自然の中で

野生のロボロフスキーハムスターは別名「砂漠のハムスター」とも呼ばれ、モンゴル、中国北部、南シベリア地方の冷涼な荒れ野原に穴を掘って住んでいます。4月から10月の繁殖期に加え、特に9月から11月までの間活発に活動します。一日のうち日の入り時と日没後が彼らの最も活発な時間帯です。食生活は草食傾向の雑食性で、植物や種子類を中心に、昆虫も多く食べています。季節によっては種子類と同じ位の量の昆虫を食べていることも分かっています。他のドワーフハムスターと比べ、ロボロフスキーハムスターは野生下ではほとんど水を飲まないいでも生き延びられることで知られています。彼らは尿を濃縮でき、水のなかなか手に入らない時期をのりきることが出来ますが、これは砂漠の環境に適応した結果と考えられています。これらはまた、彼らが寒い気候に強いことの理由でもあります。しかしながらロボロフスキーハムスターは暑さにはとても敏感で、あまり暑いとすぐ弱ってしまいます。

トゥバ共和国の草原 Gurvansaikhan 1931 (2012)

ロボロフスキーハムスターは冬眠をせず、厳冬期にあたる12月から翌年4月までの間は地下に掘った穴の中で蓄えられた食糧を食べて生活します。彼らの巣はしばしば地下1~2メートルもの深さになり、巣穴の入り口は直径4センチほどで、家族が住む大きな一つの部屋と、そのまわりに食糧を貯蔵する部屋を2つか3つ備えています。

1894年、ロシアの探検家フセヴォロド・ロボロフスキーが中国の南山(ナンシャン)周辺でレポートしたものが、このハムスターにとっての最初の記録です。その後1903年に、動物学者サトゥーニンがこのハムスターを初めて飼育、研究し、この時「ロボロフスキーハムスター」という名前が正式に発表されました。その後1970年代後半にはロンドン動物学協会がモスクワ動物園から譲り受けたロボロフスキーハムスターを飼育していましたが、残念ながらこの時のハムスター達は繁殖しませんでした(今日イギリスにいる全てのロボロフスキーハムスターは、1990年にオランダから輸入されたただ一組のペアを租にしています)。ヨーロッパのほかのいくつかの国々は、この時ロシアから譲り受けたハムスターの繁殖に成功しました。日本においては、1994年に初めて輸入され、今日ではそこそこポピュラーなペットとして知らるようになりました。アメリカ合衆国にまとまった数のロボロフスキーハムスターが輸入されたのは1998年前後です。それ以前にも、愛好家がロシアから輸入された野生のハムスター達の飼育を試みていましたが、それらのハムスター達は繁殖をせず、またストレスなどですぐに死んでしまいました。

現在一般的なロボロフスキーハムスター達は半家畜化されており、これらのストレスや繁殖の問題等を克服しています。

下は、以前イギリスのBBCテレビで放送された、中国北部の野生のロボロフスキーハムスターの様子を収録したビデオです。

(意訳)

中国、シルクロード周辺の砂漠地帯に住む生き物がいる。

暗闇の中、「最小のハムスター」として知られるロボロフスキー・ハムスター達が、餌を求めて地下の巣穴から出てくる。

ピンポン玉ほどの大きさしかない彼らは、10匹前後の家族からなる群れで生活している。

砂漠に住む他の生き物と違い、他の地方へ移動する能力を持たないロボロフスキー・ハムスター達は、

厳しい冬を乗り越えるため地下にせっせと食糧を蓄える。

このハムスターをペットとして飼ったことのある人には、この小さな生き物がどれほどエネルギッシュであるか知っているだろう。

一晩のうちに、このハムスターは、私達人間にとってフルマラソンを4回完走するのに匹敵する距離を走ることができるのである。

しかし拾った食べ物を持って、それだけの長い距離を、いったいどうやって移動することが出来るのだろうか?

そこであの有名な「頬袋」の出番となるのである。ロボロフスキー・ハムスター達は頬袋に餌をぱんぱんにつめて巣穴に持ち帰るのだ。

巣穴の地下には、家族が共用する「食糧室」がある。そこに貯められた食糧は、この先の厳しい季節の間中もつだろう。

砂漠にもうすぐ冬がやってくる。

(意訳おわり)