講義概要
この講義では、物理学の重要分野である量子力学と、これもまた近年重要な分野となっている情報理論の興味深い交差である、量子情報の諸結果を扱う。
近年耳にすることも増えた量子コンピュータ(量子計算)や量子暗号といった話題の中身を、(お話レベルではなく)きちんと数式で理解するような説明を行う。それとともに、話題を狭い意味での量子情報に限定せず、幅広く量子力学や情報理論の面白いトピックスも触れていきたいと考えている。
時間が多くない中で興味深いトピックスを多く取り上げようと思っているので、内容はかなり絞り込む。特に、通常の講義であれば確実に取り扱う内容(例えば線形代数における行列式や、量子力学におけるシュレディンガー方程式など)であっても、今回の講義内容を学ぶ上で必須でないものについては適宜削っている点には注意しておく。その一方で、内容は絞り込まれているため、取り扱う内容の一部は大学院講義レベルのものも含まれる。
なお、本学学生の聴講は広く歓迎するが、単位取得が可能なのは1,2年の文科生のみである点も注意しておく。
取り扱う可能性のあるトピックス(時間等の都合で、すべて取り扱うとは限らない)
量子力学:不確定性関係(ケナード・ロバートソン、アーサー・ケリー・グッドマン)、一般測定、観測問題、ベルの不等式とエンタングルメント、GHZ状態
古典通信理論:公開鍵暗号、ディフィー・ヘルマン鍵共有、RSA暗号、ラビン暗号、ナップザック暗号
量子通信理論:BB84量子暗号、量子暗号の無条件安全性、古典及び量子符号と誤り訂正
古典及び量子計算理論:計算量理論、P≠NP予想、多項式階層、グローバーの探索アルゴリズム、ショアのアルゴリズム、量子公開鍵暗号、量子超越性
講義の進行状況
4/9 1章、2.1節前半
4/16 2.1節後半、2.2-2.4節
4/23 2.5節、3.1節、3.2節(期待値以外)
4/30 火曜授業のため講義はなし
5/7 3.2節残り、3.3節、4.1-3節前半
5/14 4.3節後半ー4.5節前半
5/21 4.5節後半、4.6節、5.1節、5.2節前半
5/28 5.2節後半、5.3節、6.1-6.2節
6/4 6.3-6.5節、7.1-7.2節前半
6/11 7.2節後半、7.3-4節
6/18 8.1-8.7節前半
6/25 体調不良により休講
7/2 8.7節後半、9.1節、9.3節、9.4節冒頭
7/9 9.4節、9.5節
レポート
講義資料のレポート課題を解いて提出する。3問以上解くことを単位要件とする。2025年 7月28日(月)13時(日本時間)までに、アドミニ棟1階のレポートボックスに提出する。締切時間を超えたレポートは無効とする。
レポート作成要領
・この表紙を一番最初のページとする。表紙の指示に従い、解いた問題に○をし、下部の「はい・いいえ」の回答をする。
・表紙以降は、番号順に解いた問題のレポートを重ね、ホチキス等でとめて全体で一塊になるようにする。
・問題ごとにレポート用紙は変える。
・文献やウェブページを参照しても構わないが、その場合は参考文献の形式に則って、レポート問題ごとに参照したものをすべて末尾に記載する。
・友達と相談や議論をしてもかまわないが、その場合は、レポート問題ごとに相談・議論した友人の氏名と学籍番号をすべて記載する。
・AIツールを使用しても構わないが、その場合は、使用したAIツールのやり取りのすべてを印刷して、レポート問題ごとに末尾に資料として添付する。
・どの場合も、問題を解く際には文献・人・ツールの助けを借りても構わないが、レポートは自分が理解していることをアウトプットするものなので、自分の言葉で自力で作成する。