個人事業をはじめると、どうしても意識しなければならない税金。サラリーマンなら、ほとんどの税金が天引きされるのであまり考える必要はないが、個人事業主ともなれば、すべて自分で処理しなければならない。
■所得税
まずは基本中の基本である所得税から。サラリーマンは源泉徴収で勝手に引かれるわけだが、個人事業主は確定申告後に自主的に納付する必要がある。納付は確定申告書に同封されている納付書を使って金融機関から行うが、申請すれば銀行口座からの引き落としにすることもできる。
税率は超過累進課税という方式で、課税所得が高くなると 6 段階で税率が上がる。具体的な税率はこちらのページに掲載されている。ちなみに 195 万円を超えると税率が 5% から 10% に上がるが、あくまで 195 万円を超えた分のみが 10% になるだけである。つまり、課税所得が 200 万円なら所得税額は 102,500 円 (1,950,000 × 0.05 + 50,000 × 0.1) で、 20 万円 (2,000,000 × 0.1) にはならない。なので、無理をして税率の変わり目を超えないように調整することは、あまり意味がない。
■住民税
次は住民税。所得税は国税ですが、こちらは地方税だ。これもサラリーマンは源泉徴収だが、個人事業主(というか給与所得者以外)には納付書が送付されるので、それを使って金融機関で支払う。申請すれば銀行からの引き落としも可能。税率は、以前は所得税と同様に超過累進課税であったが、ちょうど平成 19 年 6 月から一律 10% に変更される。内訳は市町村民税の 6% 、都道府県民税の 4% となっている。
サラリーマンの方もよくご存知かと思うが、住民税は後払いなので、前年度の課税所得によって税額が決まることになる。つまり、稼いだ年の翌年は相当額の住民税が請求される。所得に落差があるとけっこうキツイ。
■個人事業税
サラリーマンにはない、個人事業者独特の税金です。そして、個人的に納得いかない税金 No.1 でもあります。なんと、業種によって税率が違ったり、課税されなかったりする。具体的には、事業を開始したときに都道府県税事務所へ届け出をするのだが、そのときの書類に書いた業種によって税率が決定される。例えば、ソフトウェア開発業は製造業になるらしく、こちらのページによれば、第一種事業ということで 5% という最も高い税率が適用される。ただし、 290 万円までの事業主控除がありため、課税所得が 290 万円を超えた場合のみ、超えた分に対して課税される。納税は送付される納付書を使って、金融機関などで行う。
なお、青色申告をしている場合でも、個人事業税に関しては青色申告特別控除が適用されないことに注意。つまり、所得税の課税所得に青色申告特別控除額を足した額に対して個人事業税が課税される。
■印紙税
3 万円以上の品物を購入して領収書を貰ったとき、切手のようなものが貼られているのを見たことがあるかと思う。あれを収入印紙と呼び、印紙税という税金を納付した証拠となる。印紙税は印紙税法で定められた文書に対してかかる税金で、課税対象の文書を作成した際は、必ず規定された額面の収入印紙を貼って消印をすることが義務付けられている。これを怠ると脱税となり、発覚すると本来の税額の 3 倍を払わなければならない(悪質な場合は刑事罰もあるようだ)。
課税対象となる文書や税額は非常に多岐に渡っており、簡単には把握できない。領収書のほかにもさまざまな契約書、株券、果ては預金通帳まで、列挙されています。こちらのページがかなりよくまとまっているので、詳細はそちらを参照。
収入印紙は郵便局で購入でき、それを文書に貼って消印を押した時点で印紙税を納入したことになる。
■消費税
数ある税金の中で最もメジャーなものであろうかと思われる。何を買っても 5% 上乗せされるあれのことである。消費税の課税対象は商品の代金だけに限られるわけではなく、ほぼあらゆる売り上げにかかってくる。例えば、ソフト開発を請け負って報酬を貰った場合、その報酬からも 5% を持っていかれてしまう。報酬を受け取るときはきちんと消費税分を上乗せして請求しないと損をする可能性がある。トラブルを避けるために契約時に確認が必要。
ところで、消費税は商品の仕入れなどの必要経費にも課税されている。その上自分の売り上げからも 5% を支払ったら、流通に関わる業者の分だけ二重、三重に課税されることになってしまう。これを避けるため、実際に納税する消費税額は課税売り上げの 5% から必要経費で支払った消費税額を引いた額となる。さらに、売り上げが 5,000 万円以下の場合は「簡易課税」という方式が選択でき、売り上げにかかる消費税から一定の割合を差し引くことで簡易的に消費税額を計算することができる。
ちなみに、前々年の売り上げが 1,000 万円を超えていなければ、免税事業者として消費税は非課税になる。つまり、少なくとも事業を開始してから 2 年間は消費税を払う必要はない。この場合でも報酬などに消費税を上乗せして請求することはできるため、消費税分は丸儲けとなる。
■固定資産税(償却資産税)
固定資産税というと土地などにかかるものというイメージだが、 PC などの機器にも適用される。ただし、自動車などは自動車税がかかるので固定資産税の対象からは外れます。実際の税額は、こちらのページで説明されている、なにやら面倒な計算で課税標準額というのを決定し、それに税率 1.4% を掛けた額になる。ただし、課税標準額の合計が 150 万円を超えなければ、課税対象にはならない。
なお、購入金額が 10 万円以上 20 万円未満の資産については、 3 年間で資産償却する「一括償却資産」とすることで固定資産税の課税対象から外すことができる。これに対して、青色申告で使える 30 万円以下の即時償却の特例(こちらは購入年度にすべて経費化できる)を使うと固定資産税の対象にるので注意。