩行指導がなされなければならず、そのためには対象になる人とその評価、歩行指導が一貫性を持って行われる必要がある。
今回は開発者の森英雄氏と共同発表という形で、森氏が工学的な次世代インテリジェント車椅子の可能性と限界を、実際にデモンストレーションを行い、私が対象者への情報提供と歩行指導、フォローアップのあり方を提言することで、今までの歩行補助具では対応できなかった人達の歩行の可能性を期待して、インテリジェント車椅子「ひとみ」の現状を報告する。
・現状
日本における盲導犬の歴史の中で育成された総頭数は2046頭であり、このうち実働している頭数は952頭(日盲社協05年度資料)である。
18歳以上の視覚障碍者の推計は、30万1千人(平成13年(2001)6月1日現在 厚労省)であった。
このうち自分の視覚機能を使っての歩行に困難を感じるであろう1,2級は179000人であった。その中で半数以上が70歳以上であった。
日本の総人口に占める視覚障碍者の割合は0.25%であり、その中で盲導犬使用者は0.289%である。
総人口に対する盲導犬の割合は0.0007%、つまり人口141583人に1頭の盲導犬がいることになる。
これはイギリスの0.01%(9967人に1頭と)比べて、約1/14倍の普及率といえる。
・なぜ選ばれてなぜ選ばれなくなったか
日本においてラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバー、シェパードなどの大きな犬と、家の中で暮らすと言う方法を紹介したのは盲導犬であろうと考える。
また農耕民族といわれる日本において使役犬と呼ばれる働く犬の存在を身近なものとして世に紹介されたのも盲導犬であろう。
警察犬のように訓練士とハンドラーが同じで専門家であるのに対し、盲導犬は訓練士と使用者が違うだけでなく、使用者は目が見えない、もしくは見えにくい人達である。
しかもその作業は見えている人達が日常的に行う歩行であり、かつそのために必要な情報は見えている人から収集すると言うものである。
日本における現状では、盲導犬を自分の歩行補助具に使おうとする人は、総人口の0.0007%であり1000ユニットを越えられない。
つまり、いまだに特別な人のための歩行補助具でしかない。
盲導犬は容易に人と生活できなければならない。
しかし目の見えない人達にとって他の命を預かる事を負担に思う人たちも多くいる事も事実である。
特に生き物の宿命である死を迎えるとき、その犬の死と共に使用者のその犬との歩行も終わり、次の犬で新たな自分の歩行を構築するまでには、各犬による情報提供の方法や性格の違いなどで使用者は戸惑う事が多くある。
他の育成団体に移って盲導犬使用を続けている人を除く人達で、過去に使用経験があるが、現在は盲導犬を使用していない人達の理由を分かる範囲で調査した。
予想では使用者が高齢になったことで、犬との生活を諦めた人が多いと思っていたが、体調不良、盲導犬のパフォーマンスに不満、状況の変化などが同じくらい理由として挙げられていた。
さらに生き物である犬の宿命としての死については、ペットロスと言う表現でかなりの数の方が理由に挙げていた。
盲導犬を使用しないと決めた年齢は、予想に反して高齢ではなく50代60代が最も多かった。
また盲導犬を使用しないと決めた時の盲導犬使用歴は関連がなかった。
これは犬が個別の感性を持つ生き物であることが影響しているのかもしれない。
・盲導犬以後の歩行
多くの盲導犬使用者は、盲導犬歩行を続けられる年齢的な限界を、それぞれに自分で設定されている。
しかし、元気な高齢者が年齢だけで盲導犬使用を諦めなければならないときに、視覚障碍者の歩行の一端をになう育成団体は、その義務を放棄してしまうのであろうか。
盲導犬と言う生きた補助具での歩行が困難になった時、我々は様々な方法を提示して、視覚障碍者の歩行の選択肢を閉じてしまわない努力と研究が必要であろう。
盲導犬使用を止めた人達が、必ずしも高齢だけがその理由ではないので、白杖に戻る人、手引きを利用する人と様々であろう。
しかし高齢や体調不良、盲導犬に対する満足度の低さにより、盲導犬使用を諦めた人々にとって、新たな歩行は今まで提示されてこなかった。
今回、本人の出来るだけ少ない努力、確かな安全性を満たす高齢や体調不良の歩行希望者にとって、今回デモンストレーションするインテリジェント車椅子は、一つの選択肢になり得る。
・インテリジェント車椅子「ひとみ」の可能性
インテリジェント車椅子「ひとみ」の特徴のひとつは、本人の定位能力が求められない事である。
視覚障碍者の歩行にとって大切な要素のひとつである定位能力は、
視覚障碍者の単独歩行を困難にする大きな要因となる。
また乗車して移動する、後ろについて歩く方法が取れる「ひとみ」では、下肢と視覚に障碍を持つ人や、援助依頼をしにくい聴覚障害を併せ持つ人々にも、単独歩行を提供することが出来る。
「ひとみ」と盲導犬、介助犬を併用することで、障碍者のQOLを高める可能性もある。
また眼科病院内でベッドから便所まで単独で行けるようにする利用法もある。
・インテリジェント車椅子「ひとみ」の課題
1)マッピングされた所を移動する「ひとみ」は、そのマッピングの方法が工学的に入力するが、どのルートを使うか等の判断は白杖の歩行訓練士などが関わって、視覚障碍者にとって安心して歩けるルートを設定しなければならない。そのための白杖の歩行指導員達との連携が必要である。
2)「ひとみ」をコストダウンする事と新たなマッピングのコストや
メインテナンスのコストを下げる。
(ここまでで多和田悟さんの講演要旨おわり)
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