チャルメルソウ属における送粉者が介在した種分化機構の解明

相互に交配が起きないこと(生殖隔離)は、現在の生物多様性が維持されている主要な仕組みであり、中でも生態的要因で成立する生殖隔離は、自然選択が直接生物の多様性を生み出す仕組みとして大変興味深い物です。

さて、野外で共存しているとても類縁が近い植物の間(例えばコチャルメルソウとチャルメルソウ)ではしばしば、花粉を運ぶ昆虫が違うために生殖隔離が成立していることが知られています。このような現象は「花を咲かせる植物はいかにして今日のようなたくさんの種に分かれたのか?」という進化学上の最も大きな問いに答える大切な手がかりとなります。なぜなら現生する多く(花を咲かせる植物の8割以上)の植物種は昆虫に花粉媒介を頼っており、花粉を運ぶパートナーの変化は植物の種が生まれる(ひとつの祖先種が2つに分かれることを「種分化」と呼びます)きっかけとしてとても重要だと考えられているからです。