ロボロフスキーハムスターは非常に小さいので、もしも病気になっても診てもらえる病院は限られるうえ、外科手術などは出来ない場合が殆どです。まずはケガをさせない・病気にさせないことが大切といえます。そして日ごろから良い獣医師についての情報収集はかかさないようにしましょう。また、繊細な生き物なので、病院に連れて行くことや診察を受けること自体がとてもストレスになり、病状が悪化する場合もあります。
これらを踏まえて「対処法」の項目に家庭で来るものもいくつか取り上げました。ただし、どんな場合でもまず第一に最寄りの獣医師の指示を仰ぐことを念頭においてください。以下はペットのロボロフスキーハムスター達に比較的よく見られる7つの問題と、その対処法です。
🔵闘争によるケガ
原因と症状
ロボロフスキーハムスターは社会性があり、他の個体と共同生活できると一般に信じられていますが、ハムスター同士にも相性があり、場合によっては激しい闘争が起きます。
闘争の最初のサインは、特定のハムスターがだんだん痩せてきたり、体に禿げた部分が見えたり、共同の巣箱で寝ないで一人で行動していたり、四六時中頬袋に餌をつめて歩いていることです。このようなハムスターを見つけたらすぐに取り出してケージを分けて飼いましょう。しかし、これらの予兆ぬきで突然大きな闘争が起こることもありえます。
体にカサブタがあるハムスターがいたら、ケージの中で確実に闘争が起きているサインです。そのままにしておくと、最終的に血が出るほどの噛み合いに発展するか、弱いほうのハムスターがストレスで病気になってしまうか、最悪死に到ります。
対処法
ケガがかなり大きい場合は、小動物に強い動物病院で傷の縫合処置を受けたり、抗生物質の注射を受ける事も出来ます。病院によっては、水に添加するタイプの抗生物質を処方して貰える場合もあります。抗生物質入りの軟膏はハムスターが気にして舐め取ってしまうのであまりすすめられません。
ハムスターが比較的活発でケガがあまり大きくなく、出血もとまっている場合、自宅でケアしてやることは有効です。清潔で暖かいケージに収容して単独飼育に切り替えましょう。軽い塩水浴を施してやることも出来ます。清潔なぬるま湯200mlに対し天然塩小さじ1/4を溶かしたものを脱脂綿にたっぷりと含ませ、患部を満遍なく浸します。処置が終わったら、塩分が残らないように水を吸わせた清潔な脱脂綿でぬぐい、必要であればドライヤーか小さなランプで患部を乾かします。
一度ケガをしたハムスターは、同じグループに戻されてもまたいじめられる可能性がとても高くなります。ケガは出血だけでなく、感染症などのリスクも高めるので、このようなハムスターはケガが治ったあとも単独で飼育しましょう。
🔵下痢
原因と症状
下痢はペットショップで売られるハムスターの間では比較的よくある症状で、致死的なもの(ウイルス性の病気。下の「ウェットテール」の項目を参照)が多く、家に連れて帰ったばかりのハムスターが下痢をしている場合は一刻も早く獣医師に見せましょう。
長期間飼育しているにもかかわらず、ハムスターが水気の多い軟らかい便や、ほとんど水のような便をしている時は、以下の原因を疑います。
・不衛生なケージや巣箱、同居するほかのハムスターや触られることによるストレス
・与える餌のメニューがハムスターの体質に合っていない
・餌が悪くなっているか、腐っている
・飲み水が悪くなっているか、腐っている
・野菜や果物、おやつのあげすぎ など
対処法
下痢は急速にハムスターの体力を奪い、死に至らしめることがあります。以下に挙げる処置を迅速に行うことが大切です。
症状のあるハムスターはあたたかく保温した清潔なケージに隔離して一匹だけで飼います。隔離したハムスターが比較的活発で、餌もよく食べているようであれば、普通の飲み水の他にぬるいカモミール・ティーを与えたり、うすめたポカリスエットや、普通の餌に加え消化に良い食べ物(たとえば小さくちぎったパンの白い部分やお米のパフなど)を与えて様子を見ます。この間、野菜や果物、おやつはあげないようにしてください。様子は30分ごとに観察し、徐々に具合が悪くなっているように見えれば、すぐに獣医師に相談します。
獣医へ行く場合は、密閉容器に便のサンプルを持って行きましょう。小動物に慣れた動物病院であれば検便をしてもらえ、よりはっきりした下痢の理由が分かるかもしれません。
🔵皮膚のトラブル/ダニ・ノミ
原因と症状
・不衛生なケージや巣箱、同居するほかのハムスターや触られることによるストレス
・アレルギー
・ハムスターの体がところどころ禿げている
・全体的に毛が薄く、湿ったように見える
・発育不良(みられないものもいる)
・ハムスターが体をとても痒がっている
これらの症状があれば、そのハムスターにノミ(またはダニ)がついている可能性があります。
※このノミは人間に対する伝播力はありません。
対処法
症状のみられるハムスターを清潔なケージに隔離します。しばらくペレットと水だけを与え、脱毛の原因がアレルギーによるものか、闘争などのストレスによるものなのか調べます。
脱毛などの原因がダニ・ノミである場合は、獣医科医院等で購入できる小鳥用の駆虫スプレーをケージ全体と、ハムスターの体に散布します(ハムスターの目や口に入らないように気をつけてください)。この処置を一週間ほど期間をあけて2回繰り返します。2回目の処置が終わってもまだ痒がっている場合は別の皮膚疾患が疑われるので、獣医科へハムスターを連れて行き、医師の指示を仰いでください。
ノミの伝播力はとても高いので一匹でも痒がっているハムスターがいたら、同居している他のハムスター全てにも同様の処置を施したほうがよいでしょう。ノミの発生したケージの床材はビニール袋に密閉して捨て、備品は捨てるか、熱湯で消毒してください。
処置後のアフターケアとして、ハムスターの体にカサカサの皮膚が浮き出して辛そうであればオリーブオイルを軽く塗ってやりましょう。
🔵旋回癖
症状
・平らな場所で転んだり、ひっくり返ってしまう
・同心円状にくるくると周り続ける
・輪を描きながら、ケージの中の特定の場所を走り続ける
対処法
ロボロフスキーハムスターの間で見られる先天的な脳神経系統の異常です。個体によって旋回の程度には差があり、仰向けにひっくりかえってしまうだけの個体から、コマのように激しく高速回転するものまで程度は様々です。発症する時期もさまざまですが、個人的にハムスターが性成熟したあたりから現れることが多いように思います。
旋回癖に対して具体的な治癒策は今の所見つかっていませんが、ハムスターが興奮したり、ストレスを感じると悪化するので、清潔で静かなケージに一匹だけで飼うことによって、少し症状が軽くなることがあります。
また、定期的に体重を計ってあげましょう。起きている間中休みなく走り回る個体が多いため、だんだん痩せてくることがあります。エサは果物や種子を増やしてあげたり、ばらまき型の給餌はやめ、エサ皿からどれだけ餌を食べられているかチェックしてエネルギーや栄養をしっかり摂れているか確認してあげましょう。
旋回癖はホワイトフェース・ロボたちの間でより多く見られます。この疾患は遺伝すると考えられているので、これら旋回癖のあるハムスターを繁殖することは絶対に避けましょう。獣医さんでは、旋回癖の程度によっては、ハムスターの「生活の質」に着目し安楽死も視野に入れるように言われるかもしれません。
🔵ウェットテール(伝染性過形成性回腸炎)
症状
・激しい下痢
・尾と肛門周辺がべったりと濡れたように見える
対処法
ウェットテールはハムスターの仲間全てに共通する主に細菌、真菌またはウイルスによる感染症です。ロボロフスキーハムスターは他のハムスターに比べウェットテールに対してとても弱いので、このような症状が見られたらすぐに獣医科に連れていきましょう。
感染したハムスターは清潔で暖かいケージに一匹だけで飼い、獣医師から処方されたウェットテール専用薬などを投与しながら必要に応じてアイソトニック飲料(スポーツドリンクなど)を少量ずつ飲ませます。食欲もなくなっていることが多いので、普段の餌をぬるま湯にふやかして蜂蜜をすこし混ぜたり、野菜はよく茹でたものをすりつぶすなどの工夫が必要になります。
🔵腫瘍
症状
・ぐったりしていて静か
・食欲が無い
・体に不自然なふくらみがある
・体のいたるところに小さなふくらみがたくさんある
・徐々に衰弱してくる
・寝方がいつの間にか変わった(体内の腫瘍)
対処法
腫瘍は比較的年老いたロボロフスキーハムスターが多くかかる病気です。ハムスターの腫瘍は、野生下では2年前後で寿命を全うする所を、人間の保護下ではより長生きするために起こる問題でもあります。結果的に多くのハムスターは直接的か・または間接的に腫瘍で命を落とします。
腫瘍は堅い事もあればやわらかいこともあります。ひとつだけの場合もあれば、いくつもあることもあり、患部の色もさまざまです。まずは一度獣医科に受診し、どのようなタイプの腫瘍であるかはっきりさせましょう。外科手術の予後が悪いことが多いロボロフスキーハムスターなので、なるべく内科的な療法で痛みや苦痛などの緩和の手立てはないか医師に相談します。
比較的若いうちから腫瘍ができてしまう、遺伝的に腫瘍が出来やすいハムスターもいます。ペットとしてのハムスターは遺伝的に多様性が低く、腫瘍になりやすい系統などがあるのではないか?と考える人もいます。腫瘍が出来やすいハムスターは、そもそも繁殖させないことが理想ですが、ペットショップなど後になってから(ハムスターが成長してから)しか分からないことも多い問題です。
ペットの遺伝と健康を考えた時、ハムスターの一生涯にわたった健康に着目して注意深く繁殖を行っているブリーダーからハムスターを迎えることの大切さを理解することができます。
🔵栄養不良
症状
・発育不良 ・痩せ ・ぼろぼろの毛並み ・脱毛、禿げ ・呼吸器の異常 ・循環器系統の異常
・鼻血 ・筋肉の炎症 ・目の粘膜の異常(結膜炎など) ・神経の異常 ・骨格の異常
・消化器系統の異常 ・回復力の低下 ・貧血 ・代謝異常 ・甲状腺の機能異常
・不妊 ・小さな赤ちゃんを産む
対処法
栄養不良の症状は多岐にわたります。相互に影響しあっていたり、原因がよく分からないことも多いでしょう。また栄養不良自体が他の病気の背景となること、何らかの病気が原因となって特定の栄養素の代謝不良が起こることもあります。遺伝が関係する場合もあります。
飼い主が出来る一番効果的な対処法は、日ごろから正しい餌をあたえ、栄養バランスに気をつけながら、病気の原因、ストレスの原因になりそうなものは取り除くなど、こまめなケアをすることです。
「餌について」のページの下部にハムスターが普段必要とする栄養素と、どのような食品からそれらが摂取できるか書いたチャートがあるので参考にしてください。